お金は大切なもの!そんな当たり前のこと、子どもだってわかるわよね
キャッシュレス決済が当たり前の令和の子どもに、「お金の重み」は伝わりにくいのジャ!
- 八木陽子さん

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株式会社イー・カンパニー代表取締役 キッズ・マネー・ステーション代表。
ファイナンシャルプランナー、キャリアコンサルタント。2005年からお金教育・キャリア教育を普及する「キッズ・マネー・ステーション」を主宰し、所属する全国の講師たちと共に、小・中・高等学校にて授業や講演をしている。監修した書籍は「10歳から知っておきたいお金の心得」「角川まんが学習シリーズ+ ぼくらの未来をつなぐお金の知識」など多数。
インターネット利用の低年齢化で、未成年者による課金トラブルが増加しています。民法には「未成年者契約の取消し(未成年者が法定代理人の同意を得ないで行った契約は、取り消すことができる)」という権利があります。しかし、すべての契約において、この権利が適用されるわけでもなく、想定外の課金はそもそも防ぐに越したことはありません。また、成人年齢である18歳になると、未成年者契約の取消しも認められません。子どもの不本意な課金を防ぐにはどうしたらいいのか?親子で学ぶ「お金の価値」と「契約の重み」を、子ども向けお金教育の専門家・八木陽子さんに伺いました。
未成年者契約の取消しについて~ものを買うことは契約行為~
「未成年が、親の許諾なく行った契約(買い物)については取り消すことができる」とされる「未成年者契約の取消し」ですが、その実態について伺いました。
※「未成年者契約の取消し」の詳細は、以下をご参照ください。
東京くらしWEB(外部リンク)
「未成年者契約の取消し」が認められるかは、ケースバイケース

八木:私は親子に向けたお金の講座を開いているのですが、参加者の方にアンケートを取ると、お子さんの課金などで実際トラブルがあり、金融教育の必要性に気づいて受講したという回答をいただくことがありますね。
例えば、小学生くらいのお子さんが自分専用のスマートフォンなどの端末をまだ持っておらず、親御さんが、クレジットカード番号が登録されている自分のスマートフォンを渡したところ、そこでお子さんが課金をしてしまったというケースなどです。
このような場合ですと、未成年者契約の取消しが認められるかは、ケースバイケースになってしまうかもしれません。
——未成年者契約の取消しでは、保護者側がお子さんの使う端末を適切に管理していたかなども考慮されるため、「未成年者が行った契約だから、すべて取り消される」とは限らないようですね。
参考:過去にガンホーではお子さんが230万円課金したケースについて、保護者の方にお話しを伺っています
ナイショ課金体験談! 子どもが内緒で230万円の高額課金!発覚した時に家族はどうしたのか?
ものを買うことは「契約行為」
——そもそも「ものを買うこと」が「契約」であるということが、特に子どもには伝わりにくいところではありますよね。
八木:そうですね。「買うこと」とは「契約行為」であり、コンビニでおにぎりを買うのも「契約」です。おにぎりをレジに持っていくのは、「買います」という意思表示をお客さんがしていることであり、店員さんがおにぎりをレジに通すことで承諾されます。契約書もハンコも出てきませんが、これも正式な「契約行為」なのです。
契約とは、大人だけが行う、子どもには無関係の異世界のものではなくて、毎日の買い物一つ一つで、売買契約が成立しているんです。そしてこれは、ゲームやアプリなどで、スマホ上に表示された「購入する」ボタンを押すことも同じです。
年齢を偽ると、未成年契約の取消しが適用されないケースも

——未成年だと課金ができなかったり、課金額に上限があるゲームやアプリも多いですが、子ども自身が好きに課金できるよう、自分の年齢を大人だと偽った場合、未成年契約の取消しが適用されなくなるケースもありますよね。こういったことをしてはいけない、と小学生くらいの子どもにどう伝えればよいでしょうか。
八木:リアル店舗のように話すと良いかもしれません。例えば子どもは、お酒や煙草を買えませんよね。
——お酒、煙草は法律により、未成年の購入が禁止されていますね。(※未成年契約の取消しにおける成人年齢は18歳だが、酒、煙草は20歳以上から)
酒:二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律
煙草:二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律
八木:はい。法律で禁止されているのに、子どもがコンビニやスーパーで自分は20歳だと年齢を偽り、お酒や煙草を購入したら問題です。
一方で、これがインターネット上のやりとりになると、店員さんなどの存在が見えにくくなりますが、コンビニやスーパーと同じように、お店の人がいると考えてください。その人に嘘をついて、自分の年齢では本来買ってはいけないものを買うと、法律違反になるよ。そして、売ったお店の人も法律違反になって、迷惑がかかるんだよ、と分かりやすく伝えたいですね。
そして、年齢を偽って購入したものでトラブルになった場合、「そもそも、年齢を偽って買ったのはあなたですよね」と助けてもらえなくなるかもしれません。こういったことをきちんと伝えることが、「嘘をついて買う」ことを防ぐために大切だと思います。
子どもと課金のトラブル実例
子どもの課金トラブルを避けるために、トラブルの実態を知っていきましょう。
AIの活用で、詐欺サイトも見分けがつきにくくなっている
八木:お子さんが中学生くらいになり、自身のスマートフォンを持ちはじめると、ネットショッピングなどのトラブルも増えますね。
世の中には、そもそも商品を送る気もない、購入者を騙すつもりで作られた詐欺サイトもあります。以前は、こういった詐欺サイトはデザインが稚拙で、ぱっと見で怪しいものも多かったのですが、近年はAIが活用され、ちゃんとしているように見えるサイトも多く、わかりにくくなっているんですよ。
コンプレックス系ショッピングは、親に言いづらい
八木:ほかにも、ニキビを気にした思春期のお子さんが、ネットで見かけた化粧水を購入したところ、商品が届かない悪質な業者で、その後の対応を保護者がされたというお話も聞きました。
大人から見たら、大したことがないように見えても、子ども本人にとっては深刻な悩みもありますよね。特に昨今は、ルッキズムには男の子も女の子も悩んでいます。親に話すこと自体が恥ずかしかったりもします。
——ニキビならまだ親に言えても、胸を大きくしたい、痩せたい、などは言いにくいでしょうね。
八木:そうですね。大人の目から見たら、「あと10年したら、どうでもよくなってるよ!」みたいなことってたくさんあるんですけど、やはり子どものこういった気持ちを受け止めてあげないと、子どもが隠れて購入して、トラブルが大きくなりかねないのが怖いなと思っています。
キャッシュレス決済に紐付いた「エンドレスお小遣い」に注意
八木:そのほかには、中高生になるとキャッシュレス決済も身近になってきます。お小遣いを現金ではなく、キャッシュレス決済で渡すご家庭も多く、都度お子さんに送金するのが手間だからと、キャッシュレス決済を親のクレジットカードと紐付けているケースもあります。
ですが、これがお子さんにしてみれば、「あれ?なんだかキャッシュレス決済がいくらでも使えるぞ。お母さんも何も言ってこないから、まあいいか!」と使ってしまい、後から思いもよらない金額を請求された、なんてことも聞きますね。
——あれこれ言わなくても、うちの子どもはわきまえてくれるはず、と思っていると危ないですね。
子どものお金のトラブル、どう防ぐ?
どこのご家庭でも起きかねないようなトラブルのお話が続きました。これらを一体どうやって防げばいいのでしょうか。
「端末管理」と「教育」の両輪が大原則!
八木:子どものお金のトラブルを防ぐには、まず親御さんはお子さんに渡す端末に自身のクレジットカード情報が登録されたままになっていないかなど、「端末の管理」をすることが大切です。
ただ、それだけでなく、お子さんに「スマートフォンに表示された『購入する』ボタンをタップするときには、お金がかかってるんだよ」、とお子さんにきちんと伝える「お金の教育」も必要ですね。
——「端末管理」と「教育」の両輪が大切なんですね。
ペアレンタルコントロール機能を活用し、課金を防ぐ
八木:端末管理ですが、お子さん用のスマートフォンを持たせるときは、ペアレンタルコントロールなどの課金設定をした上で渡すことが大切ですね。
他にも、お子さんのスマホ料金を、親御さんのキャリア決済で支払っているご家庭も多いです。ですが、キャリア決済の上限金額は、初期設定だと高額なこともありますので、適切な範囲に下げておくと良いでしょう。
——「子どもの端末での課金を制限すること」は必須として、その上で、それをすり抜けて課金をされても、「制限枠以上の課金をさせないこと」の二段構えが大切なんですね。
利用明細、きちんと確認していますか?

八木:そして、クレジットカードや電子決済といった、キャッシュレスのサービスを利用する場合、親御さんが利用明細を毎月しっかり確認することもとても大切です。
例えば、明細に身に覚えのない10万円の引き落としがあったら、慌てて調べると思います。ですが、数百円くらいだと調べるのが面倒で、まあいいか、となってしまうかもしれません。ですが、それが実は不正利用だったというケースもあるんです。
また、以前はクレジットカードの明細は紙で郵送されてきましたから、届いたらとりあえず開けて、一読していました。ですが、今はWEB明細が主流ですから、ついログインするのを忘れてしまったりするんですよね。
紙の明細にすると、今は別途手数料がかかってしまうカード会社も多いですが、安心を買う感覚であえて郵送にされている方もいます。大切なのは、「自分がどうすれば適切にお金を管理できるか」なんです。
——それぞれの性格や、ライフスタイルもありますから、いろいろ試してみて、自分が無理なく、安全を確保できる方法を見つけていきたいですね。
子どものお金も、自分の中でしっくりする管理方法で
八木:「自分がどうすれば適切にお金を管理できるか」は、お子さんに関するお金でも同じです。
例えば、お小遣いをキャッシュレス決済でお子さんに渡すのなら、「このキャッシュレス決済はお母さんの大事なクレジットカードと紐付いているから、利用するときはこうしてね」とか、「一か月〇〇円までだよ」とお子さんと約束する方法もあります。
ほかにも、クレジットカードを親御さんの口座でなく、お子さんの口座と紐付ける方法や、クレジットカードと紐付けず、「一か月分○○円」と決まったタイミングで送金し、その上限でお子さん自身にやりくりさせる方法もあります。
キャッシュレス化の流れは止まらない、だからこそ最初は現金を使う
八木:若い世代ほど、キャッシュレス決済に抵抗がありません。とても便利ではあるのですが、キャッシュレス決済はおもちゃのお金ではなく、本当のお金の決済であることはきちんと伝えていくことが大切です。
ですので、小学生ぐらいまでは「現金でお小遣い制」が、お勧めです。「使ったら減る」は、やはり目に見える現金がわかりやすいですから。親御さん世代だと、教わらなくても「100円玉を握りしめて駄菓子屋に行く」感覚がありましたが、今の子どもがその感覚を持つのは難しいですからね。
「子どもが、コンビニでもらった小銭のおつりを、どうしていいのかわからず捨てていた」という話も聞いたことがありますし、また、子どもから「スーパーでお金を払ったら、お金が減っちゃうから、ネット通販で注文すればいいんじゃない?」と言われたなんて話も聞いたことがありますね。
——親世代が、現金を使って日常生活の中で身につけていた「お金の感覚」。これを、キャッシュレス決済という「見えないお金」が存在する世界で育っている今の子どもたちも、自然と身に着けているはずだ、と思いこむと、とんでもないことになりかねませんね。
八木:そうですね。今は、お金を学ぶドリルも出ているんですよ。「これが100円玉」「穴が開いていたら50円玉」と、紙に印刷されているんです。そのくらい、今の子どもにとって現金は身近ではありません。
だからこそ、現金をお子さんに渡し、「300円あれば何が買えるかな」、という機会を、たまにでもいいので設けられるといいですね。
子どもがお金のトラブルを起こしたら、親はどうすればいい?
もし、子どもがお金のトラブルを起こしたとき、親はどう対応すればいいのでしょうか。
「親がトラブルに対応する背中」を子どもに見せることが大切
八木:お子さんのお金に関するトラブルが発覚した場合は、「親が事後対応している姿」を、子どもに見せることが大切ですね。
トラブルの金額が少額の場合は、手間賃の方が大きいし、「まあ、いいか」としてしまいたくなりますが、事業者や消費生活センター(※行政が運営している消費者トラブルの窓口)など、関連機関に問い合わせている様子を、子どもに見せることは大事だと思います。
ちょっとしたお金の失敗をすることも大切
八木:また、高額で深刻なお金の失敗は遭わないに越したことはないですが、一方で、ちょっとしたお金や買い物の失敗を、中学生くらいでさせておくのも大切だと思います。
お小遣い制にして、欲しいものを買ったら月の後半に友達と遊びに行けなくなったとか、通販をしてみたものの、期待通りのものではなかった、といったちょっとした失敗ですね。
子どもが18歳になれば、クレジットカードも作れてしまいますし、アルバイト代などもそれなりに入るようになります。さらに、法律による保護(未成年者契約の取消し)も無くなります。この新成人世代の人達が、クレジットカードで多額の買い物をした結果、支払いができなくなって親が肩代わりした、というケースも聞きます。大きなお金を使えるようになる前に、小さな失敗をさせておく、ということも大切ですね。
軽く感じがちな「データのお金」の重みを、保護者がしっかり伝えたい
八木:そしてやはり、「現金」と、クレジットカード、キャッシュレス決済などの「データのお金」が、同一であることをしっかりと教えていくことですね。
——先ほどの、「スーパーで使うとお金が減るが、ネット通販で買うとお金が減らない」と話していたお子さんのように、データのお金だと、どうもお金がかかっていないように見えるお子さんもいるのでしょうね。
八木:データのお金だと、急に羽振りが良くなってしまうんですよね。
「親のクレジットカード番号を覚えて、ゲームに入力して課金した」ケースもよく聞くのですが、子ども本人には、そこまで悪気がないんです。「この番号を入れたら、次に行けたから」という、なんだか無邪気な感じなんです。
親世代から見れば、親のクレジットカード番号を盗むなんて、親の財布からお金を盗むような悪いことだ、という感覚があったと思います。ですが、日々データのお金で生活している子ども世代には、その感覚がうまく伝わっていない感じはしますね。
ですので、それはお父さんお母さんが働いて得たお金で支払っているんだよ、ということはしっかり伝えていきたいですね。
- POINTまとめ
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- 「未成年者契約の取消し」が認められるかは状況次第。親の管理が大切
- キャッシュレスのお金を、子どもは軽く感じがち。現金によるお小遣い制や教育でフォローを
- 子どものお金トラブルは、対応する親の背中を見せることが重要
インタビュアー/ライター
石徹白 未亜- いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂







