親子でスマホ・ゲームお約束メーカー
インタビュー
2022年7月6日

子どもにスマホを持たせるのにおすすめの時期は?何歳から、何月から?保育学の視線で解説!

親子でゲームやスマホの約束作りは大切だけど、子どもが小さかったら、約束作りなんてまあ、難しいよね……。

子どもの力を侮るなかれ!幼稚園児、保育園児だけでも、大人顔負けの「話し合い」だってできるんじゃ!

最近は、小学生が子ども用の携帯電話でなくスマホを使っている姿もよく見かけるようになりました。子どもは今、何歳からスマホをもち始めているのでしょうか。また、いつ子どもにスマホを持たせるのが適切なのでしょうか。保育学を専門とされている実践女子大学 生活科学部 生活文化学科教授、松田純子さんに伺います。

もくじ
松田 純子さんプロフィール松田 純子さんプロフィール
現職:実践女子大学 生活科学部 生活文化学科 教授
専門:保育学、幼児教育学

お茶の水女子大学家政学部児童学科卒業後、幼稚園教諭として勤務。その後アメリカに留学し、子どもの発達や幼児教育について学ぶ。ミルズ大学大学院修士課程修了。帰国後、幼稚園教諭等を経て、保育者養成に携わる。現在は、幼稚園や保育所などの集団保育に限らず、子育てや家庭教育を含めて広く保育という営みを捉え、子どもにとっての様々な保育体験の意味について研究を行っている。

最近は小学生でもスマホデビュー?

東京都が令和4年に発表した「家庭における青少年のスマホ等の利用等に関する調査報告書」によると、小学校低学年のうち17.6%は携帯ゲーム機を、28%がスマホを所有しているのだそう。また、国の調査である「令和2年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」でも小学生の40.2%がスマホを利用しているとのこと。
スマホを早くから持たせることのメリットとして、子どもと連絡が取れたり、子どもの位置が分かったりなど防犯上の安心につながるというのは大きいですが、一方で子どもにスマホを早く持たせることで「使い過ぎ」「友達とのトラブル」などの問題も懸念され、頭が痛いところです。松田さんに伺うと、「何歳から」とは違った「いつ」の問題があるようで……。

スマホ、ゲーム機は、4月に持たせない方がいい?

子どもにいつスマホやゲーム機を持たせるかとなると、つい「何歳で」持たせるかに目が行きがちですが、それ以外にも時期の意外なポイントがあるんです。ある親子のトラブル事例から見ていきます。

新入学とゲーム機購入が重なり、ゲームにはまってしまったケース

――ある親子のケースで、小学校に入った息子さんにゲーム機をプレゼントしたところ、ゲームに夢中になってしまい、学校でも新しい事 を覚えなくてはいけない時期なのにおろそかになってしまい、ゲーム機を取り上げたそうです。その子の小学三年生のお兄さんはゲームができているのに、と弟さんには不満もあるようです。

松田 新しい環境に適応していくときは、疲れるしエネルギーも使うものですよね。教えている大学生たちも、4月は友達ができるだろうかと不安そうですよ。入学という生活が一新する時期にゲーム機も、となると、ちょっとオーバーフローだったかもしれませんね。
特にスマホは、入学祝いとしてお子さんに4月にプレゼントするケースも多いかと思いますが、新入学など環境が大きく変わる時期は、まずそちらに集中したいですね。スマホやゲーム機は、新しい生活に慣れたあとの「5月」くらいに持たせた方が、もしくは、クリスマスプレゼントにした方がいいかもしれません。

――スマホやゲーム機を「何月に持たせるか」は盲点ですね。

兄弟間で、年長の子と年少の子の「条件の違い」をどうする?

松田 あと、ご相談いただいたケースですと、お兄さんがゲームを使えている状況が、禁止されている弟さんは不満なようですね。ですが「兄弟の年齢差」はありますし、弟さん自身が大きくなるまで待って欲しいと、大人側が「そこは譲れないんだよ」というのは伝えていいと思います。
ただ、お兄さん側も、弟さんへの配慮をお願いしていい年齢だと思いますね。お兄さんが横で楽しそうにゲームをしていたら、禁止されている弟さんにしてみたら辛いですから。

未就学児が早期教育よりも身に着けた方がいい3つのこと

松田さんのご専門は保育学です。ここからは幼児期のお子さんが身に着けておいた方がいい事についてお話を伺ったのですが、幼児期に限らず、お子さんがいくつになっても大切なことが満載でした。

幼児期に身に着けたい3つのこと その①基本的な生活習慣

松田 幼児期、3~4歳ころから就学前にかけて身に着けたいことは3つあります。まずは「基本的な生活習慣」ですね。食事、排泄、睡眠、着脱衣、清潔といった、人が生活していく上で必要となる基本的な習慣です。たとえば食べ物をこぼさない、トイレの始末ができる、脱いだものをきちんと洗濯かごに入れるなどです。
これは、大人なら当たり前にできることですし、それよりも早期教育に目がいきがちな親御さんもいるかもしれませんが、とても大切なことです。基本的な生活習慣をぶれずに行い、「やっていく大事さ」「きちんとすることの気持ちよさ」を体にきざんでおくと、それからスマホやゲームのような新しい機器とか魅力的なものが出てきたとしても、一日の限られた時間の中で、他にもやらなければいけないことがあると抑制、我慢、切り替えられる力の基盤が作られていきます。

――「基本的な生活習慣」が、ぱっと見つながっていないように見える「スマホ、ゲームと適度につきあっていく力」につながっているのですね。

松田 はい。生活習慣を身に着けるにあたっては、お子さんは我慢すべきところも出てきますので、我慢できたら「よく頑張れたね」と、親御さんはほめてあげて欲しいですね。それがお子さんの自尊心にもつながっていきます。
逆に、幼児は大人からするといたずらに見えるようなことをすることもあり、それに対して修正は必要ですが、意欲までぺしゃんこにしないようには気を付けていただければと思います。

松田 純子さんインタビュー風景

幼児期に身に着けたい3つのこと その②親子の信頼関係

松田 幼児期に身に着けたい2つめは、親子の信頼関係を築くことですね。
未就学児の親御さんは働き盛りの世代の方も多く、とてもお忙しいと思います。ですので、親御さんだけでなんとかしようと思わず、保育園や幼稚園などの先生(保育の専門家)と情報共有しあい、お子さんのことを受け止めているよ、見ているよ、とお子さんに伝えて欲しいですね。
親子で結ばれた信頼関係は、他の人たちの信頼関係にもつながっていき、さらには社会、世間に対する信頼につながっていきます。「世の中捨てたもんじゃない」と思える気持ちですね。

――以前中学生にして白けてしまっている生徒さんのケースがありましたが、白けて生きるのはつらいですよね。やはり「世の中捨てたもんじゃない」でありたいものです。

幼児期に身に着けたい3つのこと その③遊び

松田 幼児期に身に着けたいことの3点目は遊びですね。スマホ、テレビなどの映像のメディアは視聴覚が中心になりがちですので、自然の中で、匂い、味、触れた感覚など、他の五感も刺激されるような遊びも取り入れて欲しいですね。

未就学の幼児は、今までお話してきた①基本的な生活習慣②親子の信頼関係③遊びの三つを培う時期です。なので、この時期に勉強をしないと……、としてしまうと、この重要な三点が脇の方に行ってしまわないかは心配ですね。
「遊び」は親から見たら何もしていないようにも見えますが、何気ない子どもたちの時間の中に大事なものがあります。じっくり考えて、その世界に浸っているんですね。

――子どもが地面にうずくまりじっと何かを見ていて、買い物袋をさげたお母さんが行くよ、と声をかけている姿はよく見かけますね。帰りたいお母さんの気持ちも分かるのですが。

松田 そうですね。それがお子さんにとって「浸っている」「じっくり考えている」時間でもあるんですよね。最近は防犯上の観点もあり、お子さんがふらっと一人遊びに行くことがどんどん難しくなっていますし、親御さん側もお子さんを管理しなくては、と負担も増しています。お子さんも親御さんも、それぞれ安心してぼーっとできる時間があるといいのですが……。

幼児でも親子の約束を作れる~5歳児をなめてはいけない~

幼児期に身に着けたい3つのうち「生活習慣」においては、「脱いだものは洗濯かごに入れよう」など、さまざまな親子の決まり、約束も欠かせなくなってきます。幼児である子どもと、どう約束を作っていけばいいのでしょうか?ポイントを伺います。

5歳児はただ褒めるだけでは動かない

松田 まず一言で幼児といっても、年齢に応じた対応は必要になってきますね。誉め言葉も年齢に応じて変わってくるんです。3歳くらいなら「すごいね」だけで喜んでくれますが、4~5歳になると、「こういうところがいいね、よくできたね」とまで言わないと、子どもは「ただ褒めてるだけじゃないかな」と察しますよ。

――相手を幼児だと思って甘く見てはいけないですね。

松田 はい。お子さんにしっかり届く言葉で褒めたいところです。しっかり親に認めてもらっている、とお子さんに伝わると「ここはがんばろう、我慢しよう」という気持ちへとつながっていきますから。いつかは保護者がいないところでも、そして誰も見ていないところでも、お子さん自身で正しい判断、行動をしていかないといけないですからね。

松田 純子さんインタビュー風景

「完全無欠な親」でなくてよく、「親子でいっしょにがんばろう」のスタンスでいい

松田 また、子どもも5~6歳になれば親の本音と建前を見抜きます。ですので、親御さん自身も今日は疲れてしまって、決めていた約束が守れない、というときは、正直にお子さんに今日は疲れちゃって約束が守れない、でも次は頑張るね、と言った方がいいと思います。むしろその方がお子さんも「大人だってできない時があるんだ」とホッとしますよ。
親御さんも完璧な親であろうとするより、お子さんと「一緒にがんばろう」というスタンスでいる方が、しんどくないのではないかと思います。
そして親御さん側が間違った発言、行動をしてしまったときは、お子さんに「ごめんね」と言えることも大切にしたいですね。「一緒に生活していく中で、良い方向に進んでいきましょう」という気持ちを親側の姿勢で示し、親子で分かち合っていくことが大切ですね。

――完全無欠な親であろうとすると、親御さん自身も疲れてしまいますもんね。

約束は縛りではなく、心地よく皆が過ごすためにあるもの

松田 そして約束、決まり、ルールがあるのは、縛りではなく、心地よく皆が幸せに過ごすためですよね。海外では日本と異なる約束があるなど、場所や文化によって変わる点はありますが、「その場の皆が幸せに過ごすために約束はある」という原則論はどこでも共通しています。

――約束を「縛るもの」と思うか、「皆が幸せに過ごすためのもの」と思うかは大きな違いですよね。

松田 はい。「皆が幸せに過ごすためのもの」というモットーに基づいて、これなら妥当だな、と言う約束を保護者と相談しながら作っていくのは、お子さんにとって、とても民主的な経験になっていきますよ。当然親御さんも譲れるところ、譲れないところはありますから、それを伝え、交渉ですね。

約束は縛りではなく、心地よく皆が過ごすためにあるもの

「子どもだから話し合いなんて無理」は大人の思い込み?

――親子の約束というのは、子どもが何歳くらいのころから作れるものなのでしょうか?

松田 3歳の子どもでも、親側でそれを受け止めて、代弁していけば作れると思いますよ。「子どもだから話にならない、話し合いができない」というのは大人の思い込みで、大人がそういう態度でいれば、お子さん側も見抜いて「駄々をこねて通せばいい」と子どもの対応を取ってしまいます。意見を尊重して聞き、大人の方の事情もこうなんだ、ときちんと話しましょう。

――子どもが幼い対応を取るのは、親側が子どもを子ども扱いしているから……、というのはドキッとしますね。

松田 ですので、親子できちんと話し、子ども側が「自分の話を親が聞いてくれる、受け入れてもらえる」と思えるような話し合いの経験を積み重ねられれば、お子さんは自分の意見を認められ、自分は価値のある存在なのだと思えます。それは自尊心へとつながっていきます。

――お約束メイカーは親子の話し合いを前提としているので、スマホ、ゲームの約束作りの際はこちらを活用してほしいですね。

松田 親子で確認しながら、一方向ではなく、両者の合意のもと進められるのもいいと思います。年齢に応じてカスタマイズできるのもいいですね。
親が自分の言葉を受け止めてくれることをお子さんが実感できれば、自分の気持ちを躊躇せず話せるようになります。一方で、自分の主張ばかりすると、お友達や 親、先生などの大人との間に葛藤も生まれることになるでしょう。
「お互いの気持ちを大事にしながら、どういう風に解決したらいいだろう?」という経験を小さいころから積み上げていくと、相手の気持ちもわかるようになりますし、誇りをもって相手に譲ることもできるようになりますし、葛藤も解決できるようになっていきます。
保育園などで見ていても、自分がトラブルの当事者になったり、他の子たちのトラブルを第三者として接したりすることを通じ、子どもは自分でどんどん学習していきます。こういったいい経験を積むと、5歳くらいの子どもたちだけでも驚くほど民主的な話し合いができるようになるんですよ。

POINTまとめ
  • 4月にスマホ、ゲーム機のプレゼントは避けた方がいい
  • 幼児期は早期教育より優先したい事柄が3つある
  • 完全無欠な親よりも、「親子で一緒にがんばろう」のスタンスで

POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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