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インタビュー
2026年03月13日

「ネットの友達」が「犯罪の入り口」に?闇バイトから子どもを守るデジタル護身術

猫を夜中に探すアルバイトが募集されていたの!時給も高いし、面白そうじゃない?

本当に猫探しなのかノゥ? 闇バイトの可能性もあるゾィ!

もくじ
佐々木 雄希さん佐々木 雄希さん

2013年 慶応義塾大学理工学研究科 博士課程修了。 警察官であった父親が設立した危機管理コンサルティング会社、株式会社セーフティ・プロの取締役副社長として学校の危機管理や警備業務に従事した後、学校で犯罪が起きない環境づくりを支援するため、2017年に一般社団法人スクールポリスを設立。 スクールポリス設立以降、情報化や多様化が進む学校において、SNSやネットの利用によるトラブル事例やその対策についての講演を行っております。

近年、未成年が「闇バイト」に巻き込まれるニュースが多く報じられています。闇バイトの入り口はSNSなどスマホがあればすぐアクセスできるところにあり、一見犯罪に見えないような募集が出されているため、お小遣い欲しさに子どもが知らずに応募してしまうことも考えられます。今回は、教育機関への指導やパトロール活動を行っている一般社団法人スクールポリスの佐々木雄希さんに、闇バイトの特徴、見抜き方、そして万が一の時にどうしたらいいかについてお話を伺いました。

社会を震撼させた、未成年が関与した「闇バイト」二つの事件

未成年が関与した、近年の闇バイトに関する事件を二つ振り返ります。

事件① 日本の高校生がミャンマーで特殊詐欺。オンラインゲームから海外の詐欺拠点へ

<ミャンマー高校生特殊詐欺かけ子事件>

2024年に発生した衝撃的な事件。高校生がオンラインゲームで知り合った相手に家庭の悩みを相談したところ、言葉巧みに家出を促された。その後、ミャンマーへ連れて行かれ、特殊詐欺の「かけ子」として、金銭をだまし取る詐欺電話をかける仕事をさせられていた。

——この事件のように、闇バイトの入口としてオンラインゲームが利用されることは多いのでしょうか?

佐々木:事件の内容がセンセーショナルだったため、ご不安になった方も多いかもしれませんが、実際はゲームが闇バイトの入り口になるケースは、そう多くないのではないかと思われます。
警察庁が発表している統計で、検挙した闇バイトの「実行役」(指示に従い実際に犯行に及んだ、かけ子、出し子など)に、「どのような方法で闇バイトに応募したのか」を聞いているデータがあります。この統計によると、応募方法として「SNS」が一番多くて約半数を占めており、次が「知人からの紹介」、一部「求人サイト」という結果でした。

——オンラインゲームは、きっかけの上位では無いのですね。

佐々木:はい。考えられる理由として、オンラインゲームで信頼関係を構築していくというのは、犯罪者側の立場で考えると、あまりにも時間がかかり非効率的なんです。
言葉は悪いのですが、「指示役」(実行役に犯罪を指示する役)は、犯罪を行うために「大量の駒(実行役)」を必要としています。そのため、できるだけ短時間で効率良く、大量の駒を手に入れたいと考えています。
しかし、オンラインゲームでは、まず駒を集めるために、ゲームをするというところから始めなければいけません。これですと、駒のスカウトまでに手間がかかりすぎてしまい、犯罪者側にあまりメリットはありません。ですから、「オンラインゲームが危ない」と過剰に心配する必要はないでしょう。

事件② フィリピンから指示役が末端の実行役を動かしていた「ルフィ事件」

<ルフィ事件>

2022年~23年に日本各地で発生した連続強盗事件。指示役の一人は「ルフィ」を名乗り、フィリピンの収容所から日本国内の実行役に特殊詐欺、窃盗、強盗の指示を出していた。連続強盗の被害者が暴行を受け亡くなった事件もある。


——このルフィ事件から、「闇バイト」という言葉が一気に注目されるようになりましたよね。

佐々木:そうですね。ただ、ルフィ事件で行われていた「特殊詐欺」自体は昔からある犯罪で、かつては「オレオレ詐欺」などともいわれていました。「受け子」「出し子」「運び屋」「かけ子」という言葉も、ルフィ事件以前から元々あったものです。

受け子…詐欺の被害者から現金やキャッシュカードを実際に受け取る役割

出し子…受け子がだまし取ったキャッシュカードで現金を引き出す役割

運び屋…受け子、出し子が入手した現金等を運ぶ役割

トクリュウにより、素人が犯罪に手を染めるようになった

昔からあった特殊詐欺は、反社などの「犯罪のプロ」が行っていましたが、ルフィ事件では、SNSなどで集められた「素人の実行役」がやるようになったことが、特色だったと思います。
指示役がテレグラム、シグナルなどの匿名性の高いSNSを使い、実行役に指示をするという犯罪グループを作り、犯行に及んでいたんです。この犯罪グループは、中核的人物の「匿名化」と実行者の「流動化」が特徴で、警視庁では「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」と名付けて捜査を行っています。

——指示役のもとで犯罪の素人が、闇バイトとして実際の犯行に加担していたんですね。

佐々木:はい。そもそも、行っていることは犯罪ですから「バイト」という言葉を使うべきではないという批判もありますが、アルバイトのように「軽い気持ちで応募できてしまう」点から、そのニュアンスに近いものもあると思います。

——闇バイトは多く存在していると思いますが、なぜこの「ルフィ事件」が大きく取り上げられたのでしょうか?

佐々木:ルフィをはじめとした「指示役が捕まったこと」です。指示役は、捜査の手が自分に及ばないようにあらゆる手段で匿名化を徹底しているので、ルフィ事件のように中核人物が捕まったということが非常にまれなケースなのです。これまで多くのトクリュウに関わった人物が捕まっていますが、そのうち指示役などの逮捕は約1割と言われています。

——捕まるのは指示役ではなく、末端の実行役という「駒」なのですね。


■トクリュウについて、詳しくは以下をご覧ください。
政府広報オンライン:匿名・流動型犯罪グループ対策
https://www.gov-online.go.jp/article/202510/tv-6178.html

どのように闇バイトは「募集」されている?

SNSで募集されることが多い、闇バイトの実行犯。どのように募集されているのでしょうか?

闇バイトの入り口① 明らかに怪しい求人

佐々木:SNSでの闇バイトの募集形態は大きく分けて三つあります。まず一つ目が「明らかに特殊詐欺など、犯罪に関わるものだと応募者も分かるような形で募集されているケース」です。SNS上で闇バイトの隠語などが使われていますので、それを検索して応募する形です。

闇バイトの入り口② 仕事内容がよくわからない求人

佐々木:二つ目は、特に判断能力が十分でない未成年も巻き込まれかねないのですが、「犯罪に関わっている募集だと一見わかりにくいケース」ですね。
「物を運ぶだけ」「簡単」「誰でもできる」「安心・安全」などと書かれていて、実際の仕事の具体的なイメージがよく分からないのが特徴です。犯罪である、ということはもちろん書かれていません。

——何をするのかイメージできない仕事には、手を出さないことが大事ですね。

闇バイトの入り口③ 具体的&簡単なことで、ちょっとしたお小遣いがもらえる求人

佐々木:ただ、三つ目として、「具体的で、非常に簡単なことで、ちょっとしたお小遣いがもらえる募集というケース」もあるんです。これも未成年が巻き込まれかねません。
例えば、「あなたの電話番号を教えてください。その後あなたの携帯にSMS(ショートメッセージ)で認証コードが届くので、それをスクショ(画面スクリーンショット)して、送ってくれるだけで3000円の電子マネーをプレゼントします」といったものですね。
これは、バイトをする側にすれば「電話番号を教える」「認証コードのスクショを送る」だけなので、とても手軽です。

——②の「仕事内容がよくわからない求人」に比べ、「何をしなくてはいけないか」は明確ですね。金額も手ごろで、お小遣い欲しさでつられてしまうかもしれません。

佐々木:そうですね。例えば「この小包を、〇〇駅で帽子をかぶってサングラスをしている男性に渡して」という仕事内容でしたら、さすがに警戒すると思います。これは、実際に「運び屋」と呼ばれる仕事で、なんとなくイメージがつきやすいと思います。ですが、「スクショを送って」は自分のスマホだけで出来て手軽ですからね。

電話番号とスクショを送るだけ。簡単そうに見える求人に隠された「真の悪い目的」とは

佐々木:ただ、今お話しした「電話番号を教える」「認証コードのスクショを送る」という行為は、犯罪者に手を貸している可能性もあるんです。
SNSのアカウントは、「メールアドレスとパスワード」以外に「電話番号とパスワード」で作れるケースもありますよね。電話番号でアカウントを作る際には、SNSの運営会社から本当に番号保有者なのか、SMSに認証コードを送って認証を行う、という手順を踏んでいるものが多いです。
このしくみを利用して、犯罪者たちの立場に立つと、以下のような「悪用」ができるのです。

① バイトBが、犯罪者Aに電話番号を教える
② 犯罪者AがSNSを登録し、バイトBのSMSに認証コードが届く
③ バイトBが認証コードのスクショを、犯罪者Aに送る
④ 犯罪者Aが認証を行い、SNSアカウントを手に入れる

これは、簡単そうに見える求人に応募する側から見れば、「知らない間に、自分の電話番号でSNSアカウントが作られている状況」です。こうして犯罪者は、自らの個人情報を使わずSNSアカウントを入手しているのです。

——もし、こうして作られたSNSアカウントが犯罪に使われたら、警察に真っ先に疑われるのは、電話番号の持ち主であるバイトの応募者になってしまいますね!

佐々木:そうなりますよね。とにかく犯罪者は「足がつかないようにしたい」「捕まりたくない」のです。捕まるための要素を少しでも残したくないので、闇バイトの指示役は「実行役」の電話番号や、それを使って登録したSNSアカウントを使うんです。
ほかにも、準備段階の情報収集であるとか、詐欺に使うスマホ、銀行口座などがきちんと使えるか、などの下準備に闇バイトが使われるケースも考えられます。犯罪者は非常に慎重です。自ら試すことはしないで、全て実行役のものを利用しています。

——気軽なお小遣い稼ぎのバイトはずが、知らないうちに犯罪に加担している可能性があるのですね。

夜中に「猫」を探すアルバイト

夜中に「猫」を探すアルバイト

佐々木:あと、こちらはルフィ事件のときに関連して報道され、ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、「夜中に猫を探す」という求人が、闇バイトではないかと話題になりました。
「猫」とは、犯罪者たちの間では「高級車」の隠語なんです。つまり、「猫を探す」=「住宅街で高級車が車庫にある家をピックアップする」という意味です。高級車を所有している家は裕福である可能性が高いため、「窃盗、強盗のターゲットの選定」に関わるアルバイトである可能性も示唆されていました。

——ユニークなアルバイトだと思って応募したら、とんでもないことになりかねませんね。「イメージがしづらい仕事」だけでなく、「ほかで聞いたことがない仕事」も警戒したいですね。

小さい案件を積み重ね、生まれてしまう信頼関係

佐々木:「スクショするだけ」のような、知らない間に闇バイトに加担させられたケースでも、一つの「案件」が終わり、お金がもらえることで、変な言い方ではあるのですが、雇った犯罪者と雇われた応募者の間に「信頼関係」のようなものができていってしまうんです。
そして、何回かこういう案件を積み重ねていくうちに、要求がエスカレートしていき、犯罪に加担されられていると気づいた時には引き返せなくなっているのが闇バイトです。

闇バイト=脅すための個人情報取得がセット

佐々木:また、闇バイトは、必ず応募者の個人情報を入手しようとします。これは、応募者を脅すためです。住所、氏名、電話番号だけでなく「保護者の個人情報や勤務先」など、通常のアルバイトでは聞かないようなことまで要求してきます。
よくあるのは、自撮り写真で個人情報を入手する方法です。例えば、「学生証を持った自撮り写真を送って」「家の標札前での自撮り写真を送って」といった形ですね。このような指示があれば、もうそれは普通のアルバイトではありません。
個人情報を相手に渡してしまえば、もうどこかのフェーズで必ず「脅し」はセットです。「学校に言う」「親の会社に言う」「親に言う」「お前の家はわかってる」などと脅してくるのです。

——働いた経験がある人から見れば「家の標札前での自撮りを送れ」は明らかに変ですが、社会経験が乏しい未成年だと「こういうものなのかな?」と思いかねませんね。

闇バイトに巻き込まれたら、どうする?

「やばい!」と気がついたときには、提供した個人情報をもとに脅されてしまう闇バイト。もしそうなったときは、どうすればいいのでしょうか?

脅されているときに、立ち止まって考えてほしいこと

脅されているときに、立ち止まって考えてほしいこと

佐々木:当たり前ですが、闇バイトだと気づき、「辞めたいです」と言ったところで、犯罪者側は「了解しました」とは言ってくれません。
犯罪を行っていた事をばらすぞと脅され、辞めることは許されず、要求される犯罪のレベルはどんどんエスカレートしていきます。特に未成年だと、その恐怖はとても強いでしょう。
ただ、私も学校などで闇バイトについての講演するときにお伝えしているのですが、脅されているときほど冷静になって「主犯格の目的」、つまり「主犯格がしたいこと、避けたいこと」をよく考えてほしいんです。

主犯格がしたいこと  …犯罪で違法に得た、騙し取ったお金を回収すること

主犯格が避けたいこと…自分自身が捕まること

実行役は駒であり、あなた以外にも大勢います。その中の一人の実行役が辞めたいと言ったときに、その人の家や学校に行って脅す、というのは主犯格にとって何のメリットもないんです。自分が捕まるリスクが上がるだけですから。

——確かに、「辞めたら許さないぞ!」と脅した相手が警察に相談していて、いざ家に押しかけた時に警察が待ち構えている可能性もありますよね。

佐々木:はい。もちろん威圧行為の可能性がゼロとは言えませんが、とにかく犯罪者は「自分自身が捕まること」を恐れて警戒していますので、「闇バイトを辞めたら家に行くぞ!」という脅しが実行されるというのは考えにくいと思います。「辞めたい」という駒は深追いしないで、別の駒を利用した方が効率的ですしね。
よって、実行されない単なる脅しの可能性が高いですので、脅されたら速やかに保護者、警察へ相談してください。

相手とのやりとりはどうすればいい?

——保護者や警察に相談する際、犯罪者とオンライン上でしていたやりとりはどうすればいいのでしょうか?「ブロック」「無視」などの選択肢もあると思いますが…。

佐々木:ブロックや無視をする前に、スクリーンショットなどで、記録は残しておきたいですね。ですが、闇バイトの情報伝達手段はテレグラムやシグナルといった履歴が残らないSNSを主に利用して行われるので、過去のやりとりは取得できない可能性も高いです。それでも、確認できるところは証拠を取得しておきましょう。

——当事者の未成年にしてみれば、こんなやりとりがあったら警察や親に怒られるのではと消したくなってしまいそうですが……。

佐々木:佐々木 絶対に残しておくべきですね。
というのも、「闇バイトだと薄々知りながら加担した」のではなく、「闇バイトと知らずに加担させられていた」という場合は、騙されたプロセスなどが分かれば、警察もそこはしっかりと汲み取ってくれますから。
警察も、たとえ闇バイトに関わった人であっても、「警察に相談すれば、その個人や家庭を保護する」と発信しています。「渡した個人情報で脅されている」ことも警察は当然知っていますので、警察は守ってくれる存在だよ、ということは覚えておいてほしいですね。


■#BAN 闇バイト(警視庁)
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/drug/yami_arbeit/ban_yamiarbeit.html

■特殊詐欺加害防止 特設サイト「その仕事犯罪ではないですか?」(東京都)
https://www.kagaiboushi.metro.tokyo.lg.jp/

闇バイトに巻き込まれないために、一番気を付けないといけないこと

——闇バイトに関わってしまったかもしれない、というとき、未成年はまずどこに相談すべきでしょうか?

佐々木:順番としては保護者、そして警察ですね。逆に言えば、警察でないと解決できません。学校も支援してくれますが、犯罪対応は警察と連携して進めることになります。
保護者の方もお子さんが勇気を出して相談してくれた時には、「怖くないよ」「警察が守ってくれるからね」と声をかけてください。

——最後に、闇バイトに巻き込まれないために、何に気を付ければいいのでしょうか。

佐々木:シンプルに「個人情報は渡さない」ですね。「家の表札前での自撮り写真を送って」などと言われたら、絶対に応じてはいけません。無視してやりとりの記録をスクショ。そして、すぐに警察に相談する、です。

POINTまとめ
  • 手軽なお小遣い稼ぎが闇バイトの一端を担う可能性も
  • とにもかくにも「個人情報を渡さない」
  • 個人情報で脅されても、屈せずに警察に相談を

POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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