ゲームを子どもにさせる前にゲームに関する約束(ルール)を作るのが肝心なのよね
その通りじゃ!しかし約束作りで子どもと揉めやすいのも事実じゃ!じゃからスマートに子どもと約束作りができるポイントを聞いてきたぞい!
ゲーム機を持っている子どもの割合ってどのくらいなの?
「令和2年度青少年のインターネット利用環境実態調査」(内閣府、2021年3月)によると、Nintendo Switch、などの携帯型のゲーム機の利用率は小学生男子で48.9%、小学生女子で30.9%、また、プレイステーション、など据え置き型(動かせないタイプ)のゲーム機の利用率は小学生男子だと38.7%、小学生女子だと24.4%にものぼります。また、専用ゲーム機でなくスマホでできるゲームも今はたくさんありますよね。
お子さんが安全にゲームを利用するためには、親子で約束を決めることがトラブルの防止のために大切です。約束づくりにおいてのポイントについて、ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社(以下ガンホー)が提供している「親子でスマホとゲームのお約束メイカー(以下、お約束メイカー)」の監修を行った、エンジェルズアイズ遠藤美季さんにお伺いしました。
- もくじ
- 遠藤美季さんプロフィール
- 保護者・学校関係者・子ども向けにネット依存の問題や情報モラル・リテラシーへの関心を広げるための活動をする任意団体エンジェルズアイズを主宰。保護者、子どもからのメールによる相談の受け付け、助言も行っている。またアンケートによる意識調査や取材などを通じ現場の声から未成年のネット利用についての問題点を探り、ネットとの快適な距離・関係の在り方について提案している。著書 『脱ネット・スマホ中毒』『依存ケース別 SNS時代を生き抜く護身術!』 『ネット依存から子どもを救え』 他
ゲームの約束(ルール)を作る前に、親が考えたいこと
ゲームやスマホの利用について、約束を作らなくてはと思っている親は多いはず。約束作りの前に親が意識しないといけないこととは、どういったことなのか伺いました。
そもそも親子で話し合いができなければ、ゲームの約束なんて決められない!
遠藤 今回はゲームの約束がテーマですが、ゲームの約束を作る前に親御さんには考えていただきたいことがあって、それは「親子間のコミュニケーションが築けているか」ということです。親子で話ができているか、お子さんの話を聞けているか。
そもそも親子間のコミュニケーションがあまりうまくいっていないのに、お子さんがゲームをして騒いでいるから、お子さんの成績が下がったからと「ゲーム禁止」という約束を決めても、それは親側の都合ですよね。
お子さんにしてみたら「普段の話を聞いてくれないくせに、なぜゲームには突っ込んでくるのか!」と反発を招いてしまうだけでしょう。
――「ゲームの約束」を話し合えるような「親子のコミュニケーション」をそもそも築けているのか、が前提としてあるのですね。
遠藤 はい。親子で話し合いができる状況であれば、時として険悪になったり、ぎくしゃくしてしまったりするような状況があったとしても、子どもの話を聞き、楽しめるようにゲームをしていこうと持っていくことはできると思います。
親子の円滑なコミュニケーションのために、子どもが好きなゲームを活用
――もし親子でコミュニケーションが十分とれていない場合はどうすればいいでしょうか。
遠藤 もし親御さん自身がゲームに興味があったり、好きであったりしたら、ゲームを通じてコミュニケーションができますよね。この間、中学校で新入生の自己紹介を見る機会があったのですが、男子、女子とも半数近くがゲームやアニメを趣味だと書いていました。親御さん自身がゲームやアニメなどがお好きなら、それを通じ、親子でコミュニケーションがとりやすくなると思います。好きなものなら、自然に話ははずみますから。
お子さん自身に「このゲームをなぜ好きなのか」をプレゼンさせる
――親御さん側がゲームをしない、ゲームに興味がない、というケースも多いと思います。その場合はどうしたらいいでしょうか。
遠藤 お子さん自身に好きなゲームを「プレゼン」させてみましょう。夢中になっているゲームのどこが楽しいの?と聞いてみてください。
これはゲームをしない親御さんでも簡単ですし、何よりお子さんにしてみても自分はなぜこのゲームが好きなんだろう?と自分で考え、そしてそれを人に伝えるという、とてもいいコミュニケーションの機会になりますよ。もちろん、親御さん自身がゲームをお好きな場合でも使える手法だと思います。
親子で対立しないで!! 子どもと同じ土俵には立たない
ゲームやスマホの約束を作る前に、親には子どもの話を聞く力が求められます。お子さんとの円滑なコミュニケーションのため、親はどういったことに気を付ければいいのでしょうか。
親子のコミュニケーションのために、親に求められる力とは?
遠藤 当たり前ですが、親子のコミュニケーションにおいて、相手は子どもであって、親自身は大人です。もし子どもが腹を立つようなことを言っても、同じ土俵に立たず、大人の対応していくことが大切です。
子どもの主張を先に聞き、間違っていると思うところがあっても、間違っている、と正し終わらせるのではなく、「ここは良くないと思うんだけどあなたはどう考える?」と、また子どもの考えを聞く。言葉のリレーを積み重ねていくことが大切です。
これは「言うは易し」なところで、とても難しいです。何度も言いたいことをこらえ、ゴックンゴックンつばを飲んでしまうでしょう(笑)。
ですが、親として「あなたの話を聞きたい」という姿勢を子どもに出すことはとても大切です。それができず、親が子どもと同じレベルに降りると喧嘩になりますし、子どもの間違った意見を正して終わり、では会話が続きませんから。
子どもに嫌われたくない親と、しっかり叱ってほしい子ども
遠藤 中学生と話すと「親は、自分が間違ったことをしたら叱ってくれる方がいい」とは案外よく聞くんです。
――反抗期の世代のわりに、意外ですね!
遠藤 親が怖かったり、自分の歯止めがきかなくなったりしたときに止めてくれるのは、子どもの自分にしてみたら助かると話すんですね。
――「親が子どもと同じ土俵に立って喧嘩をする」のは望ましくないけれど、「子どもが間違った時は、親が親としてきちんと叱る」ことを子どもは望んでいるということですね。
遠藤 はい。そして、そういった、「親としてきちんと叱る」役割を今の親が果たせなくなっているのはあるのかもしれません。友達関係のような親子関係で、そして親側に「子どもに嫌われたくない」という思いが強い。その気持ちもよくわかるんです。怒れば気まずくなっちゃうし、家の中を気まずくしたくない。それでついつい、なあなあにしたくなる。
ただそこは親御さんに頑張ってほしいところではあります。気まずいことがあったとしても家族はそんなことでバラバラにはならない、という安心感をお子さんに与えることにもつながりますから。
子どもはとにかく自分の話を聞いてほしい
遠藤 また、中学生と話をしていて驚くのが、ネット上で自分に優しく話しかけてくれたり、自分の話を聞いてくれたりする、顔も名前も知らない大人をあっさり信用して、実際に会ってしまう子どもが結構いることです。
――大人の目から見たら「怪しさ」満点ですが、なぜそんな人をあっさり信用してしまうのでしょう?
遠藤 そういった子どもたちは学校や家庭で十分自分が話して、聞いてもらっている実感に乏しいように思えますね。ですので「話を聞いてくれる」という理由だけで、会ったこともない人を簡単に信用してしまう。身近な周りの人に話を聞いてもらえていない、という子どもたちの心境を思うと切なくなってしまいます。
子どもは居場所が欲しいんですが、居場所って人なんです。親が子どもの居場所として深くつながっていないといけないとは思いますが、そこが難しくなっていて、細い蜘蛛の糸みたいになっちゃっているのかなと。なので、強く他から引っ張られると、簡単に切れてしまうんです。
親子のコミュニケーションを増やすため、家族で遊ぼう
――家庭はどうやって子どもの居場所になればいいのでしょうか?
遠藤 話を聞いて、話をして、一緒にいっぱい遊ぶことでしょうね。
遊びは大人も楽しめますからいいですよね。「子どもを遊ばせてあげている」ではなく、親御さん自身も楽しめるようなものが良いですね。アウトドアをしたり、また、テレビのクイズ番組を家族でいっしょに答えたり、家族みんなで遊べるゲームも使えると思いますよ。
先ほど家族間のつながりが糸のように細くなっているとお話しましたが、一緒にキャンプにいった、クイズ番組で盛り上がった、ゲームをした、というこういった経験が一本一本の細い糸になっていきます。細い糸も、何本もあれば強い糸になり子どもの居場所になっていきますから。
忙しい家庭でも「時間の共有」をすることで、家族の一体感を感じられる
――共稼ぎで仕事が忙しいなど、家族の時間を取りにくいご家庭はどうしたらいいでしょうか。
遠藤 時間を共有する感覚、だけでも違うと思います。例えばお子さんが勉強をする際も一人勉強しなさいよ、ではなく、あなたが勉強している間、お母さんは何かしておくとか。互いに何か別のことをしていても「時間を共有する感じ」があるのもいいと思います。
――今は家族全員がそれぞれ別のミッションをこなす時間、という風にとらえれば、違うことをしていても一体感を感じられますね。
具体的にどうやってゲームの約束を決めればいい?
ゲームの約束を作る以前に「そもそも親子間、家庭内でコミュニケーションが取れているか?」についてお話を伺ってきました。では、コミュニケーションが取れていたとして、そのあとのゲームの具体的な約束をどのように作っていけばいいでしょうか。
すべての子どもに当てはまる一つのゲームの約束はない
遠藤 具体的なゲームの約束作りについてですが、みんな一様に同じゲームの約束が適用できる、例えば「小学六年生なら全員一日〇時間まで」みたいな約束はありません。お子さんそれぞれに、特性がありますから。親が自分の子どもをよく見て、子どもが生活のどういう点に困りがちなのかを把握しておくと、それに応じた約束も作りやすいのではないでしょうか。
――ついつい興奮して強い言葉を使い友達ともめてしまいがちな子どもと、そういうことはしないけれどついゲームにのめりこんでしまう子どもでは、理想的な約束は変わってきますよね。
遠藤 はい。特にこだわりが強い子の場合、のめりこみやすさにもつながっていきます。まず、自分のお子さんはどんなお子さんなのか、どういう点に気を配る必要があるのか親御さん自身が考えることが出発点になると思います。
ゲームの約束(ルール)はあえて細かく決めないという手も
遠藤 あとこれは、家庭内でスマホ・ゲームのトラブル知識を共有できており、また、そのお子さんの特性上問題なければ、単純に「家族の約束」しか作らない。それも「お互い不快にならない」「笑っていられる」という方針だけ作る。
この基本方針だけ決めておくメリットは、応用が効くんですよね。細かく決めるほど、約束がいくつあっても足りないですから。ネットやゲームは新しいものが次々に出てくる分野ですし。
また、ざっくりした基本方針だけ設けておけばお子さん自身に「考える余地」を与えられるというのもメリットとしてあると思います。
実際の親子が設定している約束(ルール)とは?
――遠藤さんの方で実際見た、聞いたご家庭のゲームの約束にはどのようなものがありましたか?
遠藤 「夜〇時以降はゲーム禁止」ではなく、「朝は〇時には起きる」と決めているご家庭がありましたね。また、こちらはゲームというよりスマホですが、「子どもが中学生のうちはスマホを持たせない」というご家庭もありました。
地域によってスマホを持つ、持たないの比率も異なりますが、都市部だとスマホを持たない中学生は少数派です。ですが、それでも平気そうな子は平気なんです。本当は欲しいけど親がダメだと言っている理由や思いを理解している。親子でコミュニケーションが取れていて、お子さん側が納得してそれを守っている。
もちろん「スマホを持たせない」のケースは、その親子の関係性だからうまくいっているケースですよ。お子さんによっては強く反発する子もいると思います。繰り返しになりますが、まずは自分の子どもをよく見ることです。
約束(ルール)を破ったときに、ペナルティは作るべき?
約束づくりについて伺ってきましたが、「約束を守れなかった場合のペナルティ」はどうすればいいでしょうか。そもそもペナルティは設けた方がいいのか、どういったペナルティがいいのか?遠藤さんの考えを伺いました。
ペナルティを設けても、あえて1,2回は泳がせてみる
遠藤 ペナルティも、約束と同じで、それぞれのお子さんの特性や状況に応じ、ペナルティを決めるのがいいと思います。
ですが、ペナルティを設けたとき、1,2度は許すというのもありかな、と思います。お子さん自身が「ばれてないかな?」とドキドキしたりとか、「これ以上違反したままだと親からめちゃくちゃ怒られるだろうからやめておこう」と考えたりとか、お子さんなりのストッパーを形成できるようになっていきますので。
細かく約束やペナルティを決め、「約束を破ったからペナルティ」みたいにすると、お子さんにしたら受け身になってしまい、「このままではまずいかも?」というストッパーを自分で育てられなくなってしまうんですね。
約束を破った時のペナルティより、親として悲しいと伝える
遠藤 あと、私個人の考えでは、ペナルティは設けなくていいとも思っています。「ペナルティが嫌なのでやらない」というよりは、「約束を破ったら約束を結んだ相手を傷つけてしまう」と、言葉で伝えるのがいいのではないかな、と思います。
親を傷つけたくないって気持ちは、特に子どもが小さいころほど大きいですから。約束を破られて悲しい、と私も娘たちに伝えていましたよ。
ゲーム以外に頑張れるもの、夢中になれるものを用意しておく
遠藤 あと、子供が小学生くらいのうちに「ゲーム以外にも夢中になれるものを見つけておく」というのも大切だと思います。
というのも、中学生でゲームから離れられない、ゲームにしか興味がない子と話していると、ほかのことに関心を持つのが難しくなっているんですね。「こんなのどう?」と他のことを見せてもなかなか関心を持ってくれない。厳しいですね。
――そういった子どもたちは、ゲームにしか興味がないのでしょうか?
遠藤 そういう子どもたちでさらに心配なのは、ゲームで何かをしたいというわけでもないように見えることです。ゲームが好きだからゲームを作りたいというわけでもない、eスポーツプレイヤーも興味ない、プログラミングも興味がない、と、何事にも興味を失っているんですね。
――中学生にして白けてしまっているのも、きつい状態ですね。
遠藤 ですので、興味のあるものを小学生くらいのうちに持たせておく、体験させておくというのは大切だと思います。中学生以降、思春期以降になると子どもと一緒に動物園に行こう、キャンプに行こうというのも難しいですから。
ゲームを買って、約束(ルール)はいつ決めたらいいのか?
――ゲームの約束を作る前の親子でのコミュニケーションが大切なこと、実際に約束やペナルティをどう作ればいいか、について貴重なお話を伺ってきました。最後に、ゲームの約束を作るタイミングは、いつが望ましいでしょうか。
遠藤 約束づくりのタイミングは大切ですよね。お子さんがゲームをハイテンションで盛り上がっているときほど、親御さんとしては気になってしまって、やっぱり約束が必要だ!となってしまうんですが、そういうときに約束の話を持ち出しては、お子さんとしては水をさされた感じがしますから。それでお互い険悪になってしまっては、約束も何もないですよね。
全く関係ないとき、家族和気あいあいとしているときに「振ってみる」という感じがいいでしょう。日常の会話の中の発展形で約束を作れるのがいいですね。
私個人としてはゆるい基本方針だけ決めて、という形もありかなとは思いますが、具体的な約束やペナルティがあったほうが親子ともに快適なケースもあると思いますので、「お約束メイカー」なども活用されると良いと思います。
- POINTまとめ
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- 約束づくりのベースは家族のコミュニケーション
- 家庭それぞれのライフスタイルにあった約束作りが大切
- 約束を守らせることがゴールだと勘違いしない
※Nintendo Switchのロゴ・Nintendo Switchは任天堂の商標です。
※PlayStationは株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの商標登録です。
- インタビュアー/ライター
石徹白 未亜 - いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂