親子でスマホ・ゲームお約束メーカー
インタビュー
2022年7月28日

ゲーム禁止!と子どもに言っていい?スマホ・ゲームを禁止した際の効果とは?

子どもが約束を全然守らない!キー!もうスマホもゲームも禁止!禁止禁止禁止ッ!

「禁止」は果たして良いやり方かのう…?

もくじ
駒谷 真美さんプロフィール駒谷真美さんプロフィール
実践女子大学人間社会学部教授 お茶の水女子大学大学院で博士号を取得。専門はメディア情報リテラシー・メディア社会心理学・ICT教育。NHK放送文化研究所の研究委員・ベネッセ次世代教育研究所の「親と子のメディア研究会」委員・目黒区の学校評議員などを歴任。著書に『わくわくメディア探検 子どものメディアリテラシー』(同文書院)

言う事を聞かないからゲーム禁止を言い渡したけど・・・

ゲームを中々やめない、言う事を聞かないから、ペナルティとしてゲームを禁止した、もしくは禁止を考えているというご家庭も多いはず。でも禁止にしたから子どもが言う事を聞くようになったか?というと、そうとは言えなかったり…。ゲームの付き合い方を親がどうサポートしていけばいいのか、実践女子大学人間社会学部教授で、メディア情報リテラシー・メディア社会心理学・ICT教育が専門の駒谷真美さんにお話しを伺いました。

ゲームを禁止することによる子どもへの影響

スマホやゲームを禁止しない方がいい理由①「スマホ・ゲーム=悪」ではない!

――「親がゲームやスマホを禁止する事」については、どう捉えていますか?

駒谷 まず、唐突かつ感情に任せて「禁止!」というのは、デメリットがあります。ゲームには色々メリットもありますから。実際「学校成績の上位者は、ゲームを1日1時間くらい遊んでいる子どもたちが多い」という研究結果もあるくらいです。勉強と遊びにメリハリをつけるのに、上手く使っているんですよね。そもそも、スマホやゲームは、子どもの興味関心のトリガーになっているだけで、熱中し過ぎている子どもには、元々「勉強が好きじゃない」から勉強がよく分からなくなり、現実逃避の手段としてしまう背景があると思います。勉強よりスマホやゲームに夢中になってしまう本当の理由は何なのか、探ってほしいと思います。「スマホ・ゲーム=悪」は、一見わかりやすい構造ですが、作為的だとも思います。

子どもがよその家の約束と比べて不満を言ってきた

スマホやゲームを禁止しない方がいい理由②隠れて利用した結果・・・

――「禁止」のデメリットとはどういったものでしょうか。

駒谷 発達心理学的に、保護者の指示に素直に従うのは、せいぜい9歳ぐらいまで。それ以降は、きちんと「理由」を説明しなければ、容易に納得しません。やみくもな禁止は通用しないどころか、逆効果になりえます。つまり、アンダーグラウンド化してしまう。

――「アンダーグラウンド化」とは?

駒谷 その説明の前に、前提として「ゲームと子どもたちの現状」についてお話します。文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(2021年8月)によると、「ゲームを全くしない」小学生は7.4%、つまり、令和世代の大多数の小学生が、何らかの形でゲームをしている事が分かっています。さらに8割弱の子どもたちは、平日2時間以上プレイしている。つまり、今の子どもにとっては、「ゲーム=生活の一部」になっていて、必然的に学校で友だちとの話題もゲームやゲーム動画に関するものが増えるでしょう。

――生活の一部、で共通の話題化していると…。

駒谷 ゲームが友だちとのコミュニケーション・ツールとなっている環境で、禁止された場合どうなるでしょうか。もちろん、子どもたちは、友だちと一緒に遊びたいですから、内緒でゲームを持っている友だちのところに行くわけです。保護者のあずかり知らぬところで、無防備にゲームと接触していきます。禁止にして使い方のルールを説明しないままだと、「何をやってはいけないのか。どこが危ないのか」を知らずに、数万~十万円の高額課金や個人情報漏洩などのトラブルに巻き込まれる危険性があるんです。さらに、トラブルに巻き込まれても、保護者に隠れてゲームをしているので、怒られるのが怖くて相談できず、自分で解決しようとして問題が深刻化する悪循環が生じる場合もあります。

――そういった可能性が起こるのを懸念して心配することもありますね。

駒谷 保護者の方が子どもたちを心配するあまり「スマホやゲームを禁止」したくなる気持ちは、よく分かります。しかし、実際に全面的に禁止するのは、今の小学生の現状にそぐわないし、逆行している事を知ってもらえればと思います。

今の子どもとスマホ・ゲームを取り巻く現状を知る

やみくもな禁止は、「何が危ないのかを子どもが学ぶ機会」を奪い、何も知らないうちにスマホ・ゲームデビューをさせる危険性があると語る駒谷さん。では、環境の違う親側でどんなサポートをしていくべきでしょうか。

デジタルネイティブの保護者とソーシャルネイティブの子どもたちのギャップ?

――親子で上手に付き合っていくには具体的に何を知っておくべきなんでしょうか。

駒谷 その前に、まず令和の親子関係について知っておいてください。保護者の世代は、パソコン・ガラケー・スマホと共に育った、いわゆる「デジタルネイティブ」なんです。ところが、令和の小学生である子どもたちは、生まれた時からSNSで育っている「ソーシャルネイティブ」。デジタルとソーシャル、ほとんど同じじゃないかと思われるかもしれませんが、実はこれが親子のジェネレーションギャップに繋がっています。「ソーシャルネイティブ」の子どもたちは、ガラガラ(おもちゃ)の代わりにスマホ、紙の絵本よりタブレットやスマホの絵本で育っている事もあって、説明もしていないのに、子どもがその小さな指で巧みにアプリを操作する場面に遭遇する方も多いと思います。海外では「Touch Screen Generation」とも呼ばれています。

――身近な環境や常識が違うと。

駒谷 「ソーシャルネイティブ」の子どもたちは、VR(Virtual Reality仮想現実)、AR(Augmented Reality拡張現実)、MR(Mixed Reality複合現実)が身近にある環境で過ごしています。例えば、『ポケモンGO』は、ARを駆使したゲームです。現実にある公園で、ゲームを立ち上げてスマホをかざせば、アニメで見たポケモンのキャラクターが、リアルの公園を背景にスマホのスクリーンに登場しますよね。“現実世界そのものを舞台としてプレイするゲーム”なんです。

――“リアル”に関する概念が違う面があるということですね。

駒谷 デジタルネイティブの保護者世代にとって、「目に見えて実際に触れるものがリアル」という感覚がまだありますが、ソーシャルネイティブの子ども世代は「スマホやゲームのスクリーンに映っているものがリアル」なんです。これはデジタルネイティブの保護者にはない新世代の感覚です。デジタルとソーシャルの世代間で違いがあるので、親子間でも「何か違うな」と思われるのは当然の事です。

子どもがよその家の約束と比べて不満を言ってきた

ゲームからyoutubeへ、メディアの垣根を超えて楽しむ

駒谷 「ソーシャルネイティブ」の子どもたちの特徴として、一つのメディアに囚われず、複数のメディアを同時に使いこなすという点があります。ゲーム単体として遊ぶだけはなく、プレイしているゲーム実況動画をYouTubeでも見ています。そこで得た攻略情報を友だちと共有したり、放課後一緒に遊んだりと、ゲームを起点に展開し、子どもたちは遊びに没入していきます。

――ゲームに関わるメディア環境も全く違うといえますね。

駒谷 よく幼児期の子どもたちは「人生に大事なことは砂場で学ぶ」と言いますよね。それに加えて、現実と仮想空間の両立とされるSoceity5.0と呼ばれる現代社会では、児童期の子どもたちは「人生に大事なことはゲームからも学ぶ」と言えますね。それゆえに、夢中でゲームで遊ぶ体験は、成長にも活かされると思います。

子どもの現状を踏まえ、親はどういった態度でいればいい?

ソーシャルネイティブの子どもたちが、ゲームやネットと切っても切り離せない生活をしていること、ゲームは学校の友だち関係においても重要な役割を占めている事についてお話を伺いました。引き続き、保護者が具体的にどのように対応すればよいかについて伺います。

ペアレンタルコントロールって?

――保護者世代には、あまりよく思わない意見もありますね。

駒谷 「必要悪」といわれる意見もありますし、実際WHOが「ゲーム依存」を疾病認定した事もありました。ですが、「ゲーム依存」を回避する方法はあります。それがペアレンタルコントロール、スマホやゲームと楽しく上手につきあう方法です。適切なペアレンタルコントロールができるか否かは、保護者のペアレンティング(しつけ)のスタイルと深く関係しています。

――ペアレンティング(躾)はどんなスタイルが?

駒谷 心理学者ダイアナ・バウムリンド博士が1960年代に提唱した4つのペアレンティング(子育てタイプ)を参照しながら、どのペアレンタルコントロールを良いかを説明します。

【タイプ1】独裁・権威主義タイプ(Authoritarian)

子どもに有無を言わせず従わせ、従わない場合は罰を与えるタイプ。子どもの「ゲームで遊びたい」という気持ちを受け入れずに、「とにかくスマホやゲームは全て禁止!」。

▶子どもの状況がアンダーグラウンド化してしまう危険性がある。

【タイプ2】受け身・消極タイプ(Permissive)

子どもの気持ちを大切に思いすぎて、間違っても強く言えず、わがままを受け入れがち。この状況では、親子で話し合い、ルールを一緒に作り上げる事が難しくなる。

▶子どもが誘惑に負けやすく、ルールを破っても、保護者は諭すことが苦手。結果、子どもがルールを守り通す事が出来ず、レジリエンス(困難に直面しても立ち直る力)が中々身につかない。

【タイプ3】無関心タイプ(Uninvolved)

衣食住の必要最低限の提供はするが、子育て自体に興味がないタイプ。

▶精神的に不安定になってしまう場合が多く、その穴埋めにゲームやスマホに依存するケースがある。親子関係自体に支障があるため、「ゲーム依存」に気づくのが遅れる、援助を放棄など、事態が深刻化する懸念もある。

【タイプ4】権威がありつつ信頼できるタイプ(Authoritative)

子どもの気持ちを尊重、一方でしっかりルールを設定、その理由を示し、責任を持って対応する。独裁・権威主義タイプと消極・受身タイプの中間的な位置づけ、どちらにも偏ることなく絶妙なバランスを取る事が鍵。

▶ルールを作る過程で、気持ちや望みを互いに話すため、結果的にルールを守って子どもが達成感を得やすい。他の話題と同じように、スマホやゲームについて気軽に話せる雰囲気になっているため、トラブルを早期解決しやすい条件が整っている。

子どもはペアレンタルコントールで守られながら、「失敗」しても安心して学びを続けられる

――様々なタイプがありますが、どの辺りがベストでしょうか。

駒谷 「親としての権威がありつつ信頼できる」が、ベストでしょう。ただ「言うは易く行うは難し」です。完璧を目指す必要は全くありません。ポイントはセーフティネットであることを意識して、子どもたちを見守る事。スマホやゲームは危なくて怖いからと、「持たせない・触らせない」は、現代ではナンセンスです。

――失敗やトラブルもある程度は許容することも必要なんですね。

駒谷 「子どもが落とし穴に落ちるのは絶対避ける!」ではなく、「穴を浅くしておいて、落ちてもすぐに抜けられるようにする」サポートが大切。つまり、数十万円の高額課金やスマホいじめによる登校拒否など、「沼に深く沈む」状況を避ける、そのためにスマホやゲームの「落とし穴」についても話しておく事で、「早期発見・早期治療」ができるようになるんです。

――絶対失敗しないようコントロールするではなく、軽い失敗で済ませる配慮が大事と。

駒谷 そうです。元々子どもたちは、遊びを通じて「加減」を学びます。かけっこだと、転んで擦りむいて初めて、「曲がる時は速度を落とす」などけがをしないコツを知っていきますよね。スマホやゲームも同じ。保護者が「危ない目にあったら心配」と一律禁止にしてしまうのは、子どもたちから「大けがをしない加減を学ぶ大切な経験」を奪っているとも言えますね。

ゲームを親子のコミュニケーションツールに!親が関心を持ってくれると、子どもは嬉しい!

――子どもを尊重しつつ、ペアレンタルコントロールする、中々難しいですね。

駒谷 最初の一歩としては、子どもたちが夢中のゲームについて、色々訊いてみる事です。「ゲームばっかり」と小言を言われるより、「どんなゲームなの?」「難しそう。やり方を教えて」「面白いところはどこ?」と好意的に訊かれると嬉しいんです。思春期に会話が減ってくる中学生になっても、ゲームについて訊かれると「ウザイ」と思いつつ、関心を持ってくれている実感が伝わります。人気のお笑い芸人さんを見て、「面白いね」と家族笑い合える、あの感覚をゲームでも持てると良いですよね。今の子どもたちにとってゲームは生活の一部ですから。

親だからといって何でも知っている必要はない!「Think together」

――現代は新しい情報がとにかく多くて、親世代も知ろうとするだけでも中々大変ではありますね(笑)。

駒谷 スマホやゲームについて「何でも知っていて、子どもに教えないといけない」と身構えなくていいんですよ。私自身、日本で教育実習に参加した時、指導いただいた先生から「生徒に知らない・分からないと言ってはいけない」と教わり、その考え方には違和感を覚えたりしました。その後、アメリカの大学院で勉強しながら付属幼稚園でアシスタントティーチャーしていた時に、ヘッドティーチャーから、「Let’s think together!(一緒に考えよう!)でいいのよ」と言ってもらえて、ストンと腑に落ちました。バカボンのパパではないですが、「これでいいのだ!」と思ったわけです。

――子どもより知ってなきゃいけない、では気持ちが張り詰めてしまいますね。

駒谷 そうですよ。保護者はデジタルネイティブ、子どもたちはソーシャルネイティブ、育ったメディア環境が違う。だから、戸惑うのは当然。だからこそ、ゲームに限らず「知らない事=恥ずかしい事じゃない。一緒に考えよう」の気持ちが大切ですね。そうすれば、子どもは失敗しても隠さず、保護者に素直に言えるようになります。

――ありがとうございました。では最後に、ガンホーで提供している「お約束メイカー」についての感想をお伺いできますか。

駒谷 ゲーム開発・運営のリーディング・カンパニーが、ペアレンタルコントロールのサポートツールを提供したことには大きな意義があると思います。「お約束メイカー」では、自分の写真を「顔ハメ」が出来たりするので、ルールを作っていく世界観に入りやすいですね。ドンドン普及してほしいです。

POINTまとめ
  • ちょっと待って!禁止のデメリットも知ろう!
  • ペアレンタルコントロールを使って、親子で上手に付き合おう!
  • 親子で考えていけば、失敗なんて怖くない!

POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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