親子でスマホ・ゲームお約束メーカー
インタビュー
2023年3月14日

シングルマザーで子どもと時間が作りづらくゲームをやらせているけど、ゲームのやりすぎが心配…

ひとり親家庭なので時間がなく子どもはゲームに夢中になりがち……、どうすれば?

経験者の声を聴いてみるゾイ!

もくじ
柴田真理子さんプロフィール柴田真理子さんプロフィール
不登校でゲームトラブルに悩む親子のサポートAltcom株式会社 代表取締役
健康ゲーム指導士・不登校の保護者支援サポーター。
我が子との壮絶な不登校、ゲームトラブル体験を経て、精神保健福祉士、eスポーツ協会と協働し、親子向けメンタルサポート、在宅登校学習サポートの会社を経営。保護者、学校、自治体、企業向けにIT時代の子育て、親子コミュニケーション講座などの講演、親のバージョンアップ啓蒙活動中。
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ついつい遊ばせてしまいがちなゲーム、上手に付き合っていくには?

ワンオペ子育てになってしまい、なかなか時間の取れないシングルマザー、シングルファザーのひとり親家庭において、子どもが一人の時間にゲームで遊ばせているというケースも多いかもしれません。今回は、自身もシングルマザーの経験があり、息子さんとの衝突を経て、現在はゲームトラブルに悩む親子のサポートを行うAltcom株式会社を運営されている柴田真理子さんに、子どもとの時間がとれない人に向けた、ゲームと子育ての関係について伺ってきました。ゲームをうまく活用したコミュニケーションのポイントや約束を作る事で問題が解決しやすい事など、是非参考にしてみてください。

思春期の息子が不登校とゲーム依存になるまで

まず柴田さんと思春期の息子さんとの衝突について伺います。こちら「ゲーム」が大きく絡んでいた模様です。

「ママと結婚する」と話していた息子の変化

――柴田さんは息子さんが小学生のころ、シングルマザーとして子育てをされていたそうですね

柴田:はい。息子が小学生のころは大きな喧嘩はなく、息子は「ママと結婚する」って言っていましたね。ですが息子が中学生になってから不登校になり、ゲームにはまっていきました。

――息子さんの急変にはどのような事情があったのでしょうか。

柴田:息子をとりまく環境の変化が大きかったですね。まず私自身が再婚し、それに伴う転居がありました。息子はバスケットボールをしていたのですが、転居先はミニバスケの強いチームがすでにあって、なかなかそこにもなじめない。
また私の再婚相手には娘が二人おり、夫の帰りが遅く、家には女三人に息子一人、みたいな感じになってしまって。私自身もつい息子だからあとでどうにでもなる、と後回しにしてしまっていたところもあって。それで息子は「一人になってしまった」という気持ちがあったのかもしれません。

「ママには内緒ね」がトラブルを生む

柴田:そして、環境が変化した息子の状況を心配してか、私の母、息子にとってはお祖母ちゃんが「ママ(柴田さん)には内緒ね」と息子にプレイステーションを買い与えてしまったんです。

――居場所がないと感じていたかもしれない息子さんに「こっそり」前提で与えられたゲーム機。嫌な予感がしますね。

柴田:はい。中学一年生の春休みにプレイステーションを買ってもらい、それに私が気づいたのが中学二年の夏休みと、発覚に半年くらいかかってしまいました。息子ももう中学生になったのだからと、親としてもあまり部屋に入らないようにしてしまい、気づくのが遅れてしまったんですね。

――半年後、プレイステーションが発覚してどうなったのでしょうか。

柴田:プレイステーションは4~5万円しますよね。「これどうしたの? 」と聞いても息子にしてみれば「内緒ね」というお祖母ちゃんとの約束の手前、本当のことを言えず「友達に借りた」「いとこのお兄ちゃんに借りた」みたいになって。

――「親には内緒ね」で祖父母や親戚が子どもにゲームを買い与えると、「内緒」の言葉の手前、子どもは親に対し嘘を重ねることになり、かえって問題がややこしくなってしまいますね。

柴田:はい。そして息子は中二の夏休み明けから不登校になり、ますますゲームに依存していきました。結局どうプレイステーションを入手したのかわからないまま。あるとき、この話を母にしたら母の顔色がみるみる変わって、そこでようやくわかったんです。息子との私の仲も険悪になっていきましたね。

「ママには内緒ね」がトラブルを生む

警察沙汰になったあとに思う「藤井聡太棋士となにが違う?」

――息子さんと関係が悪化していた時期に、今にしてみればこう接しておけばよかったと思ったことはありますか?

柴田:ゲームに対する知識を親側が持っておくこと、そして「対ゲーム」にならないことですね。私自身が「対ゲーム」になってしまい、ゲームを息子から取り上げてしまったことがあったのですが、家庭内暴力につながり、警察沙汰になり、私は救急車で病院へ、息子は児童相談所に預けられたことがありました。
病院から帰宅後、テレビで藤井聡太棋士のニュースが伝えられていて。当時、藤井棋士は高校生、息子は中学生と二人とも学生でした。ニュースを見て将棋だと学校を休んで対局しに行っても褒められるのに、なんでゲームだとこんな悲惨なことになるのかなって。ゲームも将棋も、英語にするとどちらも「game」なんですよね。
ならば、ゲームのことをもっと知ろうと福岡eスポーツ協会に連絡をして、ゲームの将来性、市場規模、 ゲーミフィケーション今後の世の中の話などいろいろ教えてもらったんです。

親子の立ち直り~親としての心境の変化とは~

壮絶な柴田さんの子育ての状況を伺ってきました。その後、どう親子関係、そして家族とゲームの付き合い方は改善していったのでしょうか。

不登校の親の心配事を一つ一つつぶしていく

――eスポーツ協会さんとの会話でどのようなことが分かったのでしょうか。

柴田:不登校の親の心配事って「①勉強は大丈夫か」「②人とコミュニケーションが取れるか」「③親亡きあとこの子は大丈夫か(仕事はあるのか)」だと思うんですね。
eスポーツ協会さんに色々教えてもらい、②はゲームでもコミュニケーションが取れるし、③も、ゲームの周辺、プログラミングなどを考えると仕事はあるしゲーム関連の新しい仕事がどんどんできているな、と。また①の勉強に関しては、私自身が塾講師の仕事をしていたので、本気になれば、義務教育の勉強は、1年で取り返せるという手応えはあったんです。 懸念点をひとつひとつつぶしていき、ようやく私自身も息子を見守る姿勢になれましたね。
「ゲームばかりしていると、ろくな大人にならない」と思っていましたが、さまざまなeスポーツ関連の企業人や不登校の経験をした人を知り「ゲームばっかりやっていた人、不登校だった人もちゃんとした大人になっている」とわかって、息子のゲームに反対する理由がなくなりました。

柴田真理子さんインタビュー風景

ゲームでコミュニケーションをとるのは「楽」

――息子さんとはその後どうなったでしょうか。

柴田:増田貴久先生※や福岡eスポーツ協会さんから、お子さんとゲームをしてみることを勧められたんですね。で、帰ったその日に「あなた(息子)と仲良くなりたいからゲームしよう」と早速実践してみたんです。息子はそれまで散々ゲームは悪だと言っていた母親のあまりの心変わりに「キモ!」みたいな反応でしたよ(笑)。食卓でゲームをやる分には文句はいわないと伝え、ゲームを一緒にやるようにしたんです。

※増田貴久先生インタビュー

――ゲームを一緒にやるようにして、どのような変化が生まれましたか?

柴田:今のゲームは難しいですから、クリアするためにはどうすればいいか会話が自然と増えていったんです。息子との関係が険悪だったとき、息子の発話と言えば「メシ」「知らん」「関係ない」だけでしたが、ゲームならコミュニケーションが楽にとれるんです。これは使わない手はないなと。

――ゲームはやりたくない、と言う親御さんや、ゲームによっては時間がかかるものが多く、なかなか着手が難しい親御さんはどうしたらいいでしょうか。

柴田:その場合、子どものゲームを応援することでもいいと思いますよ。要は、子供が好きなこと(ゲーム)を批判しない、ということですね。結局「大人が大人になる」ことだと思います。

――柴田さんは、様々な機関や人に相談しながら問題を解決していったのですね。

柴田:はい。「一人で悩まずに相談する」は悩んでいる親御さんに伝えたいですね。親が子どものことを誰にも相談できず、一人で悩むと、どこまでも暗くなってしまいますので……。

ゲームでコミュニケーションをとるのは「楽」

親子でのゲーム、スマホの約束はどうする?

ゲームを通じて親子の対話を増やしていった柴田さんですが、最後にネット、ゲームの約束について伺いました。

約束づくりの際に、親が仕込んでおきたいこと

――親子でネット、ゲームの利用について、約束をつくる事についてどうお考えですか?

柴田:いいと思います。渡す前にそういう話ができれば理想的ですね。そして、親側としては子どもを納得させるための準備はしておきたいところですね。私も息子とゲームのレーティングについて話すときは、レーティングについて色々勉強しました。ただ、親側の準備は必要ですが、「親の一方的な押し付け」じゃなくて、子どもの意見を聞いた約束にすることも大切ですね。

※レーティング、フィルタリングについて詳細を知りたい方はこちら

――お約束メイカーの感想をお聞かせください。

柴田:写真の顔ハメができるのがいいですね。子どもの一番にっこりした時の写真を入れると親も優しい気持ちを思い出して約束を作れるのでいいと思いますよ。

POINTまとめ
  • 「ママ(パパ)には内緒」で子どもにゲームを与えるのは、トラブルの元!
  • 不登校の「何が不安なのか」をひとつひとつつぶしていこう。一人で悩まずに!
  • ゲームを使えば、思春期の子どものコミュニケーションが楽に

POINTを意識して約束を作ってみる

この記事もオススメ不登校を体験した精神保健福祉士に聞く、親子とゲームの付き合い方
子どもが学校に行かずにゲームばかりしている、親としてはとても不安ですよね。ご自身もゲームが好きで中学生の時に不登校を経験し、現在は精神保健福祉士として不登校の子どもを支援されている増田貴久さんに、不登校の原因や子どもとゲームの付き合い方について伺いました。
石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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