子どもがいじめの被害に遭ったの!許せない!加害者宅に乗り込んでやるわ!!
許せない気持ちはとてもよく分かる!ただ、保護者は冷静さも必要ジャ!
- 阿部泰尚さん

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NPO法人ユース・ガーディアン代表理事、T.I.U.総合探偵社代表。2025年までに2万件以上のいじめ相談に対応、重大事態いじめ等の対応の他、自治体の第三者委員の依頼も受けている。著書「いじめと探偵」(幻冬舎新書)、「保護者のためのいじめ解決の教科書」(集英社新書)、「いじめを本気でなくすには」(角川書店)、「いじめ探偵」(小学館やわらかスピリッツ 原案・シナリオ協力)。「阿部泰尚のなぜか負けない最弱の戦略 探偵の大作戦」
「学校」という子ども達が集まる場所において、「いじめ」をゼロにすることは簡単ではありません。今や子どもたちの必須アイテムである「スマホ」。その存在は、子ども達のいじめの内容をどのように変化させたのでしょうか?そして、もしわが子がいじめの当事者になってしまった時、保護者はどのように行動するべきなのか?「いじめ探偵」としても有名な、NPO法人ユース・ガーディアン代表の阿部泰尚さんにお話を伺いました。
スマホ時代の令和のいじめとは
スマホ所持の低年齢化で、令和のいじめはどのように変化しているのでしょうか。
「いじめ探偵」を始めた理由~学校の先生は「暴く」のが仕事ではない

——阿部さんが「いじめ探偵」として、いじめに関する調査を始めたきっかけについて教えてください。
阿部:今でもそうですが、私は探偵です。そもそも、探偵業務として、いじめを取り扱う予定も計画もありませんでした。
そんな中、あるお父様から、「子どもが万引きをして学校で処分を受けた。子どもの様子や状況があまりに変だ。」という相談があったのです。調べたところ、相談者のお子さんは、別の子から万引きをするよう強要されていたことが明らかになりました。つまり、「いじめ」だったわけですが、これを学校で扱うのは難しいのではと思い、私の方で協力することになったのがきっかけです。
——学校では難しいと感じられたのは、なぜでしょうか。
阿部:やはり、学校には「現場を押さえる(証拠を確保する)」という機能がない点です。学校は基本的に、「聞いた話」だけで判断せざるを得ませんから。また、先生方も「教えること」が仕事であり、「何かを調べて暴くこと」が仕事ではありません。それに、先生方にしてみたら加害児童も被害児童も教え子ですから、どちらかに肩入れすることも立場上、難しいでしょうし。
現在は、NPO法人ユース・ガーディアンとして、無償で年間1,000~2,000件ほどのいじめ相談を受け付けています。そのうち、「いじめ重大事態」(いじめ防止対策推進法28条)に該当するような、直接介入せざるを得なくなる重い事案が年間40件ほど発生しています。
スマホによる現代のネットいじめのメカニズム

——スマホが普及したことで、阿部さんがいじめ探偵を開始された平成の中頃と令和では、いじめの傾向に変化を感じていますか?
阿部:私が活動を始めた20年ほど前は、まだスマホはなく、ガラケーの「メール」が中心でした。やり取りもそれなりに手間がかかったので、一気に情報が拡散することはなかったと思います。
しかし、現在のLINEグループなどのいじめは、構造が全く違います。例えば、誰か1人が「あいつ気に入らない」「〇〇ってウザいよね」と投稿すると、それに対して周囲が一斉に「ウザい」「キモい」と同調のスタンプや言葉を、秒単位で連投してくるんです。「一対一」のコミュニケーションであればそんなことを言わない子でも、LINEグループという閉じた空間だと「ノリ」で、罪悪感なしに悪意を垂れ流していくんです。
そして、ターゲットになった子どもは、一瞬にして自尊心や自分の世界のすべてを破壊されてしまいます。
——そのような悪意の集中砲火を受けた子どもはどうなってしまうのでしょうか?
阿部:ある研究では、子どもの価値観や世界のすべてを形成する割合は、「家庭が2割、学校(外の人間関係)が8割」と言われています。なので、学校やSNSのコミュニティは、子どもにとって「世界のすべて」なんです。大人の社会で言えば、地球上から自分1人だけが完全に排除され、孤立させられたような絶望感を味わうことになります。
だからこそ、ネットいじめに遭った子どもは、「みんなに嫌われた自分には価値がない」と、急速に精神状態が悪化し、大人の想像を超えるスピードで自死という最悪の選択肢に近づいてしまうのです。
いじめ加害者グループは「クラスの一軍男女混成グループ」の傾向
——いじめる側の変化はありますか?
阿部:あります。スマホ普及以前にご相談いただいたケースは、中高生の女子によるいじめが多かった印象でしたが、現状は小中高、男女ともに同率に近くなりました。さらに、いじめの低年齢化が顕著です。子ども達がよく使うSNSでも、いじめが起きています。
また、最近の傾向として、いじめ加害側が男女混成のグループになっている、というのはあります。少し前は、男子は暴力的ないじめ、女子は精神的ないじめという性別による性質の違いがあったのですが、今は、一人のターゲットに対し、男子が身体的・行動的な暴力を担当し、女子が精神的な追い込みを担当するというような、内側からも外側からも逃げ場をなくしていじめるというケースも目立ってきています。
——いじめ加害側グループは、いわゆるクラスの「一軍」の男子、女子が多いのでしょうか。
また、学力によっていじめの質に違いはありますか?
阿部:そうですね、「一軍」の男女たちがいじめの加害側になることが多くあります。そして、この「一軍」から落ちた子が、次のターゲットになることもあります。
また、学校の偏差値が高くても低くてもいじめは起きますが、学力によるいじめの差はあります。偏差値の高い学校のいじめは、本当に巧妙で、闇深いです。いじめる側は、学校、保護者など、周囲をよく観察し、大人たちの理想の子どもを演じているんです。そして自分のペルソナ(仮面)の裏側にあるストレスを誰かにぶつけて、人間を人間と思わないようなおぞましいいじめをし、人が落ちていくことを観察しているような印象がありますね。
ほかにも、加害児童に悪気がまったくなく、行き過ぎたおせっかいが被害児童にとってはいじめになっていたケースや、被害児童への嫉妬が動機だったケースもあります。
わが子がいじめ被害者になってしまったら
子どもがいじめの被害者になったとき、保護者はどう対応すればよいのでしょうか?探偵ならではの視点から教えていただきます。
子どもの悲しみを受け止めつつも、大人としての目線を忘れない

——子どもがいじめの被害を受けていた時、保護者はどのように対応すればいいのでしょうか?
阿部:まずは、家庭が安全で安心できる場であるということを伝え、実感させてあげてください。
また、保護者の方が「思いこみすぎない」ことも、とても大事です。子どものつらい思いを受け止めることは大切ですが、大人の目線で客観的事実と主観的事実を分けてほしいのです。
よく相談を受けていると、保護者側の「うちの子は悪くない」「きっと相手が悪いに違いない!」という予想や願望が、事実と混合しているケースが少なくなく、学校との交渉がすれ違い、別のトラブルになってしまうことがあります。
わが子がひどい目に遭わされ、冷静でいられない気持ちは、私も親なのでとてもよく分かります。ですが、怒り心頭で加害児童の家に乗り込んだり、子どもだけで遊んでいるところに保護者が喰ってかかったりしては、別の事件になりかねません。
「こちらは被害者だ!悪いのは向こうだ!だから、被害者は何をしてもいいんだ!」となると、新たな加害行為をしていることに気づけなくなります。親としての考えや教育方針、大人としての理性をしっかり介在させ、「大人の正しい背中」を子どもに見せてほしいですね。
とにもかくにも「証拠」が命!
阿部:そして大切なのは、証拠の確保です。ネット上で起きたいじめは、スクリーンショットなどのデータ保存をしましょう。ただ、クラスLINEなどは次々に流れていくので、スクリーンショットで全てを取得するのはとても大変ですから、スマートフォンの画面録画機能を使っても良いでしょう。スマホの操作が苦手な保護者の方には、証拠となるスマホ画面を別のデジカメやスマホで録画や撮影をしてください、と伝えています。
——証拠は大切ですが、当の被害児童にしてみると、つらい情報でもありますよね。
阿部:はい。わいせつ行為を強要した動画などもあり、子どもが見たくない、という心理から履歴を消してしまうケースもあります。なので、本人が持っているのが辛いのなら、私たちが預かるから自分の端末からは消していいよ、と伝えています。すでに、証拠を消してしまっていた場合は、それから先の情報については残してほしい、と伝えています。
※LINEトークの保存方法は、LINEのヘルプ等を参考にしてください。
警察?学校?いじめ被害をどこに相談すればいいのか
——いじめ被害を相談する際、学校、教育委員会、警察など、どちらに相談するのが良いのでしょうか?
阿部:かなりの手間だと思うのですが、学校、教育委員会(公立校の場合のみ) 、警察の全てに相談した方がいいです。
——教育委員会は公立の学校が対象になるため、私立の学校に通っている場合はどうすればよいでしょうか。
阿部:私立学校の場合は少し特殊で、学校に対して指導権限を持つのは、各都道府県の「私学振興課」などになります。保護者が相談できる窓口がありますので、そういったところに相談してみてください。
■文部科学省「都道府県私立学校主管部課一覧」
それぞれの守備範囲や専門分野(刑法、いじめ防止対策推進法、教育基本法など)があるため、全てに相談すると、網羅的にカバーできるかと思います。
録音は鉄則!二次被害に遭わないために
阿部:そして、やりとりは必ず、全て録音してください。
——相手に許可を取らないで、秘密に録音してもいいのでしょうか?
阿部:大丈夫です。もちろん、「録音してもいいですか?」と許可を取り録音しても大丈夫ですが、録音を断られた場合に備え、秘密に録音できるように備えておきましょう。
また、相談において気を付けたい点として、民間の相談先の中には、「いじめを受けているのは祖先の霊のせいです」などと根拠のないことを言い出し、弱っている人に付け込むとんでもない相談先もあります。二次被害に巻き込まれないよう十分に気を付けてください。
そして、このような被害を防ぐためにも、証拠として相談のやり取りは全て記録してください。
保護者も知識を!相談の前に、必ず読むべきもの2つ

阿部:そして、これらの機関との話し合いの前に、保護者の方が知識を持つことも非常に大切です。
① いじめ防止対策推進法
② 通っている学校のいじめ防止基本方針
この2つは、必ず読んでください。
学校のいじめ防止基本方針は、学校のホームページに記載されています。
■文部科学省 いじめ防止対策推進法
学校に相談する場合は、「必ず録音する」ことを大前提に、
●4W(いつ・どこで・だれに・なにを)を明確にすること
●相談内容、伝えることを明確にし、回答期限を決める
●相談窓口の担当者は誰か?
これらの対策をしっかりした上で、臨んでください。
相談の前に、「いじめ防止対策推進法」や「学校のいじめ防止基本方針」を読まない人が圧倒的に多いですが、それは、設計図を見ずにプラモデルを作るようなものです。
親が事前に知識を得ることで、相手から間違った案内をされることを防ぐことにも繋がります。
いじめ被害のポイントは、普段との「差」
——子どもがいじめに遭っている場合、どんな様子になるのでしょうか。保護者が気づくポイントをお聞かせください。
阿部:ポイントは、普段との「差」です。お子さんの性格によるので、一概には言えないのですが、明るい子が暗くなったり、逆に大人しい子が明るくなったりということがあるので、普段との差を見極めることが重要になってきます。
子どもは「最悪の選択」を選ぶスピードが早い
阿部:私は、いじめで子どもを亡くしてしまった、自死遺族の方とお話することもありますが、保護者の方が子どもを見ていなかったのかというと、そんなことは全くありません。普段からコミュニケーション取っている親子でも、そうなってしまうことはあります。
精神科医の先生とお話していたとき、「子どもの場合、自死に至るまでのスピードが圧倒的に早い」という話になり、私もそう感じています。大人は死後のことをいろいろと考えてしまい、ためらうことが多いのですが、子どもの場合は、いったん死のうと思ったら、行動に移すまでがわずか数分以内という可能性もあるんです。
このスピード感ですと、保護者が気づけるかというのは非常に難しい…、ほぼ不可能であると考えています。止めることができた保護者の方からは、「たまたまタイミングが良かったから」という話も聞きます。
多くの場合、保護者の方が子どもから目を放していたわけではないということを、知っておいていただきたいです。
わが子がいじめ加害者になってしまったら
つい、いじめ被害に遭うことを心配しがちですが、子どもが加害者になるケースもありえます。その時、保護者はどうしたらいいのでしょうか。
いじめ防止対策推進法が生まれるきっかけとなった「大津いじめ事件」を知る
——もし、わが子が加害者側だった場合、保護者はどうすればよいのでしょうか。
阿部:いじめ防止対策推進法の第2条を読むことです。そして、いじめ防止対策推進法ができるきっかけとなった、「大津いじめ事件」について調べてみてください。いじめ防止対策推進法は、大津で亡くなられてしまった子どものほか、多くの子どもの犠牲の上で生まれた法律です。
その上で、わが子がした加害行為について、「逆に被害者だったら」と立場を変えて考えてみてください。「子どものしたことなんだから」、「子ども同士の問題に親が出るべきではない」というのは、保護者の方が問題から逃げ出す口実です。 加害行為を認め、謝るべき時はしっかり謝る姿を子どもに見せることが大事です。
※いじめ防止対策推進法 第2条…この法律におけるいじめの定義がされている条項。被害を受けた子どもが心身の苦痛を感じているものがいじめにあたる。
※大津いじめ自殺事件…2011年、滋賀県大津市の中学二年生が同級生からのいじめを苦に自殺した事件。学校、教育委員会の隠蔽が大きな社会問題となった。
「こちらはやり返しただけ」というケースは?
——ただ、「相手が先にいじめをしてきたのであり、こちらはやり返したんだ」というケースもありますよね。
阿部:はい。被害者と加害者が転換したり、互いにやりあったりしているケースも多いです。
たとえ先に暴力を振るわれたとしても、「相手をねじふせてしまえばいい、戦えばいい」という考えではなく、「加害をやった時点で負けなんだ」「そうではない解決方法を考えないといけない」という方向に子どもを導いてほしいと思っています。起きてしまった加害行為についてはちゃんと謝罪し、一方で自身が受けた被害については、「こういったことがあった」と客観的な事実として、学校や警察などに冷静に報告することが良いと思います。
うちの子が罪に問われないか、よりも加害児童の保護者に考えてほしいこと
——そもそも、いじめは犯罪行為になるのでしょうか?また、加害者側は未成年でも法に問われることはあるのでしょうか?
阿部:いじめ行為は犯罪になります。少年法がありますが、事案によっては家庭裁判所や児童相談所に送致されることがありますし、鑑別所や少年院に入ることもあります。民事においては、損害賠償請求の対象になります。
ですが、保護者の方には「うちの子が罪に問われてしまうのか」よりも、「子どもが犯罪行為をしてしまったこと」を重く見てほしいです。
被害を受けた子どもが、すぐに回復することはありません。「いじめ後遺症」といって、大人になってからもいじめの被害を受けた人は、当時の被害を鮮明に思い出せるのです。心の傷はもとに戻ることはなく、「フラッシュバックが起きたときにどう対処するか」という対処法を考えていくしかありません。
——精神医療的な対応も、状況によっては必要になってくるのでしょうね。
阿部:はい。一方、海外ですと、「被害側」だけでなく「加害側」が精神的な治療を受けることが一般的な国もあります。日本でもそういった活動をされている医療関係者の方もいますが、一般的ではないかと思います。
いじめる相手を、同じ人間と思っていないような凄惨ないじめも見てきました。私は、加害側こそこういった治療を受けた方がいいと思っています。
デジタルネイティブの子を持つ保護者達へ
スマホがデジタルネイティブの子ども達に与える影響と、保護者へのメッセージを伺いました。
スマホは親が子どもに「貸しているもの」

——スマホがいじめのきっかけにもなりうるということですが、スマホを持たせている保護者に向けてのメッセージがあればお願いいたします。
阿部:スマホなどのデジタル機器は、保護者が子どもに「貸している」ものであるという認識を持つことが大切です。この認識が、さまざまなトラブルから防ぐことになると思っています。
スマホは非常に便利な道具である反面、リアルな人間関係を希薄にしてしまう側面もあります。海外では、「スマホを使わない日を設ける」などを試みる家庭もあるようです。
ちょっと不安になるかもしれませんが、まずは親御さんもスマホを二時間だけ手放すということから、一緒に始めてみるのも良いと思います。
そして、リアルでしかできないコミュニケーションを、まずは親子でしてほしいなと思います。
- POINTまとめ
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- 証拠が命!スクリーンショット、録音、録画を駆使する
- 学校、警察、教育委員会に相談を。悪質な民間窓口には注意!
- いじめ防止対策推進法は必ず読むべし
インタビュアー/ライター
石徹白 未亜- いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂







