ゲームをやめない子どもを怒ってばかりいたら、自己嫌悪になっちゃいそう……
上手な怒り方を覚えれば自己嫌悪に陥らずに済むのじゃ!
- もくじ
- 安藤俊介さんプロフィール
- 一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。アンガーマネジメントコンサルタント。新潟産業大学客員教授。
怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。
アンガーマネジメントの理論、技術をアメリカから導入し、教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナー、コーチングなどを行っている。 ナショナルアンガーマネジメント協会では15 名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルにアジア人としてただ一人選ばれている。
主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、 『アンガーマネジメントを始めよう』(大和書房)等がある。
著作はアメリカ、中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムでも翻訳され累計 70万部を超える。
子どもに対してつい感情を爆発してしまうのって良くないの?
ゲームを「何時までにやめる」と決めたのに、時間を過ぎてもやめない子どもをついつい厳しく怒ってしまったことはありませんか? その結果、自己嫌悪に陥ってしまったり、「子どもの成長に悪影響を及ぼすのでは?」と心配になったりと、思い悩んでいる親御さんもいらっしゃるのでは?ゲームが好きな子どもを持つ親御さんなら「怒らずにゲームをやめさせたり、自分の怒りをコントロールできたりする方法があるなら、ぜひ知りたい!」と一度は思うものでしょう。そこで、今回は、日本アンガーマネジメント協会の安藤俊介さんに子育てにおける怒りのコントロールについて伺いました。
「ゲームをやめなさい」とついつい怒ってしまうけど怒らないで伝える方法って?
大切にしている何かが侵害された時、人は怒りの感情を覚えます
――ゲームばかりしている子どもに対し、怒らずにやめさせるにはどうしたらいいのでしょうか?
安藤 まずは、「怒る」とはどういった感情なのかを理解することが大切です。この「怒る」という感情は、すべての動物に備わっているものです。自分が大切にしている何かが侵害されたり、危ない目にあったりしている時に、それを守ろうとする感情が「怒り」です。
怒りの原因を理解した上で感情と相手へのリクエストを分けてください
――ゲームをやめない子どもに「怒り」を覚えるのは、子どもがゲームをやめないために、親御さんが「何か大切なものを侵害されていると感じた」ということなんですね。
安藤 そうですね。ゲームへの「のめりこみ」によって、どんな事が危惧され、何が嫌なのか、親御さん自身が「怒り」の原因を考えることで「感情に任せた怒り」を避けられるようになると思います。
――危惧される内容はご家庭によって様々だと思いますが、それぞれの親御さんが「怒りの原因」を理解した上で、どうお子さんと接するのが良いのでしょうか?
安藤 「怒り」の原因を理解したら、「怒り」の感情と子どもに「こうしてほしい」というリクエストとを分けて伝えることが大事です。ただ、「ゲームをやめなさい!」と感情的に怒っても、それで子どもが委縮してしまい、無気力な状態になってしまっては困りますよね。「怒り」の原因がわかれば、子どもへのリクエストも明確になるはずです。例えば、「怒り」の原因が「ゲームばかりで子どもが将来良い学校にいけないのでは?」という危惧だとしたら、「ゲームは一日〇時間までならやっていいよ」と約束した上で、「その代わり、〇時間は勉強しようね」と、親と子で妥協点を見つけられるはずです。
自己嫌悪にならない為にできること
怒りの原因を知る方法を元に子どもをどう怒れば良いのか、具体的な例を挙げて語ってくださった安藤さん。続いて、子どもに対して怒りすぎてしまい自己嫌悪に陥ってしまった時の対処方法について伺いました。
カッとなってしまったら大きく深呼吸をしてください
――怒りの原因を理解していても、ついカッとなって怒ってしまい、自己嫌悪に陥ってしまう親御さんも多いようですが、そうならならないためにはどうしたら良いのでしょうか?
安藤 まずは、カッとなって怒ってしまうというシチュエーションをできるだけ減らすことです。私たちは「6秒ルール」と呼んでいますが、カッとなったと感じたら、6秒待ってみてください。この時大きく深呼吸をすることも大事です。その際、息を吐くことを強く意識すると良いでしょう。それにより筋肉が弛緩され、冷静さを取り戻すきっかけになります。
「~すべき」や「~しなければならない」という言葉が出てきたら危険信号
――カッとなってしまったら、深呼吸をしてまずは落ち着くことが大切なんですね。
安藤 もちろん、深呼吸をする余裕もなく感情に任せて怒ってしまうこともあると思います。それで自己嫌悪に陥ってしまう親御さんも多いと思いますが、世の中に完璧な人間なんていません。自己嫌悪に陥ってしまったら、そこからどう次に繋げるかが大事です。どうしても感情的に怒ってしまうという親御さんは、ご自身が使っている言葉に注目してください。「~すべき」「~しなければならない」という言葉を日常的に使っていたり、頭に浮かんだりするようであれば、注意が必要です。
――「~すべき」や「~しなければならない」と断定してしまうと、子どもとの妥協点を探ることもできませんよね。
安藤 子どもには子どもの主張があるはずですが、「~すべき」や「~しなければならない」と断定してしまうと、親の主張を一方的に押し付けることになってしまいます。この「~すべき」や「~しなければならない」という考えを一度捨てないと、上手に怒ることができず、自己嫌悪に陥る負のスパイラルから脱せません。そのスパイラルは、自分自身はもちろん、周囲も不幸にしてしまいます。
「叱る」と「怒る」の違いってあるの?
「叱る」ことは正しくて、「怒る」ことはダメだとよく言われていますが、「叱る」と「怒る」に違いはあるのでしょうか? 安藤さんに二つの言葉についての考えを伺いました。
怒る上で大事なのは一貫性を持つこと
――よく「叱る」と「怒る」は違うと言われていますが、安藤さんは「叱る」と「怒る」の違いについてどうお考えでしょうか?
安藤 私たちは「叱る」と「怒る」を同じものとして捉えています。その上で「怒り」の感情と、その背景にある「相手へのリクエスト」を分けて考えることが大切だと思っています。そこで大事になるのが一貫性です。
――一貫性とはどういった事なのでしょうか?
安藤 例えば、勉強せずにゲームばかりしている子どもがいたとしましょう。そういった子どもに対して、ある日親御さんがついカッとなって感情的に怒ってしまったとします。しかし、別の日には自分の機嫌が良いからと「今日ぐらいは大目に見てあげるか」と怒らなかったらどうでしょう? 子どもから見て、決して一貫性がある行動とは言えませんよね。「怒られる」ことに一貫性がないと、子どももどうしていいかわかりませんし、「今日は親の機嫌が悪いから怒られただけ」と「怒られる」ことを軽視するようになってしまいます。こうなってしまうと、いくら怒っても、子どもは言うことを聞かなくなってしまいます。
作った約束を破って怒ってしまう・・・なら約束を最初から作らない方がいい?
諦めず、頻繁に声をかけてあげてください
――子どもと作った約束を破られてしまったことで、子どもとの「約束」を無駄だと感じてしまっている親御さんもいるようですが、「約束」について安藤さんはどうお考えでしょうか?
安藤 「約束」は一貫性を持って「怒る」ために必要なツールです。先ほどお話ししたように、子どもを怒る上で大事なのは一貫性です。「ゲームは一日〇時間まで」と「約束」したら、親御さんの機嫌が悪かろうが、良かろうが、「約束」を破った時は、一貫して同じように怒りましょう。
――怒り続けても、お子さんの反応が薄いと、「怒っても無駄」と諦めてしまう親御さんもいらっしゃるかと思いますが、そのあたりはどうでしょう?
安藤 諦めてしまってはコミュニケーションが成立しません。真面目な親御さんほど、膝を突き合わせて丁寧に話し合おうとする傾向がありますが、無理に長く話し合いの時間を持とうとするよりも、ちょっとした挨拶や軽い注意でもいいので、頻繁に声をかけることが大事です。特に中学生ぐらいの思春期に入ったお子さんは、親の話を聞きたがらないものです。それでも、例えどんなに煙たがられようが話しかけ続けることで、少しずつでも親御さんの想いは伝わっていくはすです。
アンガーマネジメントの観点で約束はどのように活用できますか?
最後に、子どものスマホ・ゲームのトラブル減少のため、ガンホーが公開している『親子でスマホとゲームのお約束メイカー』を安藤さんに体験していただきました。
『お約束メイカー』で感情とリクエストを切り離してください
安藤 怒る時に重要なのは、感情と相手へのリクエストを切り離すことだとお話しさせていただきましたが、『お約束メイカー』は相手へのリクエストを明確化する上で、大変すばらしいものだと思います。
子どもと一緒に純然たる「約束」を作ることで、感情に任せて子どもを責めたり、凹ませたりすることなく、「約束だから守ろう」という話し合いができます。
ゲームばかりしている子どもに対し、つい感情に任せて怒ってしまうという親御さんは、ぜひ『お約束メイカー』を活用していただければと思います。
- POINTまとめ
-
- 怒りの原因は大切な何かが侵害されているという感情
- 感情と相手へのリクエストの切り離しが重要
- 「~すべき」や「~しなければならない」という感情に注意
- 一貫性を持って怒るようにする
- 子どもに無視されても諦めずに声をかけ続けるようにする
- 「約束だから守ろう」という冷静な話し合いが大事
- インタビュアー/ライター
斎藤 ゆうすけ - さいとう ゆうすけ。ライター・放送作家。大学在学中よりゲームメディアで記事の執筆を行い、現在はテレビやラジオの放送作家として活動。バンタンゲームアカデミーおよび東放学園映画専門学校にて、講師としてゲーム関連の講義も担当しており、バンタンゲームアカデミー高等部eスポーツ専攻ではプロゲーマーを目指す高校生向けにネットリテラシーの講義も行う。活動に関する告知はTwitter『斎藤ゆうすけ(アニゲウォッチャー)』にて発信中。