「子どもがプロゲーマーになりたい!」と言って、ゲームばっかりするようになったら親は何をすべき?
プロゲーマー育成校の担任にゲームと勉強の両立について聞いてきたぞい!
- もくじ
- 中村裕也さんプロフィール
- バンタンゲームアカデミー高等部 esports担当スタッフ。
バンタンゲームアカデミー高等部 プログラム制作専攻卒業後、様々な職務を経験。その後、母校をより良いスクールにしたいという思いから株式会社バンタンに入社し、バンタンゲームアカデミーの業務に携わっている。
https://vantan.jp
https://www.vantan-gamehs.com/index.php
子どもが「プロゲーマーになりたい!」と言った時、親は何をすべき?
「プロゲーマーになりたい!」と言って、「ゲームの時間が長くなってしまっている」「勉強に集中しない」そんな悩みを持つ親御さんも少なからずいるのではないでしょうか? バンタンゲームアカデミー高等部eスポーツ総合コース(以下バンタンゲームアカデミー)にて、プロゲーマーを目指す生徒たちに教鞭を取る中村裕也さんに、プロゲーマーを目指すお子さんをお持ちの親御さんに向けてのアドバイスをいただきました。
プロゲーマーって、どんな仕事?
高校卒業資格取得と同時に、プロゲーマーデビューも目指せるバンタンゲームアカデミーでクラス担当をされている中村さん。 まずは「プロゲーマーがどんな仕事なのか」を伺いました。
大会賞金だけでなく、「番組出演や広告」も収入に
――そもそもプロゲーマーはどうやって収入を得ているのでしょうか?
中村 多くの親御さんが想像されるように、プロゲーマーはゲームの大会に出場して、好成績を収めることで賞金を得ています。他にもテレビなどのゲーム番組の出演料や、YouTubeなどの動画配信サイトに動画を投稿したり、生配信をしたりすることで得られる広告収入などがありますね。

プロゲーマーをサポートする仕事
――大会で活躍して賞金を得つつ、その知名度を活かしてテレビ出演や動画投稿によって収入を得るということですね。
中村 他にも、最近少しずつ増えてきたパターンだと、企業運営のプロチームに所属し、普段は運営企業で働き給料をもらいながらプロとして活動するといった、いわゆる社会人スポーツのような形態もあります。この形態ですと、給料をもらいながらプロゲーマーとしても活動できるので、生活の不安はなくなりますが、日本ではまだまだそういったチームが少ないのが現状ですね。
――お話を伺っていると、やはりプロゲーマーって狭き門と感じるのですが……。
中村 そうですね。ゲームのプロとして活躍するわけですから、プロ野球選手やJリーガーと同じく狭き門です。例えば、本校でプロゲーマーになるための勉強をしたからと言って、必ずプロになれるとは限りません。ただ、親御さんはもちろん、お子さんたちにも知ってほしいのですが、プロゲーマーの周囲には彼らを支える仕事があります。プロ選手のマネジメントだったり、大会運営だったり、活躍を記事にする仕事など、それこそ無数にあります。本気で目指した結果としてプロになれなかったとしても、「プロゲーマー」という職業への深い理解につながり、「プロゲーマーをサポートする仕事」を目指すこともできます。
また、先ほど話したように、多くのプロゲーマーは、YouTubeなどで動画の投稿・配信をしています。本校では動画配信のための知識やスキルを学べる授業も行っています。実際に動画編集の技術を活かして就職した生徒もたくさんいます。
――動画編集の仕事に就かれる生徒さんもいるんですね。
中村 仮にプロにならなくても、動画編集の技術は色々な場面で求められますし、ゲーム動画の編集では、ゲーム知識があるに越したことはないので、プロを目指す中で学んだことは大いに役立ちます。「ゲームを仕事にするのは現実的じゃない」そんな風潮もありますが、eスポーツやそれに関連した仕事がたくさんあります。需要も増えていっているので、プロゲーマーになるための勉強自体は有益だと思います。
勉強に身が入らなくなった子どもへの対処法
プロゲーマーは現在の小学生にとって、「憧れの職業の1つ」として注目されるようになってきました。小学生のうちから「プロゲーマーを目指す」と言って勉強に集中しなくなった場合、どう対処したら良いのでしょうか? そのあたりについて中村さんに伺いました。
プロゲーマーへの理解と接し方の判断
――「プロゲーマーを目指す」と言って、勉強時間が減ったというケースの場合、どう対処したら良いと思われますか?
中村 まずは、その子が「どれだけ本気でプロを目指しているか」を見極めること。プロゲーマーという職業を理解しているのか、ヒアリングしてみることも大事ですが、その前に親御さんが「プロゲーマー」について調べておくことが大切です。
――具体的にはどんなことを?
中村 インターネット検索でも構いません。専門用語が多く、難しい部分があるかもしれませんが、大切なお子さんのためにも、まずは知ることが大切です。プロゲーマーという職業についてある程度理解できれば、どれくらい本気なのかを判断できるようになります。例えば、eスポーツのトレンドを理解して、大会の種目になるようなゲームを熱心に練習しているのなら、夢を応援してあげてほしいと思います。逆に、大会種目になっていないゲームを長時間遊んで、「プロゲーマーになるためだから」という理屈は通りにくいと思います。親御さんがプロゲーマーへの理解を深めることで、「プロゲーマーになりたい」と言い出した子どもとどう接していけば良いのか、判断しやすくなるわけです。

本気で目指すなら勉強・ゲームの両立は可能!
「本気でプロを目指す夢を応援してあげてほしい」と語る中村さん。それでも、「ゲームばかりしてしまわないかな」と不安になる親御さんもいるはず。では、不安を払拭するためにはどうしたらよいのでしょうか。
ゲームの練習だけではダメ
中村 (勉強との両立について)不安に思われるのは当然です。プロゲーマーになるために、ゲームの練習だけをしていれば良いかというと、決してそんなことはなく、社会人としての常識を身に付けることも大事ですし、必ず誰もがなれるという職業ではありません。そのため、プロゲーマーをサポートするような仕事も考えることも必要です。ただ、そういったことを一方的に伝えても、なかなか納得してくれません。そのため、プロゲーマーという仕事を理解しつつ、夢を応援しながら、「学校の勉強も大事」であることを、やさしく諭してあげることが大切です。
勉強はプロゲーマーとしての活動に役立つ
――「プロを目指すためには学校の勉強も大事」とのことですが、プロゲーマーになるために学校の勉強は役に立つのでしょうか。
中村 役に立つと思います。理科や数学は、ゲームをプレイする上で大事な論理的な思考力を鍛えてくれますし、テレビや動画の出演時に話すという部分では、国語の勉強も大事。海外選手と交流することもあるので、英語も役に立ちます。スポンサー企業とのやり取りもあるので、社会的常識を身に付けることも必要でしょう。親御さんが「プロゲーマーになりたい」という子どもの夢を理解して、応援してあげられるなら、なぜ勉強が大事なのかきちんと説明してあげられるはずです。
炎上事件をベースに、道徳の大切さを伝えてみる
――なるほど。特に社会的常識というのはプロゲーマーにとって大事なことかもしれませんね。昨今、プロゲーマーによる問題発言が、ネットで炎上することもしばしばありますし……。
中村 そうですね。学校に通うことで得られる一番大事な素養は、「道徳」だと思います。学校生活を通して道徳を学ぶことで、炎上するような問題発言がなぜダメなのかわかってもらえますし、何より発言がきっかけでチームを解雇されるような事態は避けられると思います。生徒に注意することもありますが、その時は「チームをクビになっちゃうよ」とプロゲーマーという職業の目線で注意してあげます。高校生だと、良い言葉じゃないことを理解しつつも、その場のノリで使ってしまうことがほとんどだから分かってくれますが、小学生だと「ゲームの時は使わないよ」と反論してくるかもしれません。そういう言葉を聞いた時は、「普段から使っていると、ゲームの時もでちゃうかもよ。」と丁寧に諭してみてください。
本気で目指す子どものための、親のサポートとは?
本気でプロゲーマーを目指す子どもが増えてきている中で、親はどうサポートしていけば良いのでしょうか?
「子どもと大人は違う」という壁を取り払う
――プロゲーマーの夢を親はどうやって応援すれば良いのでしょうか?
中村 繰り返しになりますが、まずはプロゲーマーという職業を理解することから始めてください。僕自身、プロゲーマーのクラスを担当するようになったのは2年前からで、担当するまでeスポーツの知識はほとんどありませんでした。担当になってから勉強を始め、最初の頃はみんなに教えてもらいながら、少しずつ理解していった感じです。生徒にプロゲーマーやeスポーツのことを質問すると、みんな本当にうれしそうに教えてくれます。
子どもは、心のどこかで「子どもと大人は違う」と壁を作っていると思いますが、素直な気持ちで質問をし、自分が知らないことを教えてもらったら、ちゃんと感謝することで壁を取り払うことができると思います。
――子どもを認めてあげることが大事ですね。
中村 そうです。実際に親御さんがゲームを理解して、子どもと同じ目線で応援してくれているご家庭のお子さんは、ゲームの腕もどんどん上達していく傾向にあります。例えば大会に子どもが参加した時に、試合結果について親御さんがしっかりとゲームを理解していれば、良い所は褒めたり、惜しかった所を励ましたりと、適切なコミュニケーションをとることができます。
子どもがプロ野球選手やJリーガーを目指していて、親がそのサポートをしているような場面をテレビで観ることがありますが、それと同じ感覚ですね。
ただ、野球やサッカーと比べて、eスポーツはテレビで放送される機会も情報も少ない部分はありますが、まずは調べて少しずつ詳しくなっていただきたいです。

一緒に親子で勉強していくことが大切
――先ほど勉強とゲームの両立に関するお話を伺いましたが、ご担当クラスの勉強面の現状はいかがでしょうか。
中村 僕の担当クラスの生徒は、ゲームプレイに論理的な思考が必要なこともあって理数系が得意な子が多い印象です。英語も普段からボイスチャットで海外のプレイヤーと交流している生徒も多いので、すでに日常的な英会話が身についている生徒もたくさんいます。一方で、文系が苦手で、やや読解力に課題がある印象です。個人的な感想ですが、ゲームをする中で、独特のゲーム用語やネットスラングを多用してコミュニケーションをとる文化が根付いてしまっていることも原因かなと思います。本人たちも本当の意味を理解せずに使っていることが多いので、上から目線の指摘をするのではなく、「その言葉ってどういう意味なの?」と聞くようにしています。すると、曖昧な説明をされることが多いので、「よく分からなかったから、一緒に調べてみよう」と声をかけています。そうして、「調べる癖」を根気よくつけてあげることが、大事だと思います。これはご家庭でも出来ますので、ぜひ実践してみてださい。子どもと同じ目線で、一緒に学んでいくことが子どもにとっても大きなサポートになります。
――やはり親子の目線とコミュニケーションが大切、と。
中村 一番大きなサポートは子どもとのコミュニケーションです。お子さんを応援しながら、勉強や社会常識の大切さを伝えることで、しっかり両立してくれるはずです。ゲームを理解せず、「ゲームで生活できるはずがない」と否定して、コミュニケーションを断ってしまうと、子どもは外部に理解者を求めるようになります。プロを目指すお子さんが遊ばれているゲームのほとんどが、オンラインゲームだったりします。そんな背景もあり、「自分のことを理解してくれる、見ず知らずの大人に会いに行ってしまう」といった、一歩間違えれば事件に発展するような行動に出てしまうことも考えられます。
例えば、「プロゲーマーになりたい」と強く思っているのなら、それは立派なことです。子どもの夢を実現しようという力を信じて、サポートしてあげてほしいと思います。
プロゲーマー育成校担任から見た『お約束メイカー』の印象は?
最後に、ガンホーが公開している『親子でスマホとゲームのお約束メイカー』について伺いました。
夢のサポートと約束を両立
中村 本気でプロを目指しているなら、親と決めた約束はしっかり守ってくれると思います。「子どもへのサポート」を約束しつつ、『お約束メイカー』でゲームの約束を作り、守ってもらいながら夢を追いかけられるように、促してあげると良いのではないでしょうか。
- POINTまとめ
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- プロゲーマーを目指すプロセスは、ゲーム業界など就職にも役立つ
- 子どもの夢を理解した上でのサポートが大事
- プロゲーマーになるには「道徳=社会常識」が必要
- 「大人と子どもの壁」を取り払おう
- 夢を応援する代わりに約束を作る
インタビュアー/ライター
斎藤 ゆうすけ- さいとう ゆうすけ。ライター・放送作家。大学在学中よりゲームメディアで記事の執筆を行い、現在はテレビやラジオの放送作家として活動。バンタンゲームアカデミーおよび東放学園映画専門学校にて、講師としてゲーム関連の講義も担当しており、バンタンゲームアカデミー高等部eスポーツ専攻ではプロゲーマーを目指す高校生向けにネットリテラシーの講義も行う。活動に関する告知はTwitter『斎藤ゆうすけ(アニゲウォッチャー)』にて発信中。