親子でスマホ・ゲームお約束メーカー
インタビュー
2023年8月29日

ゲーム課金に興味が出てきた子どもへ正しい金銭感覚を身に付けるお金の教育とは?

子どもにお金の教育?しなくていいでしょ、私が買い物する姿を見ていれば分かるはず

親たちが子どもの頃とはお金の環境は激変しておる!それでは子どもにさっぱり伝わらんゾイ!

もくじ
八木陽子さん八木陽子さんプロフィール
株式会社イー・カンパニー代表取締役 キッズ・マネー・ステーション代表
ファイナンシャルプランナー、キャリアコンサルタント。2005年からお金教育・キャリア教育を普及する「キッズ・マネー・ステーション」を主宰し、所属する全国の講師たちと共に、小・中・高等学校にて授業や講演をしている。監修した書籍は「10歳から知っておきたいお金の心得」「マンガでカンタン!お金と経済の基本は7日間でわかります。」など多数。

お子さんから「ゲームで課金をしたい!」と言われたことのある親御さんも多いかもしれません。ゲーム以外にも投げ銭(ライブ配信などで、配信者に対しお金を送る行為)や各種フリマアプリなど、今の子どもたちは親世代には考えもつかない「お金との付き合い方」が身近にあります。そのような中で、親は子どもにどのようにお金の教育をすればいいのでしょうか。お金教育の専門家に教えてもらいました。

キャッシュレス時代、子どものお金トラブル増加中?

今、子どもにどのようなお金のトラブルが起きているのか尋ねました。

衝撃のケース①「お釣りが何だか分からなくて捨てた」

八木:キャッシュレス化が進み、現金払いが主流だった時代には考えられない子どもとお金のトラブルが増えています。親御さんもスマホやクレジットカードで買い物する方が多く、今の子どもは親が現金を使う姿を見ておらず、現金のそのものを知らない子どもも増えています。
例えば、ある小学4年生の 男の子は、サッカーの習い事の際にお母さんからお昼代として500円玉をもらっていたのですが、お母さんは普段クレジットカードで買い物をしていたため、男の子は500円玉でおにぎりを買った後にお店の人に渡された「お釣り」をどうすればいいか分からなくて、捨てていたんだそうです。 つまり、お釣りは「お金」だと知らなかったんですね。

――えっ!そのレベルで知らないんですね!

衝撃のケース②「交通系ICカードにお金が入っているわけない!」

八木:これは私の娘のケースですが、娘が小学生1年生になり、お金がチャージできる交通系ICカードを持たせていたんです。あるとき娘 が自分の交通系ICカードを見て「こんな薄っぺらいものに、お金なんて入っているわけないよね」と言っていて仰天してしまいました。子どもにとって「データ」という概念は難しいようなんです。現金の1,000円と、ICカードにチャージされた1,000円が「同じもの」と結びついてないんです。 そのほかの例として、子どもにチャージした交通系ICカードを持たせたところ、チャージされているお金の価値を子どもが理解しておらず「よく分からないけど好きにお金が使えるから」と友達に気前よくおごり続け、チャージ分を使い果たしてしまったケースもありました。

――小学校中学年くらいの子どもが学力などでつまずきを見せる「小4の壁(9歳の壁、10歳の壁とも呼ばれる)」という言葉がありますが、そのころに理解できはじめる内容の一つに「抽象的な概念」があるそうです。「データ」はまさに「抽象的な概念」ですよね。

八木:はい。その上、ゲームをしていれば、ゲーム内で設定された独自通貨もあるので、子どもは混乱してしまうと思います。ゲーム課金でも、実際のお金だと理解できず課金を重ねてしまったケースもよく聞きますね。
また子ども同士で話していると、子どもの間違ったお金の認識が仲間内で共有されてしまうこともあるんです。実際は親のキャリア決済なのに、友達の「こうすればタダだから!」といった発言を真に受けて、キャリア決済でゲーム課金してしまったというのも聞きますね。

こんな薄っぺらいものに、お金なんて入っているわけないよね

衝撃のケース③「ネットで注文すればお金はかからないよ!」

――「今の子は親が現金を使う姿を見る機会が少ない」と先ほどお話がありましたが、共働き世帯の増加やネットショッピング、食品の宅配サービスなどの普及で、そもそも今の子どもは「親と買い物に行く」機会が少ないかもしれませんね。

八木:そうですね。我が家も有機野菜の宅配サービスを定期的に利用していたんですが、あるとき当時小学1~2年生くらいだった息子 が「うちには野菜がタダで届くから買わなくていい」と言ったことがあり、これも衝撃でしたね。
また別の例として、あるお母さんが、お店で買い物をしてお財布を出そうとしたら、お子さんから「ネットで注文すればいいじゃん!お金がかからないし!」と、言われたそうです。

――「ネットショッピング=タダでもらえる」は子どもによくある勘違いなんですね。

八木:やはり親世代が子どもの頃と、今の子どもを取り巻くお金や買い物の状況が激変していることが大きいですね。親世代は「10円玉がやっと10枚たまって100円になった!」「駄菓子屋に100円を握りしめていって、さて、何を買おう」といった、お金との原体験がありますが、今の子どもにはそれが少ないですから。だからといって、このキャッシュレス時代に、いまさら現金を使う生活に戻すのも現実味がないですから、やはり子どもへの「お金の教育」が変わらざるを得ないと思います。

うちには野菜がタダで届くから買わなくていい

子どもに対するお金の教育はどうすればいい?

衝撃的なケースが続きましたが、キャッシュレス時代の子どもたちに、親はどうお金の教育をしていけばいいのでしょうか。

お金の教育に難しいことは必要なし!

――子どもへのお金の教育って、難しそうですが何をすればいいのでしょう。

八木:難しいことは必要ありません。「お金は、働いて手に入るものなんだよ」「お金は働いた分しか手に入らないんだよ」といった基本を繰り返し伝えることです。本当に簡単なことでいいんです。「外でジュースを買ったら、お金がかかるから水筒を持って行こうね」とか。

――それなら、毎日の生活で伝えられることがありますね。

八木:親としても、何も節約するだけでは なく、お金についてお子さんに話したいことはあるはずですよね。そういったことを機会があるたびに話しておくと、子ども側に「親も考えてお金を使っているんだな」と、ふんわりでも分かってきます。それだけでかなり違います。
先ほどお話した娘の「交通系ICカードにお金が入っているわけない」発言の際も娘と話しましたよ。「写真の場合は、スマホに入っている写真と、写真スタジオで撮影してプリントした写真があるよね。それと同じで現金と交通系ICカードに入っているお金は一緒なんだよ」と、何度も説明しました。「1回言ったから分かるでしょ」「親の私の姿を見てれば分かるでしょ」じゃないんですよね。
息子の「うちには野菜がタダで届く」発言の際も、息子に「家族の健康を考えて、体にいいものを食べたいからちょっと高い野菜を買って、うちまで届けてもらっているんだよ」と伝えました 。 そして、そのお金は銀行を通して払っていることも話すことができ、銀行のしくみを伝える機会にもなりました。

――そう考えると、子どもがお金について衝撃発言をしたときは、お金教育のチャンスとも言えますね。

八木:そうですね。今はネットショッピングを利用される親御さんが多いと思いますが、ネットショッピングだからこそ、ネット上で値段以外にもスペックや 商品の詳細など細かな比較をしたりしますよね。なので、ネットショッピングの際に何を考えて買い物をしているかを子どもに話してあげるのもいいと思いますよ。そういった小さなことの積み重ねで、子どもには「親はお金を大事にしてるんだな」「欲しいものが全部買えるわけじゃないんだな」と気づいていきますから。

ゲーム課金をどうする?フリマアプリをどうする?

――ゲーム課金はどうすればいいのでしょう。

八木:ゲーム課金自体が悪いわけではないんですよね。どのような約束を各家庭で作っていくか、が大切です。例えば、「お小遣いが○○円なら、△△円までの課金だったら子どもに任せる」とか、「課金する時には相談して欲しい」とか、このあたりは各ご家庭の方針によって変わってきます。「お年玉の全部をゲームに課金していい」などもそうですね。もちろん課金がエスカレートしてしまうケースもあるので、課金との付き合い方を親子で丁寧に話し合い、考えていくことが大切ですね。

――方針を決めたものの、どうも違うな、うまくいかないなと思ったらまた話し合いでよりよいものにしていけばいいですよね。

八木:はい。ゲーム以外にも、フリマアプリもご家庭によって方針が違うところですね。「モノを大切にする心を育めるから賛成」という意見もあれば、「ネット上で子どもがモノを売買するのは絶対NG」など、さまざまです。考えはさまざまなので親子ともに話合いをして「腑に落ちる」ことが大切ですね。
なお、年齢制限を設けていないフリマアプリもあります。子どもが勝手にフリマアプリを始めないように、「お金が絡んでくるサービスを利用する場合には教えてね」と親子で約束しておいてもいいでしょう。

――次々にネットからは新しいサービスが生まれますから、「このサービスはダメ」よりも「お金が絡むときは話してね」の方が、投げ銭なども含め、幅広くカバーできそうですね。

八木:そうですね、あと、子どもが買っているものって、意外と分からなかったりするんです。今はコンビニ受け取りもできてしまいますから。子どものITスキルやこういった立ち回りに、もう親は敵わないです。ですので、親子で一緒に決めよう、という信頼関係を持っておくことが大切です。

買い物は親の価値観を伝えられる大切な機会

八木:買い物って、価値観が出ますよね。ひとつの買い物から、親の価値観や方針を子どもに伝えられるんです。親の当たり前は子どもの当たり前じゃなかったりしますし、親の背中を見ていれば子どもは理解してくれると思いきや、案外、理解してないこともあります。ですから「買い物やお金」を通して親子で会話することがとても大切ですね。

――親の価値観に触れるのは、子どもにとっても貴重な経験ですよね。

八木:ただ日本は「お金のことを言うのは、はしたない」という意識も強く、親から子どもへのお金の教育をする機会が諸外国に比べて少ない傾向があるんですね。なあなあで、以心伝心で今までやってこられたのでしょうけれど、キャッシュレス化の流れが今後一層進んでいくはずですから、家庭の中でもお金について話す習慣を身に着けておきたいですね。

「お金の約束」も一緒に結びたい

――『お約束メイカー』の感想について教えてください。

八木:スマホ利用について、「スマホは使いすぎない」とか「友達の写真を勝手にアップしない」などはご家庭で約束をされていることが多いと思いますが、そこにお金に関する約束も『お約束メイカー』で結ばれるといいですね。
ただ約束ができても、子どもは約束の抜け道を見つけてくることが得意です。そういった際も話し合ってまた決めていくという信頼関係や、普段からお金のことを話せる雰囲気があると、臨機応変に対応できると思います。

八木さんインタビュー風景
POINTまとめ
  • キャッシュレス時代で、今の子どもは親が現金を扱う姿を知らない
  • お金の教育は難しくない!日々の生活でお金について話すだけ
  • 日本はお金の話を避ける傾向あり。親の価値観を伝える貴重な機会を逃さないで

POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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