親子でスマホ・ゲームお約束メイカー
インタビュー
2026年07月06日

【脳科学者が実践】偏差値アップの鍵はスマホの使用時間!子どもの学力低下を防ぐ方法を徹底解説

我が家では、子どもがたくさん勉強したら、ご褒美に同じ時間スマホも使っていいってことにしているの!

スマホの使用時間が長いと、成績が上がらんかもしれんゾイ!

もくじ
榊浩平さん榊浩平さん

東北大学応用認知神経科学センター助教。文部科学省生涯学習調査官。東北大学理学部卒業。同大学大学院医学系研究科修了。博士(医学)。人間の「生きる力」を育てる脳科学的な教育法の開発・研究を行う。教育現場での講演や教育委員会の顧問などの活動にも従事。著書には『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新聞出版)など。

勉強しているのに成績が上がらない、志望校の偏差値に届かない…。学力は、子どもの進路や将来に直結し、保護者だけではなく子ども本人にとっても切実な問題です。一方でスマホ、タブレットなどのデジタル機器は、所持率の低年齢化が年々進み、学校からも端末が配布されるなど、学習においても欠かせないツールとなっています。スマホをはじめ、デジタル機器は、脳や学力にどのような影響を与えているのでしょうか。スマホと学力の研究に携わっている東北大学 応用認知神経科学センター 助教授である榊浩平さんにお話を伺いました。

スマホの使用が脳に及ぼす影響

はじめに、スマホは、人間の脳にどのような影響を与えているのかお話を伺いました。

影響① スマホで脳の思考停止が止まらない! ~前頭前野の活動低下~

影響① スマホで脳の思考停止が止まらない! ~前頭前野の活動低下~

榊:「スマホの使用が脳に及ぼす影響」だと少々主語が大きいので、「スマホで何をしているか」をもう少し細かく分解しながらお話しますと、大きく分けて三点あります。

まず一点目として、読書などのアナログな行為と、スマホを操作している時を比較すると、思考の中枢と言われている脳の「前頭前野」の部分の活動が、スマホ使用時は低下しがちである、という傾向は全体的に出ています。

平たく言うと「スマホを使用している時は、脳はあまり考えてない」ということですね。これは皆さんも何かしら実感があるのではと思います。

※前頭前野…脳の前方、おでこの裏あたり。思考、記憶、判断、感情のコントロールなどを司る。

——「スマホをただなんとなくスクロールしているのを、ぼーっと眺めている」という自分の姿を思い出して、ドキッとする人も多いと思います。

影響② 「スマホの使いこなし」は脳の勘違い? ~マルチタスクによる集中力低下~

榊:スマホの脳への影響の二点目は、「注意の切り替え」が脳内で頻繁に起きている状況により、集中力が低下するということです。

スマホには様々なアプリが入っていて、それを短時間で切り替えながら使うことが多いですよね。ですが、脳は原則として「一度に一つのことにしか集中できない」性質があります。そのため、スマホの使用により、短時間で頻繁な注意の切り替えが起こると、脳にはストレスになり、集中力が低下してきてしまうんです。

——いろいろなアプリや操作を次々に切り替えていると、「スマホを使いこなしている」とつい勘違いしがちですが、脳の本来の性質から考えれば、むしろ負荷のかかる使い方なのですね。

影響③ 「100いいね」では、満足できない! ~報酬系の怖さ~

榊:スマホの脳への影響の最後となる三点目ですが、これはSNSなどに関わってきます。

脳の中には、報酬に関する回路「報酬系」があります。簡単に言えば、「気持ちいい」と感じる回路です。SNSには「いいね」ボタンなど、人からの評価が数値化されているものが多いですが、自分が投稿したものに、人から「いいね」やコメントがつくと、脳の報酬系が刺激され、気持ちよくなります。

——身に覚えがある人も多いと思いますね。

榊:適度であれば問題ないのですが、短期間で大量の気持ちよさが得られてしまうと、徐々にそれに依存していってしまうんです。

最初は「100いいね」ですごく気持ちよかったのに、次の投稿で「100いいね」をもらっても、初回のような気持ちよさが得られなくなってしまいます。だんだんと、気持ちよさに慣れてしまうんですね。

そして「1,000いいね、2,000いいねが欲しい!」となり、いいね欲しさに投稿する内容も、どんどん過激になっていきかねないのが、報酬系の怖さです。

影響④ 「面白くないショート動画」こそがハマる理由! ~当たり外れが作る中毒性~

榊:また、報酬系は「常に一定の報酬が得られる」よりも、「当たり外れ」があった方がより働きます。この「当たり外れ」を活かした典型的な例が、ギャンブルです。

ギャンブルは毎回当たるわけではなく、たまに当たるからこそ、当たったときに脳の報酬系が強く刺激され、気持ちよくなるのです。

そしてこれは、ショート動画なども同様です。ショート動画って、面白くない動画も結構ありますよね。ごくたまにすごく面白かったり、かっこよかったり、かわいかったりする「当たり」の動画があります。

——ギャンブル同様に「当たり外れ」があるわけですね!

榊:はい。この「当たり」が脳にとっては、大きな報酬になるんです。それで気持ちよくなってしまい、つぎの「当たり」を探して、ついショート動画を無限にスクロールしていってしまうんです。

——ショート動画に限らず、SNSや掲示板など、インターネット上にあるものは、どうってこともないものや、つまらないものも多いのですが、そのような「特に面白くもないコンテンツ」ですら、ネットにハマってしまうための重要な要素だったんですね。

スマホによる子どもの脳への影響

スマホを使うことでの脳への影響は深刻です。成長途中にある子どもには、どのような影響が出てしまうのでしょうか。

スマホによる子どもの脳への影響① 学業不振

スマホによる子どもの脳への影響① 学業不振

榊:スマホによる子どもの脳への影響ですが、特に我々が注目をしているのは、先ほどもお伝えした脳の前頭前野です。

前頭前野とは考えたり、覚えたり、理解したりする「認知機能」を司る部位で、学力やテストの結果とも深く関わります。スマホを使用することで、前頭前野の発達が停滞し、認知機能が低下してしまうことを危惧しています。
「スマホと学力テストの関係」については実例があるので、後半にお話しします。

スマホによる子どもの脳への影響② コミュニケーション力が育たない?

榊:さらに前頭前野は認知機能だけではなく、相手の気持ちを推し測ったり、感情をコントロールしたりするなど、コミュニケーションに欠かせない働きもあります。これらは「非認知能力」とも呼ばれており、社会生活を営む上ではとても必要な力です。

この非認知能力の発達も、スマホによって阻害されるのではないか、という点も心配しています。

発達の停滞は、取り戻せる!のだが…

——脳の発達が停滞してしまった場合、取り戻すことはできるのでしょうか。

榊:取り戻せるかどうかでいえば、取り戻せます。脳は筋肉と同様、使えば使うほど鍛えられます。ですが、何と比較して取り返せるのか、というのは意識しておかなければなりません。

人生はやり直しがききません。例えば、「スマホを一切使わず生きてきた自分」という別の未来の自分に追いつけるか?となると、正直厳しいだろうと考えています。

ですが、誰しも今この瞬間が一番若いわけですから、気づいた時点から改善していくことが、お子さんの将来にとって最大の防衛策になると考えています。

学力とスマホの使用時間の関係

親御さんが気がかりな「学力」と「スマホの使用時間」の調査結果について伺いました。

子どもの成績に一番影響を及ぼしたのは「スマホの使用時間の長さ」

榊:我々、東北大学と仙台市教育委員会では、10年以上にわたって、仙台市の子どもたちの生活習慣を共同で調査しています。

子どもたちの生活習慣を80項目ほど調べ、それらと仙台市の標準学力検査結果との相関(関係性)を見たところ、子どもたちの学力に一番悪影響を与えていたのは「スマホ等のインターネット接続機器の使用習慣」でした。

毎年「スマホの使用時間が長いほど、成績が低い」という相関関係が出ています。

同じ時間寝ていても、同じ時間勉強していても、スマホを見ていると成績が下がる

榊:ですが、この結果だけを聞くと「スマホをたくさん使う子」は、「スマホをしている分、勉強する時間が短いから成績が悪いのでは?」もしくは「スマホを見て夜更かしして、寝不足になっているから成績が悪いのでは?」という疑問も出てきます。

そこで、同じ時間勉強している子ども同士や、同じ時間寝ている子ども同士の間でも成績を比較してみたのですが、それでもなお、スマホの使用時間が長ければ長いほど、成績が低いという結果になりました。

——同じ時間勉強していても、寝ていても、スマホをより長く見ている子どもの方が、成績が低い傾向が出ているのですね。

勉強もスマホもほぼしない子の方が、勉強もスマホもたっぷりする子より成績がいい?

勉強もスマホもほぼしない子の方が、勉強もスマホもたっぷりする子より成績がいい?

榊:実際のデータで紹介します。仙台市の小学校五年生の子どもたちの勉強時間、スマホ時間(学習のためのスマホ時間は除いた、娯楽としてのスマホ時間)と、算数のテストの平均点数を示したものです。

グループ 勉強時間 スマホ使用時間 算数平均点
30分未満 1時間未満 64点
2時間以上 1時間未満 76点
30分未満 1時間以上 57点
2時間以上 1時間以上 58点

①と②を比較すると、勉強時間が長くなれば平均点も12点上がる、という当たり前の結果が出ています。

①と③は、勉強時間は一緒で、スマホの使用時間だけが異なりますが、スマホの使用時間が伸びた③は①より平均点が7点下がっています。

さらに衝撃的だったのが、「④勉強2時間以上/スマホ1時間以上」のグループです。

——④は②と比較すると、勉強時間は一緒で、スマホの使用時間だけが異なりますね(②より④の方が長い)。

榊:はい。そして結果ですが、④グループの算数テストの平均点は58点でした。

①~④を比較すると、スマホを1時間以上使っているグループ(③④)は、勉強をほとんどせずスマホをほぼ見ないグループ(①)より、平均点数が低くなるという結果が出ています。

——これは驚きの結果ですね!

今日から実践!脳科学者が勧める「デジタルデトックス」の習慣

脳や学力のためには、スマホはほどほどにしておいた方が良いようですが、スマホは魅力的です。榊先生が実践されている、デジタルデトックス方法を伺いました。

デジタルデトックス① 通知はオフ!決めた時間だけチェックする

デジタルデトックス① 通知はオフ!決めた時間だけチェックする

榊:スマホの見過ぎを防ぐ、子どもも大人もできる方法を3つ紹介します。

まず1つ目は、「通知をできるだけ鳴らさない、表示させない」です。私はLINEなども含め、緊急連絡用の電話以外の通知は完全にオフにしています。やはり通知が入ると、「新しい情報が得られるんじゃないか」「友達からメッセージが来たんじゃないか」と、脳の報酬系が刺激され、スマホを手に取ってしまい、作業効率などが下がってしまいます。

スマホの通知はオフにして、SNSなどのツールは、毎日決まった時間に確認するのが現実的な解決策かと思います。

デジタルデトックス② スマホのホーム画面のアイコンは少なめに

榊:2つ目は、「スマホのホーム画面のアイコンは少なめに」です。ホーム画面を開いてアイコンがたくさん並んでいると、目的もなく、ただなんとなく触ってしまいがちですよね。

ちなみに私のスマホのホーム画面は、カレンダー、地図、設定、ブラウザの4つのアプリしかありません。

——使用頻度が高そうなLINEなどもないのですか?

榊:そうです。ホーム画面には出さず、あえて隠しています。他のアプリを使うことをちょっと不便にすることで、「なんとなくアプリを触ってしまう」ことを防ぐことができます。

デジタルデトックス③ 就寝前、起床時の使用を控える

榊:デジタルデトックスの3つ目は、「就寝前、起床後の使用を控える」です。
就寝時ですが、私は自分の書斎でスマホを充電して、寝室には持ち込まないことにしています。

そして起床時は、私も以前はそうだったのですが、スマホを目覚ましがわりにしている人は多いですよね。ですがそうなると、朝スマホのアラームを止めたついでに、ついSNSをチェックしてしまったり、布団の中でついだらだらスマホをしてしまいがちですよね。

——身に覚えしかありません……。

榊:まず、「寝室にスマホを持ち込ませないこと」です。そしてスマホでなく、「目覚まし時計を使うこと」をお勧めしています。私もそうしています。

保護者が取り組んでほしいこと

——スマホの使用は、ほどほどであることが大切なのは分かったのですが、一方で、子どものスマホの使用時間の管理においては、うまくいかずに苦労されている保護者も多いですよね。

榊:何よりも、保護者自身が自分ごととして捉えることが大切だと思います。私も学校で子どもたちからスマホについて話を聞いていますが、子どもたちの意見で一番多いのが「僕たち私たちにはスマホとかゲームやっちゃダメって言うくせに、なんでお父さんお母さんはいつもスマホばかりしているの?」なんですよ。

これは私の研究でも出ていますし、世界中で言われていることですが、親のスマホの使用時間や、親のスマホの依存度と子どものスマホ使用時間や依存度はきれいに相関します。親がスマホをたくさん使っていると、子どももスマホをたくさん使うんです。

まずは保護者自身が自分ごととして捉えて、自分のスマホ利用習慣を子どもと一緒に見直していくことが大切です。一緒に自分の人生を取り戻そうよと、共感的な声かけをして取り組みたいですね。

スマホ使用のルールは、子どものルールを作るのではなくて、親も一緒に守る家族のルールを作ることが大切です。

子どもたち自身も、スマホの使い過ぎはまずい、と分かっている

榊:ある小学校で児童たちに、スマホの使用時間のルールを話し合いで決めてもらった際、最初1日1時間ではどうか、と提案があったのですが、別の児童たちから「2時間に延長したい」と話があったんですね。

1時間だと守れそうにないから、2時間にしようといったせめぎあいの中で、ルールが自主的に、民主的に作られていったんです。

——話だけ合わせておいて、時間を守らないことだってできたはずなのに、「1時間は難しいけれど、2時間ならできるかも」、ときちんと考えて意見が出せて偉いですね。

榊:はい。自分ごととして考えている子どもたちの姿が、本当に印象的でした。やっぱり小学生でも、「スマホの使いすぎはいけない」と、わかっているんですよね。私も今さまざまな学校に伺っていますが、小学生の子たちの学ぶ姿勢には、本当に感心させられます。子どもたちの姿勢から、大人が学ぶことの方が多いですね。

「スマホの使用時間を減らすこと」よりも大切なこと

「スマホの使用時間を減らすこと」よりも大切なこと

榊:今回、スマホの使用時間の話が多くなりましたが、「スマホの使用時間を減らすこと」がゴールではないんですね。真の目的は「スマホという現代に欠かすことができないデバイスを、上手に使いこなすこと」です。

スマホを使いこなすためには、どういうことが必要なのか考えたり、親子で話し合って使用時間のルールを調整していく能力は、大人になっても大切な能力です。

そして、スマホは現代生活に欠かせないツールですが、つい依存してしまいがちなものなので、上手に活用したり、使いすぎないようコントロールする力も、子どものうちに育てておくことがとても大切です。

こういったスマホの使い方について、先ほどの小学校のケースのようにクラスで話し合ってルールを決めたり、家族内で助け合って実現していったりすれば、「人と協力する力」も身につきます。これは大人になってからも、非常に求められる能力ですよね。

——スマホを「子どもを惑わす厄介なもの」とだけ捉えていると、見えてこないものですね。

榊:はい。「スマホをどう使いこなしていくか」ということには、様々な学びの材料が揃っています。「時間を制限する」だけにとらわれず、保護者の方もご自身のこととして考え、ぜひ取り組んでいただきたいですね。

POINTまとめ
  • スマホの長時間使用は、学力に影響あり
  • 親がスマホをたくさん使えば、子どももたくさんスマホを使う
  • 時間制限よりも大切なのは、スマホを使いこなすこと

POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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