こらー!早く起きなさい!もう、夏休み明けですっかり夜型になってしまったわ!
健康的な生活リズムを取り戻すための話し合いのコツを教えるゾイ!
- 親野智可等さん
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教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。『子育て365日』『反抗期まるごと解決BOOK』などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Twitter、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。オンライン講演も可。Twitter、Instagram、YouTube、Blog、メルマガ、講演のお問い合わせなどについては「親力」のHPから。
夏休みは期間も長く、生活リズムが乱れてしまいがちです。近年は猛暑で外出が難しいことから、ゲーム・スマホ三昧で過ごしたお子さんも多いのではないでしょうか?
長期休みでデジタル機器にハマってしまい、生活のリズムが戻らずにお困りのご家庭もあるかもしれません。
今回は、長期休み後に生活リズムを戻すポイント、新しい約束づくりの話し合い方を教育評論家の親野智可等(おやの・ちから)さんに伺います。
夏休みが子どもに与える良い影響と心配なこと
夏休みをはじめ長期休暇は子どもに様々な影響を与えます。良い面、悪い面について伺いました。
長期休暇は普段ではできない体験ができる
親野:
夏休みは日頃できない様々な体験ができます。帰省して親戚と会って、いとこのお兄ちゃん、お姉ちゃんの話や行動を見たり聞いて刺激を受けたりとか。夏はイベントや行事も多いですしね。
遠くに行かずとも、自宅でも時間があるので、読書や趣味の世界にどっぷり浸るのも、長期休みならではの貴重な経験です。
「日頃できないことが体験できる」ということで、夏休みの約1か月は心の成長や変化がいろんな面で見られると思いますね。
生活リズムが乱れると、便秘になって学習効率も下がる?
親野:
一方、夏休みの心配なこととしては生活リズムの乱れです。つい夜型になり、朝起きるのが遅くなってしまうと、睡眠の質が悪くなり、睡眠不足になることで、体内時計が乱れてしまいます。その結果、排便のリズムも乱れて便秘になってしまう子どもも結構見られますね。
食生活も学校にいる間は栄養バランスの取れた給食がありますが、長期休暇の場合、家庭の環境や食べ物の習慣に影響されます。ジャンクフードばかりになってしまうと、食物繊維が不足してしまって、腸内環境が悪化してしまうことも考えられます。
実は腸内環境が悪化すると、幸せを感じるホルモンであるセロトニンが分泌されにくくなってしまうんですね。セロトニンが不足するとイライラしがちになりますし、さらにセロトニンは集中力にもかかわるので、学習効率も下がってしまいます。
夏休みで乱れた生活リズムを整えるために親子に必要な話し合いとは
長期休暇で乱れてしまった子どもの生活リズムを整えるには、どのように親子で話し合っていけばいいのでしょうか?
朝型、夜型は遺伝子で決まっている
親野:
まず話し合いの前に、知っておいてほしいことがあります。イギリスのエクセター大学では、「朝型か夜型かは遺伝子で分けられており、人の睡眠パターンは生まれつき決まっている」という研究結果があるんです。また、アメリカのマイケル・ブレウス博士は、睡眠と生活のリズムを以下の4つに分類しています。
普段の生活からどのタイプに当てはまるのか、参考にしてみてください。
ライオン型 | 超朝方 | 日の出の前に起きて、すぐに絶好調で活動できる。一方午後になると早くも疲れてきて、夜の早い時間帯に寝てしまう。 |
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クマ型 | 普通の朝方 | 大体日の出と同じぐらいに起きる。午前中~午後の早い時間帯まで好調だが、午後の遅い時間帯になると疲れが出てくる。 |
オオカミ型 | 夜型 | 朝は苦手で起きるまで時間がかかり、午前中はぼんやりしている。 パフォーマンスが上がるのは昼食後で、そこから夜になるにつれ、調子が上がる。 |
イルカ型 | 4時間睡眠型 | 短時間睡眠だが無理がないタイプ。 少数派で200人に1~2人程度。 |
話し合いのポイントは「科学的な根拠」
親野:
このような研究結果を見て、気を付けてほしいのが「親が朝型、子どもが夜型」のケースです。朝型の親にしてみれば、夜型の子どもが怠けているように見えてしまうんですよね。
なかなか朝に起きられない夜型の子を叱ってしまいますが、その子がサボってるからではなく、遺伝子レベルで朝が苦手なんです。
ただ、そうは言っても、現代の社会生活は学校も含め、朝型のスケジュールです。そこで、子どもが夜型の場合には「この子は夜型で朝が苦手なのだ(怠けているのではない)」と親が認めた上で、「朝型である社会生活とどう折り合いを付けていくか」を親だけで抱えず、子どもにもきちんと伝えて話し合うことが大切です。
このように、科学的な根拠をもとに話せば、子どもだってちゃんと「なるほど」と納得します。
納得度合いはやる気に正比例する
親野: 一方で、「親の小言」は、子どもの納得度合いはゼロです。小言で子どもは絶対に動きません。
――親の言うことを「小言」に感じる時は、親の言うことに全く納得していないですもんね。
親野:
はい。あと、一方的に親が「こうしなさい!」と上から押し付けるのも、納得感は同じようにゼロですから、絶対にうまくいかないです。
私は「納得度合いはやる気に正比例する」と、よく話しています。子どももしっかり納得すれば、「それならやってみよう」と思えるんですよ。
乱れた生活リズムを整えるポイント
長期休暇で生活リズムが乱れてしまった子どもの生活習慣は、どのように朝型の学校生活に合わせていけばいいのでしょうか?ポイントを尋ねました。
ポイント① 毎日の入浴時間をそろえる
親野:
意外と大事なのは「毎日の入浴時間をそろえる」ことです。
入浴して体が温まり、その後だんだんと体温が下がっていくのですが、下がっていくときに眠気が出てきます。
入浴して温まった体が冷えてくるときに眠くなるので、毎日の入浴時間をそろえることで寝る時間も自然と決まってくるんです。
ポイント② 起きたらすぐ日の光を浴びる!
親野:
朝日を浴びると脳を活性化するセロトニンが分泌されて、爽やかな目覚めに繋がります。なかなか起きられない子には、親がカーテンを開けてあげるだけで起きやすくなります。さらに朝散歩で朝日をたっぷり浴びればセロトニンが大量に出ます。
そのセロトニンが15時間後にメラトニンというホルモンに変化します。このメラトニンが睡眠誘導物質なんです。つまり、「6時に起きれば21時に眠くなる」ということですね。
――夜眠くなるためにも、朝日を浴びることが大切なんですね。
親野: そうですね、もちろん、日中の活動量を増やすことも大事です。また、よく聞くのが、朝起きられない子どもに「朝だったらゲームしていいよ」と親子で約束するケースですね。ゲームをやりたいがために、ちゃんと起きられるんですね。
ポイント③ 寝るとき、部屋は「真っ暗」にする
親野:
夜寝るときはできれば豆電球などを使わず、部屋を真っ暗にした方が、メラトニンはしっかり分泌されるそうです。
メラトニンには、睡眠誘導以外にも脳を成長させる役割もあります。「夜にしっかり寝ることでメラトニンが分泌されて頭も良くなるし、ゲームは頭も使うからゲームも強くなるよ」って子どもに伝えてあげるといいですね。
長期休み中も生活リズムが乱れないことが理想ですが、もし、昼夜が逆転気味の場合は、夏休み明けの5日前からは今お話ししたような朝型生活にシフトしていった方が良いでしょう。
子どもを一人の大人として扱おう
――あらためて、生活リズムを整えるための約束づくりのポイントについて教えてください。
親野:
まずはお子さんが朝型か夜型か、また親御さん自身がどちらなのかの見極めですね。親子でズレていた場合ほど、そのズレを親がちゃんと意識したいですね。
もし子どもが夜型なら「あなたは夜型で朝が苦手だけど、学校は朝型向きになっているから、いろいろ工夫してうまく折り合いをつけていこう」と、子どもにきちんと伝えましょう。
――頭ごなしに「起きなさい!」より、理屈があるので伝わりますよね。
親野: はい。子どもを1人の大人として扱うくらいの気持ちで、1人の人間としてリスペクトして、ちゃんと話を聞いてあげてください。
子どもに「どうせ僕は(私は)子どもだもん!」と、親が思わせていないか?
親野:
親や先生にリスペクトされると、子どもはそのリスペクトに応えたいという意識で生活するようになります。それで精神的に成長します。
逆に、親が子どもに対して上から目線の命令・指示・小言ばかりで子ども扱いしていると、子どもは「どうせ僕は(私は)子どもだもん!」という意識で生活することになります。こういう意識が精神的な成長にブレーキをかけてしまいます。
――子どもをよくない方向に「子どもぶらせる」手助けを、むしろ親がしていないか?ということですね。
親野: はい。これは前回もお話しましたが、親子の話し合いは「共感的で民主的な話し合い」であるよう親が働きかけたいですね。親が共感的に子どもの言い分を聞いてあげれば、親が話した時に、子どもも親の話を共感的に聞いてくれるようになりますよ。
- POINTまとめ
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- 生活環境の乱れが腸内環境の乱れにつながり、イライラや学習効率の低下にもつながる
- 納得とやる気は正比例!夜型の子どもにはきちんと親が説明し納得してもらおう
- 子どもを子ども扱いすると、子どもじみた反応が返ってくる!
- インタビュアー/ライター
石徹白 未亜 - いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂