子どもの高額課金のニュースを聞くたびに寿命が縮むわ!
貴重な実体験をお話いただいたゾイ!予防、対策のヒントがいっぱいじゃ!
- 長岡さんご夫妻
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父母と長男、次男、長女の五人家族。2020年5月、当時小学校3年生(8歳)の次男が3週間で約230万円もの高額なナイショ課金をしてしまう。
「お母様のXアカウント(@kiyono_t)」
未成年者によるアプリの高額課金のニュースは後を絶ちません。事前の対策方法は世の中にあふれていますが、高額課金が発覚した後、「家族のその後」を目にする機会はありません。そのため、ナイショ課金が発覚したご家族では、子どもとの向き合い方などに悩まれているのではないのでしょうか?今回は、230万円というお子さんの高額課金を経験された保護者である長岡さんご夫婦に、ナイショ課金が発覚した経緯から、家族で取り組んだ対策のお話しを伺いました。
アプリ課金当時のスマホの利用状況
アプリの高額課金をしてしまった次男君。自分のスマホを所持していたのか?親子でスマホ利用の約束はあったのか?アプリ課金当時の状況を尋ねました。
アプリ課金時はコロナによる休校期間だった
――次男君はいつごろからスマホを使っていたのでしょうか。
父: 次男には4歳くらいからスマホを使わせていました。僕がエンジニアなので、仕事柄使わなくなったスマホが多くある環境で、夫婦共に子どもがデジタル機器を使うことに抵抗はありませんでした。というより、むしろどんどん使えるようになった方がいいと考えて、子ども向けのロックやフィルタリングはかけずに渡していました。
――次男君のスマホ利用について親子で約束はありましたか?
母: はい、ありました。視力低下や姿勢が悪くなることが心配で、利用は1日1時間ということは約束していました。ですが、高額課金があった2020年の5月は、新型コロナウイルス感染拡大よる休校期間中で、スマホを学校の調べものに使うなど、いつものルールとは運用が変わってしまったんです。
父: さらに長男が地方の祖父のもとに行っていたので、次男にすれば、外出もできず遊び相手の兄はいないし、僕も妻も仕事がありと、次男はスマホやタブレットをずっとしがちな環境ではありました。
――ゲーム課金について親子の約束はありましたか?
母: 基本的には課金はダメで、誕生日など、どうしてもという時には「パパに相談してね」という形にしていました。
ITやお金に関する興味関心、リテラシーはむしろ高めの子どもだった
――次男君はどんなお子さんなのでしょうか。
母: 我が家は長男、次男、長女の三人きょうだいですが、次男だけプログラミング教室に通うなど、ITには興味関心が俄然強く、インターネットの安全に関することもよく知っていた印象です。子どもってYouTuberになりたがったりしますが、次男は「配信はやりたいけど、身バレはしたくない!」と覆面を被って撮ったりしていました。また、お金への関心が一番強いのも次男でしたね。
――ITやお金への興味関心が高く、「分かっていそう」に見えた次男君が、アプリの高額課金をしてしまったのですね。
230万円の高額課金が発覚するまでの経緯
長岡さんご夫妻は、いつ230万円もの高額課金に気が付いたのか、当時小3(8歳)のお子さんに課金時のパスワードはどう突破されてしまったのか、気になる状況について伺いました。
あまり使わないはずのクレジットカードの明細が数十万円!
――230万円もの高額課金に、どうやって気づいたのでしょうか。
父:
クレジットカードの利用明細は、毎月確認するようにはしていたんです。次男が課金で用いたクレジットカードは普段あまり使っておらず、使ったとしても月に3万円程度なのに、ふと利用明細を見たら数十万円の記載を見て、血の気が引いて……。慌てて翌月の引き落とし予定金額も見たら、今度は150万円と記載されていて……。
当初、祖父の家にいた長男が課金したと思ったのです。ですが、長男はiPhoneを使っていて、請求がGoogleからだったので、Androidを使用している次男が課金したのだと分かりました。
当初は1回数百円の課金が、最後には1日10万円に
父: 課金の利用明細を見ると、ゲーム課金はもちろん、漫画アプリへの課金もありましたが、配信者への投げ銭や、着せ替えアプリなどのゲーム以外の課金もありました。また、次男本人も悪いことをしている自覚があったのか、最初は1回500円とか1000円くらいのペースで課金をしていたのですが、1週間後には1回1万円までエスカレートしていて、最終的には1日10万円くらい使っていました。
――230万円も、どうして高額課金してしまったのでしょうか。
父: 自分自身のために使うのは実は少なくて、ほとんどは、他の人に有料アイテムをプレゼントしていたんです。ものすごくたくさんの人から「ありがとう!」と言われるのが気持ちよくなっちゃったんじゃないかな。リアルの友達だけでなく、ネット上でしか面識のない人達にも有料アイテムをあげていたようです。
課金を防ぐためのパスワードを、なぜ突破されてしまった?
――Google Playには、お父さんのクレジットカード情報を登録していたのでしょうか?
父: はい。誕生日の時など、たまに次男にゲームのアイテムを買ったりしていたので、スマホに僕のクレジットカード情報は登録していました。もちろん、勝手に息子が課金できないよう、パスワードはかけていましたが、息子がパスワードの再発行をして、自分の好きなパスワードに変えてしまっていたんです。気づいて僕がログインしようとしたら、すでにログインできなくて……。
――課金の際にも都度Googleからメールが来ると思いますが、こちらはどうだったのでしょう。
父: 次男にもGoogleのアカウントを持たせていたため、こういったお知らせがすべて次男側に行ってしまっていたのだと思います。 僕が普段iPhoneを使っており、メーラーとしてGmailをメインに使っていなかったというのもあって、気づくのが遅れてしまいました。
――親子で異なるOS(AndroidとiOS )のスマートフォンを使っていると、使い慣れていないことから親側で子側の端末機能の詳細がわからず、思いがけない死角ができてしまいかねないのですね。
アプリの高額課金が発覚した時、次男君の反応はどうでしたか?
父: びっくりしていましたね。薄々悪いことだとは思っていたようですが、「230万円」という金額と、自分のしたことが繋がっていない感じでした。それよりも僕たち夫婦があまりにも動揺していることにびっくりしていましたね。
アプリの高額課金が発生したあとに――「返金対応」と「教育」の二段構え
親側もパニックになる子どもの高額課金ですが、長岡さんご夫妻は冷静な対処を続けていきます。
やってよかった「早期の第三者への相談」
――高額課金が発覚し、驚かれたと思いますがどのような対応をされましたか?
母:
私たちが会社を経営しているので、発覚から1時間後にはお世話になっている顧問弁護士の先生に連絡を入れ、相談をしました。
そこで弁護士の先生から「お金のことは私(弁護士)が調べます。お金のことと、次男君への対応は別軸で考えたほうがいいですよ」と言われ、確かにそうだとハッとなりました。
子どものしたことだし、私も気づかなかったのもいけないしと、弁護士の先生の言葉で冷静になれたところはあったかもしれません。
――第三者に相談することで、冷静になれる側面はありますよね。
返金対応は各企業に交渉
――「お金の対応」と「次男君への対応」の二つに分けて考えられた、とのことですが、まず「お金の対応」についてはどうされましたか?
母:
Nintendo Switchで課金した30万円ほどは任天堂さんに、その他のスマホによる課金200万円ほどはGoogleさんに、それぞれ交渉しました。任天堂さんからは、「Switchには課金を防ぐ対策機能が搭載されており、我が家ではその対策を十分にしていなかったために返金は難しい」と回答がありました。仕方がありませんが、確かにその通りだと納得しました。
Googleさんからは、「金額が大きいのでGoogle社内で検討したい」と返答がありました。ただ金額があまりに大きく、すぐに決められないと何回か連絡をいただき、さまざまな部署を介していただいたようで、交渉を開始して、最終的に返金いただいたのは半年後でした。
※返金対応は各企業、お客様の状況などによって異なります。必ず返金されるものではございません。まずはご利用サービスの各企業にお問合せください。
返金されたことは次男には伝えていない
――返金されるまで半年以上かかったのですね。次男君には返金されたことを伝えましたか?
母: いいえ、伝えていません。「お金は戻ってくる」と思われてしまうのもよくないので。
父: 次男は、本当は悪いことだとわかっていた気はするんです。それよりも「バレずに突破した俺すげえ!」が勝った気もしますね。ただ結局、「ナイショ課金は絶対バレる!」っていうのが今回わかったとは思うんです。
お母さん特製「お金講座」で再発防止教育を徹底
――返金対応以外の次男君への「お金の教育」については、どういったことをしましたか?
母:
「お金について」の資料を私が作って、様々な説明をしました。
例えば我が家の収入は1か月○○円です、このうち食費は〇万円、家賃は〇万円、みんなでどこかへ遊びに行ったら〇万円……と引いていって、1か月生活するにはこのくらいお金がかかってしまうんだよ、と伝えたり。お金にまつわる子ども向けの本も読ませました。(なお、当時だけでなく最近のお金の本も入っています)
あと230万円がすごい金額だとわかってもらいたかったので、年金生活をしている祖父へ次男から電話取材をしてもらいました。「230万円あれば、じいじは何か月暮らせるのか」と考えさせました。
こういったことを通じて、次男も大変なことをしてしまったと徐々に気づいていったようです。次男がショックを受けていたのは、アプリの高額課金が発覚した直後よりも2週間後くらいに見えました。
このころ長男が祖父の家から戻ってきたので、次男の高額課金の話を伝え、これから様々なお金の話を次男にするから、長男にも協力してほしいと伝えました。長男は「なんでも言ってくれ」と言ってくれて。私の「お金について」の話は次男だけでなく、まだ当時小さかった長女も含め、三きょうだい全員で聞いてもらいました。
――長男君は、アプリの高額課金のことで弟をからかったりしないで立派ですね。
「返済日めくり」で230万円を返そう
母:
あと、子どもとはいえ人のお金を盗っているのですから、やはり責任も取らなきゃいけませんよね。ですので、230万円を0円にするための、カウントダウンできる日めくりのようなものをダンボールで作って家に置きました。次男本人だけでなく、「お父さんお母さんも大人だし手伝うから、この230万円を0円にしよう」と伝え、日々「返済」を行っていきましたね。
ちょうどこのころ新型コロナウイルスの給付金が1人10万円いただけましたので、5人家族で50万円だから、230万円が180万円になりました。それから、子どもたちはしばらく美容院に行かないで家でカットしたりなど、本来使うはずだったお金を使わずに過ごした分をカウントダウンしていきました。それでも全然追いつかないから、子どもたちからは「ネットフリマに出せるものは出そう」と提案があって家族で取り組みました。
――お子さんたちの成長は頼もしいですね。
父: 3か月ぐらいかかって、230万円が0円になったので、そこで次男には没収していたスマホを返しました。親側のスマホの管理が至らなかった点はあったため、課金する度に僕にメールが届くように設定を変更したり、勝手にパスワードを変えられないようペアレンタルコントロールもしっかり行ってから返却しました。
高額課金に対する子どものメンタルケア
――アプリの高額課金の件で、次男君を何度も叱ったりはしましたか?
父: 230万円を家族で返済している時に、「ネットフリマで売れたからコンビニに発送に行くぞ」と次男に声をかけたら、「面倒くさいからパパが行ってきて」と言われたことがあり、その時は叱りましたね。ただ、それ以外は最初に叱ったので「それでおしまい」と繰り返し同じことで叱ることがないよう気を付けていました。
母:
私もあまり次男を追い詰めてもいけないと思っていて、次男が通っていたプログラミング教室の先生に相談したところ、次男に心理士のメンターの方をつけていただけるというお話をいただいて、利用させていただきました。基本的にそこでの会話の詳細はメンターの方と次男だけの秘密であることを次男にも伝え、次男に安心して話してもらえる環境を作りました。
そこでメンターの方から、「(次男は)泣きながら色々話していた」とか「事態を把握していて傷ついている」など概要のフィードバックをいただき、親としても次男の理解度や気持ちが分かり、親子ともに安心できたところはありますね。
――自治体にも無料で親、子、それぞれが相談できる教育相談があるので、活用してみるのもいいですね。(「お住まいの都道府県(市区町村) 教育相談」で検索)
「アプリの高額課金を繰り返さないか」が気がかりだった
――長岡さんご夫婦の中でこの件が一段落したと感じたのはどのタイミングでしたか?
父: 僕はアプリの高額課金が返金された時点で一段落ついた認識でした。
母:
私はそれよりも長かったです。SNSなどで子どもの高額課金の体験談を読むと、多くの場合で2度目、3度目と高額課金が繰り返されていたんです。なので、こういったことって改善されないのかもしれない、2度目があったらもう打つ手がないかもしれないと、最初1年ぐらいはずっと心配でした。
今回取材のお話をいただき、あらためてあれから4年が経ったのだなあと思いましたね。取材のための資料を見返すことで、私も気持ちの「棚卸し」ができる機会になったと思います。
「お約束メイカー」は約束作りだけでなく親の勉強にもなる
――最後に「お約束メイカー」の感想について教えてください。
父:
自分の写真をはめ込めたり、キャラクターの動きがあったり、とてもいいですね。
各家庭のレベルに合わせて、我が家のように緩い設定の約束も作れますし、本当にダメなものは再度考えさせられるようになっていて、親も勉強になって面白いと思いました。
- POINTまとめ
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- 親子で使っているスマホのOS(iPhone/Android)が違う場合は要注意!
- 我が家の生活にいくらかかるか、しっかり伝えることが高額なナイショ課金を防ぐ
- トラブル時こそ第三者に相談し、保護者は冷静になりたい
- インタビュアー/ライター
石徹白 未亜 - いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂