親子でスマホ・ゲームお約束メーカー
インタビュー
2023年8月9日

全国の小学校で開催!ゲーム会社が教えるゲームを安心・安全に遊ぶための「出前講座」とは?

ゲームの長時間プレイ、課金、ゲームの対人トラブル、ゲームの問題を誰か子どもに教えてくれればいいのに!

教えてくれる人がおるゾイ!

もくじ
吉田哲さんプロフィール吉田哲さんプロフィール
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社 子どものゲーム安心・安全啓発チーム所属 「日めくりまいにちスマホトラブル予防」「親子でスマホとゲームのお約束メイカー」を制作、 現在は講座プログラムの作成と講義を行っている。

昔のゲームはオンラインに繋がっていないため、ゲームのトラブルはさほど多くありませんでした。しかし、今はオンラインで遊ぶゲームが多く、昔にはなかったゲームのトラブルも増えています。ですが、現状ゲームのトラブルを防ぐための子どもたちへの教育は十分ではありません。そのためガンホーでは、子どもたちに「トラブルなく安心・安全にゲームを遊んでもらう」ことを目標に、小学生向けのオンラインでの「出前講座」を行っています。今回はその出前講座のプログラムを作り、講師も行っている吉田さんに出前講座の内容について教えてもらいました。

ゲーム会社がゲームの出前講座を行う理由

ゲーム会社がなぜ出前講座を行っているのでしょうか?講座を行うことになったきっかけを尋ねました。

ゲーム会社としても、ゲームで悲しい思いをしてほしくない

――出前講座を行うことになったきっかけについて教えてください。

吉田:今のゲームはオンラインで遊ぶものが主流ですよね。それにより昔にはなかったゲームのトラブルも増えています。
例えばゲームの長時間プレイもオンライン化で進んだ印象です。かつてのファミリーコンピューター(ファミコン)時代も、家に友達を呼んで長時間プレイすることはありましたが、夕方のチャイムが鳴ったら帰る、みたいな感じでしたよね。

――人の家にいつまでも居座れないとか、そろそろ夕飯だから友達に帰ってもらいたいとか、子どもなりに気は使いますよね。

吉田:はい。ですが今は自宅からオンラインゲーム上で友達と繋がれますから、保護者の方の目を盗んでいつまでも、そして夜中でもゲームができてしまいます。そうなると睡眠不足など、健康上の問題も気がかりです。 また、ゲームデータの購入もオンライン上でできるため、子どもが親にナイショで高額決済してしまったトラブルや、オンライン上で仲良くなった知らない人と実際に会ってトラブルに巻き込まれるという事件も起きています。
ゲームがきっかけでトラブルに巻き込まれることを減らすには、やはり子どもに自身にトラブルに遭わない知識を直接伝えるのが一番だろうと考え、出前授業を始めました。

実際の出前講座では何を教えている?

出前講座で何を教えているのか聞いてみました。意外なことに、ゲーム会社が「ゲームのやめ方」も教えているそうです。

教えていること①長時間プレイの対策について

――出前講座では、どのようなことを教えているのでしょうか?

吉田:大きく分けて3つですね。ゲームにまつわる①時間②お金③対人関係にまつわるトラブルを防ぐ方法についてお話しし、最後に質問コーナーを設けています。
まず「①時間」についてですが、保護者の方から「子どもがゲームをやめてくれなくて困っている」というお話をよく伺います。

――全国の保護者の悩みの種ですよね。

吉田:一方で、弊社で子どもたちに、「ゲームをしていて親から言われて1番嫌な言葉は何か」とアンケート取ったところ「(ゲームを)やめなさい」が1位だったんです。つまり「ゲームのやめかた(切り上げ方)」で、親、子、お互いがすれ違い、イライラしているんですよね。
子どもたちも、「ゲームをやめなさい!」と親から怒られて嫌な思いをしたくない。そのために「親から言われる前に自分でゲームをやめよう」とは伝えています。自分で時間をコントロールして、自分のペースで遊べるようになれば、やめなさいと怒られなくてすみ、気持ちよく遊ぶことができます。

やめる時間のコントロールで自分のペースで遊べる!

教えていること「②課金」~子どもはナイショ課金がバレないと思っている?~

吉田:教えていることの二点目は「課金」です。親への許可を取らない「ナイショ課金」は絶対にバレるよと、しっかりと伝えています。

――逆に子どもが「課金がバレない」と思っていることが驚きです。

吉田:そうなんですよね。クレジットカードによっては親にすぐ利用通知が届き、ナイショ課金が発覚するケースもありますが、親側で課金にすぐ気づかないケースもあります。そうして何日か経っても親が何も言ってこないと、子ども側が「イケる!」と勘違いしてどんどん課金を重ねてしまうこともあります。ですが、一か月後にはカードの引き落とし請求が親の元に来ますから、その時に絶対バレます。
子どもたちは「ナイショ課金がバレた時に、どういうことが待っているのか」という想像ができてないから、ナイショ課金をしてしまうのもあると思うので、ナイショ課金がバレたあと、どんなことが起きてしまうのかについても説明しています。

課金トラブル=ナイショ課金

教えていること「③対人」~人間関係を破壊する煽りプレイとオンラインからの誘い出し

吉田:次に「対人」ですが、保護者の方からよく「子どもがゲームをしている時の暴言が気になる」というお悩みの声をいただきます。

――「死ね」「殺す」「馬鹿」とか……。

吉田:そうですね。昔もゲームで荒っぽい発言をしていた人はいたと思いますが、今のゲームはチームプレーが多いので「お前のせいで負けた」「お前が足を引っ張った」という状況は増えているのが、こういった発言の増加の背景にあると思います。このようなプレイスタイルを「煽りプレイ」と講座では呼んでいます。

――「煽り運転」のゲーム版ですね。負けた相手をひどくこき下ろす人も見かけますね。

吉田:はい。そのような煽りプレイをしている人はもしかしたら相手を「論破」している自分がかっこいい!と自分に酔っているかもしれませんが、周りはちゃんと見ています。そんなことをしていたら人から嫌われる、人が自分の周りから離れていく、とは伝えています。

ゲーム上で知らない人から「煽りプレイ」されたらどうする?

――今は通信対戦で見知らぬ人とゲームをすることもあるので、「知らない人から煽りプレイをされた」経験がある子どももいそうですね。

吉田:はい。講座でもそういうときはどうすればいいか質問をいただくこともあります。対策として、煽りプレイしてくる人は、構ってほしいんです。「やめて」などと言うと相手は増長してしまいます。無視するのが1番ですね。

――悪質なユーザーを通報したり、ブロックしたりできる機能があるゲームも多いですよね。

吉田:はい。保護者の方と相談し、そのような機能を活用するのも選択肢だと思います。

オンラインコミュニケーションの誘いだしについて

――また、対人問題としてもう一つ、オンライン上でのコミュニケーションの注意点も伝えてるとの事ですが

吉田:オンライン上でゲームをすると、顔も住所も知らない人とも一緒にゲームをプレイする事があります。中には、未成年に危害を加えようとする危ない大人が小学生を誘い出し、誘拐事件に発展してしまったケースもあったので、知らない人と会う時の約束作りを家庭で作っておくことが重要だと伝えています。

知らない人とリアルで会う行為はめちゃめちゃ危ない!

出前講座の申し込みはWEBフォームから

最後に出前講座の申込方法や条件、出前講座の感想を紹介します。

小学校は低学年、高学年で講座を分けるのがおすすめ

――出前講座の開催条件などはあるのでしょうか。

吉田:開催条件としては、「受講者が30名以上であること」を参加する各校にお願いしております。また、基本は小学校向けですが、保護者の方や教職員の方など、大人を対象にした講座も行っています。今後は中学生向けにも実施することを予定しており、要望があった学校を対象に試験的に講座も行っています。

――出前講座はどのように行われているのですか?

吉田:出前講座は、Zoomを使ったオンライン形式で開催しています。学校側では、教室で受講するパターンと体育館等の広い場所に集まって受講するパターンの2種類がほとんどですね。教室で受講する場合に限りますが、高学年の生徒向けにワーク教材を組み込むなど、生徒たちが飽きずに受講できる工夫をしています。

――小学生の場合、低学年と高学年だと状況や理解度なども変わってきそうですね。

吉田:はい。小学校低学年だとまだ問題が起きていないケースがほとんどだと思いますが、高学年になると、ゲーム上のテキストチャットやボイスチャットを使いこなしていたり、課金して遊ぶケースも増えます。もちろん各校の都合に合わせて実施していますが、小学校の場合は低学年と高学年で分けてもらった方が効果は高いです。

出前講座を申し込む学校のきっかけは「実際にゲームでトラブルがあった」

――学校側はどのような理由で出前講座を申し込まれているのでしょうか。

吉田:実際に子どもが課金の問題を起こしてしまったとか、長時間プレイで保護者の方から相談を受けたとかがあって申し込まれたケースが多いですね。 GIGAスクールが始まり、ゲームができる端末を子どもがみんな持つようになったので、学校でも子ども達のゲームへのリテラシー(リテラシーː適切に理解する力)を高めたい、ゲームでのトラブルを予防したいと考えている学校がありましたら、お申込みをお待ちしております。

インタビュー風景
POINTまとめ
  • オンラインゲームで気兼ねがなくなり、長時間プレイになりがち
  • 子どもは「ナイショ課金」がバレないと思っている?
  • 「煽りプレイ」は無視や通報で対処し、相手にしないこと

ガンホーの出前講座


POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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