親子でスマホ・ゲームお約束メイカー
インタビュー
2026年05月12日

【家族療法専門家が語る】ゲームの「衝突」で傷ついた親子関係を立て直す「親の接し方」決定版

子どもがまたゲームばかり!見ているだけでイライラしてくる!

「イライラするいつもの悪循環」に、すっかり陥ってしまっているゾイ!

もくじ
吉川悟さん吉川悟さん

龍谷大学心理学部で教員として20年。それまで民間の家族療法専門の心理相談室を主宰し、スタッフとともに医療関係者からご本人の来ない臨床実践を多数。学術書は数多くありますが、比較的わかりやすいのは「システムズアプローチで考える発達障がい」(金子書房)。民間でも大学でも、後進の指導に勤しんでいる。

「またゲームばかり!」と始まる親子の衝突。ゲームやスマホが原因で、関係がギスギスするご家庭も多いでしょう。しかし、無理に取り上げても根本解決にはなりません。実は「子どもが悪い」のではなく、「家族のシステム」に問題があるのかも。今回は、家族療法の専門家の視点から、関係修復とデジタルと上手に付き合うステップを龍谷大学心理学部教授の吉川悟さんにお伺いしました。

家族療法とは何か

家族療法は、従来のカウンセリングと何が異なるのでしょうか?

本人を取り巻く人間関係に注目するのが家族療法

吉川:家族療法と従来の心理カウンセリングの違いですが、基本的に、心理療法、カウンセリングはアメリカから入ってきたものなので、個人主義がベースになっています。
つまり、「本人がどうすべきか」が、ベースになります。言い方を変えると、本人が来なければカウンセリングにならないんです。例えば不登校のケースなどは、子ども本人が相談に来るかといえば、来ませんよね。来られるのは保護者の方です。このような場合は、カウンセリングはできません。

——当事者(子ども)が来られないと、対処が難しいという相談機関もありますよね。

本人に関するあれこれは「ちょっと横に置いておく」

本人に関するあれこれは「ちょっと横に置いておく」

吉川:一方で家族療法は、問題が起きている本人を取り巻く人間関係に着目します。家族や学校などで行われていることや、関わり方を変えていく形をとるため、本人が来られなくても構いません。
また、従来のカウンセリングは、本人の心の内面、過去の外傷体験、性格特性などにアプローチしていきますが、家族療法では、それらをちょっと横に置いておくんです。無視をするわけじゃなく、ちょっと横へ置いておく。
その上で、本人に対し、誰が/どのように/関わっているかを確認し、その関わり方を変えていくことで、今起こっている「子どもの問題と言われる行動」が、変わっていくよう働きかけるんです。

家族療法から見る親子のゲームトラブル

子どものゲームによる親子トラブルを、家族療法ではどう捉え、対応していくのでしょうか。

親子の日常のほとんどが「ゲームにまつわるトラブル」になっていく

吉川:細かいところではケースバイケースだとは思いますが、子どものゲームの時間やはまり具合など、ゲームにまつわるトラブルになるような材料があり、家族内でゲームのトラブルに関するコミュニケーションが、「日常の大部分を占めてしまう」という状況になっていることが考えられます。
例えば、家族が食卓でご飯を食べている場面を想像してみましょう。この時、子どもが食事そっちのけでゲームやスマホをしていたらどうでしょうか。

——バトルの予感がします。

吉川:きっと、「ごはん美味しいね」とはならないですよね。「食事中だからやめなさい!」「うるさい!」と険悪になり、団らんが成立しません。
そうした中で、親がゲーム機やスマホを取り上げようとして、反発した子ども側から手が出てしまうかもしれません。これも子どもは、最初は取り上げようとする親を「振り払う」感覚だったのかもしれませんが、何回もそういうことをしているうちに、暴力にエスカレートしていきかねないのです。
子どもがたまたま振り払った手が親に当たった状況であっても、振り払われた親にしてみたらとてもショックですから「暴力だ!」となり、暴力を振るったとラベル付けされると子どもにしてみても、本意ではないことを言われて「理解してもらえない!」となります。このようなことが繰り返され、悪循環に繋がっていくんです。

「いつものパターン」に親も子も陥ってしまっている

吉川:親子関係に限りませんが、トラブルになっている人間関係を第三者が見ると、お互いがまずいことをしているように見えます。「そんなことしなければいいのに」と、周りは思うんです。
それは当事者同士も分かっているのですが、トラブルに繋がるようなやりとりが、もうパターン化されてしまっているんです。
親子それぞれが、スマホやゲームでギスギスしていて、まずいパターンが日々繰り返されてしまう。繰り返すことで、状況はますます悪化していきます。振り払った手が親に当たる→暴力になる→包丁が出てきて…というように、脅して相手の行動を変えさせようとするかもしれません。
もちろん、脅したところで相手の行動は変わりませんし、関係性はさらに悪化します。本当に第三者から見たら「そんなことしなければいいのに」なのですが、本人たちはいたって本気です。

悪循環を断ち切るにはどうしたらいい?

悪循環を断ち切るにはどうしたらいい?

——家族関係が崩壊しかねない悪循環ですが、どうしたらいいのでしょうか。

吉川:悪循環に陥った親子それぞれに話を聞くと、お互い「親は(子どもは)、こんなにひどいんです!」となるでしょう。もし第三者が仲裁しようとしても、このパターンにとどまっていると、また同じことの繰り返しになってしまうと思います。

しかし、ここで親御さんに「お子さんは、どんなときに周りを気づかって行動しますか?」と尋ねてみると、どうでしょうか。これは行動を知りたいわけではなく、親御さんがこの質問に回答するときに「お子さんが親御さんをどう見ているのか」という点を知りたいのです。
これは、親子にとって「いつものパターン」ではないやりとりです。子どもにしてみれば、自分の肯定的な側面を親がこれから喋るかもしれない、という状況です。

そこで親御さんが、「この子は昔から気づかいができる子なんです」など、子どもを肯定するような内容が出てきて、子ども側もそれを受け止めている様子が見られるのならば、子どもが望んでいるものについて、断片が見えたとも言えます。
そうであれば、子どもに対して「肯定的な部分」を扱ってあげるとよいかもしれません。ゲームやスマホを「禁止、制限する」ことでトラブルになっていますから、別の形で切り替えていく。例えば、時間や約束をコントロールできていることを肯定してあげることも必要かもしれません。「ゲームやスマホをやめるのは当たり前」ではなく、「よく止められたね」となるわけです。

つまり、今までと違った形で、さらに、親も子も望んでいて、お互いに共有できるような材料をどう増やしていくかがポイントになるんですね。

「いつものパターン」から専門家抜きで脱却できる?

——いつものパターンから違う材料を見出していく、ということですね。ですが、こちらは吉川先生のような専門家の方がいない状態で、親子だけでも行えるものなのでしょうか。

吉川:できます。要は「ゲームやスマホで揉めている」という、いつものパターンで行動しないことです。まず、このパターンは、ほぼ「家の中」で起きていますよね。ですので、家で食事ではなく、外食に行ってみるのもいいですね。

——親御さんも、家にいると「いつものパターン」に流されてしまうでしょうから、「場所を変える」ことは、親子双方にとっても空気が変わってよさそうですね。

吉川:そして違う場所で、「この子は、今、何を困っていそうなのか」、「親にどのように扱ってもらうことを期待しているのか」と考えることです。

「依存」の根っこにあるのは「孤立」

吉川:例えばネットの使い過ぎの場合、社会的に孤立した状況になれば、誰でも、依存的な状況が促進されると思うんです。
子どもの中に「周囲から孤立している」という困り事がある場合、素直にSOSを出せないし、もしかしたら、子ども自身が「困っていること」をしっかりと認識できていないかもしれない。なんとなく不快な気分をごまかすために、ゲームやスマホなど依存行動の中にとどまっている。こんな風に見てみると、お子さんを知るための材料になるかもしれません。
ただ、そういったことを、お子さんがゲームをやっている真っ最中に見つけられるか、といえば絶対無理です。

——いつもの悪循環コースに入ってしまいますね。

吉川:はい。ですので、場所を変えるなどの「いつものパターン」ではない中で見つけ出すのが、取り組みやすいですね。

トラブルを生み出す「いつものパターン」から抜け出そう

トラブルを生み出す「いつものパターン」から抜け出そう

吉川:どんな人でも、普段と異なる状況にあるときには、「日常の中の、ある種の決まった行動」ではないことをすると思うんです。
実際に相談に来られる親御さんにも、家族で外食することやお出かけすることを勧めています。その際には、ご飯の食べ方もアドバイスします。「メニューを見るのは、お子さんだけ」「親御さんは、お子さんが選んだメニューを食べる」などですね。
この時お子さんが、親御さんの好きな食べ物を選んだり、苦手なものを避けたりするようでしたら、「ちゃんと親のことを見ているんだな」という話になるかもしれません。

いつもの場所、いつもの行動様式が、いつものイライラを引き出している?

吉川:問題行動は、「決まった場」の中で起こります。子どものネットやスマホのトラブルが起きるのは、「家のリビングか子ども部屋」ですから、例えば口論になったらお風呂場に移ってみるのも一案です。
普通じゃないからこそ、なんかいつもと違ってやりづらい、という雰囲気になり、違うものが生まれるかもしれません。

——自分の周りの「いつもの環境」が、自分に「いつもの行動」をさせている面もあるのですね。

スマホの約束は、親子でどのように決めればいい?

今までの話をもとに、親子でのスマホやゲームの約束についても考えていきましょう。

上司と部下との約束と、親子の約束の決定的な違い

吉川:例えば、仕事で上司と部下が約束をする場合、どうすればお互い約束を守れると思いますか?

——お互いがその約束に納得していたり、共通の認識ができたら守れるのではないかと思います。

吉川:大人同士であれば、おそらくそうですね。ですが、親子の場合はこれが当てはまりません。「親が子どもを教育しなければならない」という考えに囚われているので、お互いの納得や共通認識という、大人の対等な関係性を前提としたやりとりではないんです。

——大人同士の約束を守る考え方や感覚を親子に適用しても、うまくいかなそうですね。

吉川:はい。親子の場合、約束が成立するのは、約束の基になる信頼関係があるかどうかです。スマホやゲームを子どもが問題なく使えているご家庭では、子どもにとって、スマホやゲームよりも親との関係の方が重要なんです。

「うちは親子の信頼関係がある」と思っているのは親の方だけ?

吉川:「我が家は、子どもとの間に信頼関係があるので大丈夫」と思っていらっしゃる親御さんは多いです。ただ申し訳ないのですが、子ども自身は「親に強要されている」「親はわかってくれていない」と思っているケースのほうが多いですよ。
一番多いのは、親御さんがお子さんに対し、「あれこれ自分が言わなくても、子どもはわかってくれるはず」と期待しているケースですね。

——多くの親御さんが、「自分の子どもなら、このくらいはしてくれるだろう(こんなことは決してしないだろう)」と期待していますよね。

吉川:これが怖いんです。親子の問題の難しさは、ここに集中していると言っていいかもしれません。
言葉にはしていないし、自覚すらないかもしれませんが、親は子どもに、そして子どもも親に期待しています。期待通りの部分が見えてくるとお互い安心できますが、それがずれてくると、トラブルに繋がりかねません。

身に覚えがある親御さんも多いのでは?よくある親子のずれ

身に覚えがある親御さんも多いのでは?よくある親子のずれ

吉川:親子間のずれについて、中高校生のお子さんを持つ親御さんにお伝えしたい例として、想像以上に多くの子どもが「経済的な負担を親にかけるのは申し訳ない」と遠慮をしていることです。親御さんにしてみれば、そこまで子どもに無理をさせたつもりはないでしょうが、実に多くの子どもがそう感じています。
学校の授業料や、修学旅行や部活などの費用、制服代などで、子どもである自分に「親はすごくお金を使っているんだ」と思っています。

——どうして、子どもはそのように考えてしまうのでしょうか。

吉川:例えば、学校から支給されたものを子どもがなくしたり、壊したりして、親から「ちょっとそれ大事に使ってね!1万円もするんだよ!」と言われるなどですね。
これは親御さんにしてみれば仕方がないことですし、当たり前の出費だと理解しているけれど、ついポロっと出てしまった愚痴のようなものです。しかし、子どもからすると、すごい罰を食らったと受け取りかねないのです。ここが、信頼関係がずれはじめる入口になりかねません。

——これは多くの家庭で、本当に起きていそうですね。

信頼関係はこまめな修復が大切!

吉川:勘違いしないでいただきたいのは、「誤解が起こること」自体は構わないんです。大事なのは誤解を「修正するチャンスは、いくらでも日常の中にはある」ということと、修正するチャンスをつかむためにも「いろんなやりとりを普段からしておくことが大切」ということです。
親御さんからお子さんに「お金のことは深刻に心配しなくてもいいんだよ」と言っておくと、子どもも「そこまで思いつめなくてもいいんだ」と思える。
一方で、お金のことのフォローが全然出なかったら、「やっぱり自分の存在は親にとって、すごく経済的に負担なんだ!」と誤解がエスカレートしてしまうんですね。

信頼関係の構築で、長い時間をかけることよりも大切なこと

吉川:信頼関係の材料になるようなものも、逆に信頼関係を崩すようなものも、日々の生活の中でいろいろと起きます。

——さきほどのお金の件といい、責めるつもりではないことも思いがけなく信頼関係に影響するとなると、「信頼関係を崩すような言動は決してしない」というのは無理がありますね。

吉川:はい。ですので、どうやって信頼のずれや誤解に気づき修正していくか、それを日々の中で細かくやっていくかが大切になります。よく「家族の愛情形成は、長い時間をかけて」と言われることがありますが、そんなことはありません。時間の長さではなく、むしろ「誤解が生じたら修正するポイントを押さえる」ことが重要なんです。
例えば先ほどのお金の例ですが、子どもが不安げな顔をしたら、「お金のことについて、必要以上に心配をかけてしまっているかもしれない」と親御さんはわかりますよね。
ほかにも、お小遣いを渡したときに「こんなにいいの?」とお子さんから言われたら、お金について気にしていることが分かります。一方、「ありがとう」とニコニコ受け取っているだけなら、「お金のことは気にしていない」と分かります。

日々の生活をただこなすだけでなく、子どもを知る材料を手に入れよう

吉川:ですので、お年玉などお金を渡す局面で、いろいろ試してみてもいいかもしれないですね。子どもが1万円もらえそうだな、と思っていそうなら、多く渡してみて反応を見てみるとか。逆に少なく渡すとか。
「親子間で1万円を渡しました、はいお年玉です、以上おしまい」で終了させるのではなく、むしろスタートにすれば、子どものことを知るヒントになります。

——先ほどの外食の例もそうですが、「ただごはんを食べておしまい」でなく、いろいろ子どものことを知るために、日々できそうなことはありますね。

新学期のクラス替えも子どもを知る材料になる

吉川:ほかにも新学期を迎え、新しいクラスになった子どもが帰宅し、親である自分にどんな顔をするか、どんな話をするか、というのも、「この子は共感してもらう対象を、親である私に期待しているのだろうか」を知る材料になるわけです。
あれこれ不満や期待を話してくるか、一方で、何も話してこないのなら、共感してもらえる対象として自分は入っていない、ということが分かります。

年齢に応じて対応を変えないといけないのが子育ての難しさ

吉川:ただこのクラス替えの例は、当然ですが、お子さんの年齢にも大きく関わってきます。子どもが小学生なら「お母さんお母さん、新しいクラスがね~」でいいですが、高校生になっても同じでいいのか、というのはありますよね。
高校生にもなれば、親との関係だけでなく、友人関係など他の社会的なネットワークを作り、1人の人として安定していくことを求められ始める年齢でもありますから。
年齢によって、「立ち入らないといけないところ」「立ち入ったらまずいところ」「知っていても知らないふりをするところ」など、いろいろあるので、子どものケースは複雑なんですよね。親御さんは本当に大変です。だからこそ、「失敗しても修正すればいい」なんです。

和気あいあいと、親も楽しんでいろいろ試そう

吉川:お子さん相手に、親御さんもいろいろ楽しんで試してもらえば一番いいですね。やはり和気あいあいとしたコミュニケーションは、いろんな可能性が広がっていきますから。僕の家庭療法の親子面接もワーワーと賑やかにやっていますよ。
約束事を決めるときも、思い切ってくじ引きで今日のネット時間を決めてみるのもいいですね。「実は1本だけ5時間ネット、ゲーム使い放題券があります」と言ったら、子どもは必死になってくじを引くことでしょう。こういったやりとりそのものも、親子関係を作るための材料として使っていくんです。
当然、想定を外れることもありますけど、外れた、当たった、ということもコミュニケーションとして楽しんでほしいですね。

POINTまとめ
  • ギスギスするいつものパターンに、親も子も陥っている
  • とりあえずお出かけや外食に出かけてみよう!場所が変われば、気分も変わる
  • 日々の生活を、子どもを知る材料にしていこう

POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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