長時間利用、課金、SNSの対人トラブル…。ゲームやスマホの使い方のコツを、小学生に教えてくれる人はいないかなあ…。
ゲーム会社の目線で、ガンホーの社員が子どもたちに教えてくれるゾイ!
- 吉田哲さん

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ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社に勤務し、小学生向けのゲーム・スマホの情報モラル講座に関わる様々な企画、制作に携わる。
「日めくりまいにちスマホトラブル予防」「親子でスマホとゲームのお約束メイカー」など。
ゲームやスマホの長時間利用、高額課金、SNSなどのオンライン上での対人トラブル…。今はインターネットを利用したゲームやコミュニケーションが主流となり、小学生の子どもを持つ保護者、教員も経験したことのないトラブルが増えています。さらに、GIGAスクール構想により、一人一台のデジタル機器端末が普及した令和の小学校では、小学生自身の情報モラルの育成が必要とされています。
ですが、現代のゲームやスマホのトラブルは、大人も経験したことがないため、「ゲームやスマホのことが分からないから、どんなトラブル対策が必要なのか?」という、保護者や教育関係者の声もあります。
そこでガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社(以下、ガンホー)では、全国の小学校を対象にオンラインによるゲーム・スマホの情報モラル講座を行っています。
今回は情報モラル講座の講師であり、小学生向け講座の企画に携わった吉田哲さんに、今の小学生に伝えたい講座の内容を伺いました。
ゲーム会社が情報モラル講座を行う理由
ゲーム会社であるガンホーが、なぜ小学生向けの情報モラル講座を行っているのでしょうか?講座を行うことになったきっかけを伺いました。
ゲーム会社としても、ゲームで悲しい思いをしてほしくない

——現在、全国の小学校で情報モラル講座を積極的に実施されていますが、まずはそのきっかけを教えてください。
吉田:今のゲームはインターネットを利用して、オンラインで遊ぶものが主流ですよね。また、スマホの普及により、ゲームに限らずSNSなどのオンラインツールによって、世界中の人々と繋がり、交流をすることができます。それはもちろん素晴らしい体験なのですが、一方で保護者や教員が子どもの頃には無かった、新たなトラブルも増えています。
例えばゲームの長時間プレイについても、かつてのファミリーコンピューター(ファミコン)時代は、「自宅や友達の家に集まって遊ぶ」ことが多く、夕方のチャイムが鳴ったら帰る、という物理的な区切りがありました。
——人の家にいつまでも居座れないとか、そろそろ夕飯だから帰らなきゃと、小学生なりに気を遣いましたよね。
吉田:はい。ですが、今はインターネットに接続して、自宅からオンライン上でいつでも友達と繋がれるため、保護者の目を盗んで、夜中でも際限なくゲームやメッセージのやり取りなどができてしまいます。そうなると睡眠不足など、小学生の健康に影響が出てくることも気がかりです。 また、ゲーム内アイテムなどの購入もオンライン上でできるため、子どもが親にナイショで高額課金をしてしまうトラブルや、SNSなどで仲良くなった知らない人と実際に会って、犯罪に巻き込まれる事件も起きています。
——ゲーム会社が、小学生にその「リスク」を教える講座を始めたのはなぜでしょうか?
吉田:ゲーム会社としても、自分たちが提供しているゲームによるエンターテイメントが原因で、子どもたちが悲しい思いをしたり、家族との関係がギクシャクしたり、というのは望んでいないんです。こういったトラブルを減らすには、一人で行動することが増えてくる小学生のうちから「身を守る知識」を直接伝えることが一番だと思い、全国の小学校を対象とした講座を始めました。
——講座の中では、小学生の子どもたちに「ゲームは危ないもの」と教えているのですか?
吉田:いいえ、違います。ゲームやスマホは、本来、とても便利で楽しい「道具」なんです。でも、使い方を間違えると、誰かを傷つけたり、自分が傷ついたりしてしまう道具でもあるんです。この「使い方の大切さ」を、低学年の小学生のうちからしっかり理解してもらえるように伝えています。
小学生向け情報モラル講座の内容は?
小学生向け情報モラル講座の内容について詳しく聞いてみました。意外なことに、ゲーム会社が「ゲームのやめ方」も教えているそうです。
情報モラル講座のテーマは3つ
——ガンホーの情報モラル講座では、具体的にどのようなことを教えているのでしょうか?
吉田:3つのテーマでお伝えしています。小学生の間で問題になりやすい①時間、②お金(課金)、③対人関係について、スライドやクイズを交えながらお話ししています。時間に余裕があれば、質問コーナーも設けていて、小学生たちのリアルな疑問にもお答えしています。
情報モラル講座①時間 長時間利用の対策について

——まずは、全国の保護者や教員の悩みの種である「時間」についてですが、どのようなアドバイスをされているのですか?
吉田:ガンホーが全国の小学生に、「ゲームやスマホを使っていて親から言われて1番嫌な言葉は何か」とアンケートを取ったところ、圧倒的な1位が「(ゲームやスマホを)やめなさい!」だったんです。子どもたちも本当は「怒られたくない」けれど、やめどきが分からない。つまり親と子の間で「ゲームのやめ方(切り上げ方)」について、考えがすれ違い、イライラしている状況なんです。
そのために「自分で使う時間を決めて、ゲームやスマホをやめよう」と伝えています。自分で時間をコントロールして、自分のペースで遊べるようになれば、やめなさいと言われず、親も子も気持ちよく遊ぶことができます。
——無理やりやめさせるのではなく、子どもの自律心を育てるアプローチですね。学年によって教える内容に違いはありますか?
吉田:低学年と高学年で、分けています。
■低学年(1~3年生)
時間の概念が未熟な学齢なので、めざまし時計やキッチンタイマーといった、家にある道具を使って、終わりの時間を視覚化、聴覚化するコツを伝えています。
■高学年(4~6年生)
4年生以上が対象の講座では、実践的なワークも取り入れています。1日のスケジュールを振り返り、自由に使える時間を見つけてもらいます。その中で、ゲームやスマホに充てられる時間がどのくらいあるのか、と自分で考えてもらいます。ワークを通じて、限られた時間の大切さに気づいてくれたら嬉しいですね。
情報モラル講座②課金 お金の大切さについて

——2点目は、金銭トラブルもある「課金」についてです。具体的な内容を教えてください。
吉田:ガンホーに実際に報告があった、未成年による高額課金の事例を教えています。衝撃的な内容なので、子どもたちからは「えー!!」って驚きの声が上がりますね。
なぜ、高額課金トラブルが起きてしまうのかというと、令和の子どもたちはキャッシュレスが当たり前で、現金を扱う機会が少ないので、「お金を払っている」という自覚が薄いからと言われています。講座では「課金はダメ!」ではなく、まだ自分でお金を稼ぐことができない小学生に「お金の大切さ」についてもお話しています。
情報モラル講座③対人 オンラインでの人間関係について
——3つ目のテーマはオンライン上の「対人」についてです。スマホの利用が低年齢化しているおり、ゲームだけではなく、SNSの利用もあることから、リアルな人間関係にも関わる重要な内容だと感じます。
吉田:そうですね。オンラインの人間関係については、本講座でもかなり時間を割いています。
まず、ゲームに関しては「暴言」です。オンラインゲームでの暴言がきっかけで、大喧嘩に発展したというお話は、受講される小学校の先生から必ずと言っていいほど聞いています。昔もゲームで荒っぽい発言をしていた人はいたと思いますが、今のオンラインゲームはチームプレーが多いので「Aくんのせいで負けた」とか、「足を引っ張った奴がいる」と子どもたちは感じてしまい、こういった発言の増加に繋がっているのではないかと思います。なので、オンラインゲームで遊ぶ相手は、ゲームキャラクターではなく自分と同じ「人間」であることを忘れないでほしいと伝えています。
SNSなどのネット上の「友達」と会うリスクについて

——SNSは、ゲームとは少し異なると思うのですが、なぜ小学生向け講座の内容に含まれているのでしょうか?
吉田:オンラインゲームによっては、個人同士でのチャットができるなど、SNSとよく似た機能がついていることもあるからです。特に小学生は、人間関係の構築が未熟なため、ゲームやSNS上で交流があると顔を知らない人でも「友達」と認識してしまうんです。そこから本名や学校名などの個人情報を提供してしまって、トラブルに発展する恐れもあるため、まったく無関係であるとは言い切れないのです。
中には、子どもになりすまして未成年に危害を加えようとする大人もいます。このような手口で小学生を誘い出し、誘拐事件に発展してしまったケースもあります。命に関わる問題なので、「絶対に一人で会いに行かない」ことと、ネット上の友達と会う時の約束を家庭で作っておく重要性を伝えています。
情報モラル講座の申し込みはWEBフォームから
情報モラル講座の申し込み方法や実施に必要なものなどをお聞きします。
低学年、高学年と学齢ごとの受講がおススメ

——情報モラル講座の申し込み方法など、必要な手続きを教えてください。
吉田:情報モラル講座の案内ページからお申し込みできます。
また、夏休み前、学年末などは非常に人気があるので、事前に公式X(旧Twitter)で空き状況を確認していただけると助かります。
——情報モラル講座は、どんな形式で行われているのですか?
吉田:Zoomでのオンライン形式なので、全国の小学校と繋がることが可能です。受講方法は各教室や、体育館等の広い場所に集まってなど、学校側の設備に合わせて対応しています。最近では、授業参観として親子一緒に受講される小学校も増えてきています。
開催は全て無料なのですが、学校側でオンライン講座が受講できる環境をご準備ください。公立の教育機関はセキュリティ上、外部との接続が制限されている場合もあるので、事前に学校のICT担当の方ともご相談ください。
——小学生の場合、学齢で理解度も違いますよね。
吉田:はい。そのため小学生は、「低学年(1~3年生)」と「高学年(4~6年生)」に分けて受講していただくのが最も効果的です。講座のテーマは①時間、②お金、③対人とどちらも変わりませんが、低学年はまだ起きていない問題の「予防」として、高学年はSNSチャット、課金といった「直面している課題」への対策が中心になります。講座のスライド内容など、学齢に合わせて、小学生に伝わりやすい言葉で表現を変えてお伝えしています。
また、講座日時の2週間ほど前までに、学校の先生方とZoomで事前打ち合わせを必ず行っていますので、分からないことは遠慮なくご相談ください。
「受講してよかった!」リピーター校が続出の人気講座
——実際に受講された児童や先生からの反響はいかがですか?
吉田:講座後にアンケートをお願いしているのですが、子どもたちからは「スマホは便利だけど、使い方を間違えるとトラブルに繋がると気づいた」という気づきや、まだスマホやゲームを持っていない児童からは「ゲームやスマホを持った時に活かせる内容だった」という、その後の行動に繋がる前向きな感想をいただいています。
先生方からは「自分事に置き換えて受講していた」「児童たちの状況と合った内容で受講してよかった」という感想をいただいています。非常に嬉しいことに、翌年も受講いただいたり、他の学校にもご紹介いただいたり、先生方や教育委員会を通じて口コミで評判が広がっているようです。
また、トラブルを防止するためには、子どもだけではなく保護者、教員側の情報モラルの知識が必要であると考えています。大人向けの講座もありますので、ぜひ開催をご検討ください。
——最後に、受講を検討されている小学校の先生方にお伝えしたいことはありますか?
吉田:デジタル機器の状況は、ものすごいスピードで変化しています。ゲーム会社という特性を最大限に活かして、世の中の変化に合わせて講座内容もブラッシュアップしていますので、一度受けたら終わりではなく、定期的にゲーム・スマホの使い方を見直すきっかけとして何度も受講いただければいいなと思っています。
また、最初にもお伝えしたように、ゲームは本来楽しむものなんです。情報モラル講座というと、お堅い感じがしますが、児童の皆さんも先生方も、ぜひ楽しみながら受講していただけたら嬉しいです。
※情報モラル講座の内容は、公開当時のものであり予告なく変更することがあります。詳しい内容は、情報モラル講座案内ページにてご確認ください。
- POINTまとめ
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- 時間は「自分で」コントロール: 自分のペースで楽しく遊ぶコツを伝授
- キャッシュレスの正体を知る: 課金は「本物のお金を使うこと」と同じ
- ネットの向こう側を想像する:正しいオンラインマナーを身につける
インタビュアー/ライター
石徹白 未亜- いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂







