親子でスマホ・ゲームお約束メーカー
インタビュー
2023年10月26日

どう防ぐ?ゲーム・スマホのトラブルや犯罪!わが子が巻き込まれないために保護者ができることは?

ゲームのチャット機能で子どもは悪い大人と会うんだから、チャット機能を使えないようにすればいいんだわ!

別の問題を呼ぶかもしれんゾイ!

もくじ
佐々木 雄希さん佐々木 雄希さんプロフィール
2013年 慶応義塾大学理工学研究科 博士課程修了。 警察官であった父親が設立した危機管理コンサルティング会社、株式会社セーフティ・プロの取締役副社長として学校の危機管理や警備業務に従事した後、学校で犯罪が起きない環境づくりを支援するため、2017年に一般社団法人スクールポリスを設立。 スクールポリス設立以降、情報化や多様化が進む学校において、SNSやネットの利用によるトラブル事例やその対策についての講演を行っております。

ゲーム・スマホを通してトラブルや犯罪が起きているというニュースを目にする親御さんも多いのではないでしょうか?今回は、インターネットのトラブルや犯罪など「見えない脅威」に対し、教育機関への指導やパトロール活動をしている警察OBで組織された一般社団法人スクールポリスの佐々木雄希さんに、実際に子どもたちの間で起きているトラブルや、犯罪の実態などを伺いました。お子さんが楽しく安全にゲームを楽しむためにも、ぜひ参考にしてください。

子ども同士がトラブルになる理由とは?

ゲーム・スマホを通じて子ども同士がトラブルになる理由や、トラブルに親がどこまで介入すればよいか尋ねました。

子ども同士のトラブルのきっかけは「ローカルルールを守らない」

――ゲーム・スマホを通じて子ども同士で起きやすいトラブルにはどのようなものがあるのでしょうか。

佐々木:ゲーム・スマホに限りませんが、子どもたちの間には「ローカルルール」があったりしますよね。それを外れると「あいつは分かってない」となり、言い合いや喧嘩につながるのがよくあるケースです。
小学校中~高学年くらいからこういった傾向が始まり、中学生、高校生になるとルールを破った人をSNS上で晒すケースもあります。

――今にして思えば、子ども時代に些細と思えるようなローカルルールで揉めたりしましたね。

佐々木:こういったトラブルの延長線上に「いじめ」など、深刻な事態になるケースもありますね。

子ども間のトラブル時、親はどう介入する?

――子どもたちの間でのトラブルが発覚した時に、親がどう介入するかも悩ましい問題です。

佐々木:何でもすぐ親が介入していくのはあまり好ましくないかと思います。親はまずは子どもの話を聞いて、助言から入ってみてください。
一方で「子ども間のトラブル」ではないケース、例えば「子どもがオンライン上で知り合った人と、実際に会おうとしている」などは、親がすぐ介入しなければいけません。特にお子さんが小学生、中学生の場合は、すぐ介入しましょう。

子ども間のトラブル時、親はどう介入する?

悪意ある大人は、ネット上で子どもをどう騙す?

ゲーム・スマホを通じて、悪意のある大人が子どもを狙う事件がありますが、そういった大人の「手口」はどのようなものなのか尋ねました。

大人が本気になれば子どもは騙せる

佐々木:悪意ある大人がどのような手口で子どもを騙すかですが、オンラインゲームを例とすると、オンラインゲームはチャット機能があるものが多いですから、悪意ある大人はゲームをしながら、日々子どもたちとゲームをしつつチャットをし、交流していくわけです。
何時間、何十時間とオンライン上でやり取りをしていると、もう信頼関係は形成されてしまいます。信頼関係が築けたところで、悪意ある大人は「あなたの写真を送って」とか「実際に会おう」と持ちかけて来るんですね。
ですので、手口というより、大人が子どもを騙そうとしたら、簡単に騙せてしまうんです。特にゲームの世界でピンチの時に助けてもらったりしていたら、子どもは相手を信頼してしまうでしょう。

――信頼関係がネット上であったとしても、大人はネット上の知り合いとリアルの知り合いの間に線を引けますが、子どもにはそれは難しいのですね。

大人が本気になれば子どもは騙せる

チャット機能をオフにすれば解決!ではない?

――ゲームのチャット機能で悪意ある大人と子どもは知り合うのですから、チャット機能を完全にオフにしたり、チャットは子どものリアルな友達のみに制限したりするのはどうでしょうか。

佐々木:子どもはチャットの制限に不満を持ち、親子関係が悪化する可能性もありますね。
子どものリアルの友達の中には、チャット制限などをされずにゲームをしている子どももいます。今のゲームはチーム戦や対戦形式のものが多いので、チャット機能はとてもよく使われます。そのため、チャット機能を使えなかったり、制限されていたりすると、ゲーム内のチーム戦の進行に影響が出ることも考えられます。

――仲間内で「(チャットが使えない)あいつがいるから勝てない、面白くない」みたいな雰囲気になってくると。

佐々木:はい。冒頭で「子ども内でのローカルルール」からの逸脱が子ども同士のトラブルに繋がりやすいとお話しましたが、「チャットが使えない」は「ローカルルールからの逸脱」になりかねません。ですので「チャットは危ないから、完全に蓋をしましょう」ということでもないのかなと思います。

佐々木さんインタビュー風景

チャット自体は悪いものではない

――悩ましいですね。どうしたらいいのでしょうか。

佐々木:まず「知らない人とのチャット」自体は悪いことではないですし、たいていの人は問題なく、適切にチャットを使っています。
警戒すべきは、チャット上で相手が「会おう」と言ってきたり、「写真を送って」「名前や最寄り駅を教えて」といった、「プライベートな情報」を引き出そうとしてきた時です。その時に「警戒心をマックスにしなさい」と子どもに教えることが大切です。
また、どうしても子どもが「ネット上の友達と会いたい」と言う場合は、「親と一緒に会いに行く」のもいいですね。「会うのは絶対ダメ!」と蓋をすると子どもは反発するので、親子の信頼関係がゆらいでしまいます。
それに「親も一緒に行っていい?」と相手に聞いた時に、相手が拒んだりすれば「この人は悪意を持った大人だったんだ」と、子ども自身も理解できますよね。

「ネット上の人と会ってしまう」以外にどんなトラブルがあるのか

「会ってしまう」系のトラブルを中心に聞いてきましたが、その他にどのようなネットトラブルがあるのか尋ねました。

自分のゲームのIDとパスワードを人に教えるのは規約違反

佐々木:「会う」以外のトラブルとして、子どもがゲームのID、パスワードを悪意ある大人に教えてしまうケースもあります。

これもゲームを通じて信頼関係ができてしまうと、「君が学校に行っている間に、キャラのレベルを上げておいてあげるよ。IDとパスワードを教えて」と言われれば、子どもはあっさり教えてしまうんですね。それでせっかく育ててきたゲームのIDを売られてしまったり、パスワードを変えられてゲームにログインできなくなってしまったりします。さらに「ゲームにログインしたかったら金を払え」と脅されたりもします。

――ID・パスワードは多くのゲームの利用規約で他人に教えることを禁止しているため、教えてしまったことで起きたトラブルは、ゲーム会社による救済がされないケースもありますよね。

ID・パスワードをひとつ知られれば、芋づる式で他のサービスも乗っ取られる

佐々木:なお、これは大人でも思い当たる人が多いと思いますが、パスワードを複数のサービスで使いまわししているケースも多いですよね。ひとつのサービスのパスワードを教えると、芋づる式に他のサービスも乗っ取られる可能性があります。

――怖すぎます!

佐々木:IDとパスワードは実際のモノがないので、こういったトラブルになりがちなんですよね。スクールポリスが学校で講演をする時は、「IDとパスワードは<家の住所と家の鍵>を渡してることと一緒」だと伝えています。一度も会ったことのない人に、自宅の住所を教えて、家の鍵も渡して、「僕/私が学校行ってる間にお家の片付けして」とお願いすることと一緒なんだよ、と。もちろん、パスワードを使いまわさないことも大切です。

ID・パスワードをひとつ知られれば、芋づる式で他のサービスも乗っ取られる

「なんか危ないぞ」の「なんか」が大きなトラブルを防ぐ

――様々なお話を聞かせていただき、トラブルに関する心構えができました。最後にお『お約束メイカー』への感想をお聞かせください。

佐々木:こういった取り組みは大切だと思います。ただ、約束も作って終わりだとだんだん忘れていってしまいますので、日々、作った約束を振り返ることも大切ですね。
繰り返し振り返ることで、子どもの中で「なんかまずいぞ」という「危機意識」が育って行きます。具体的にどうかでなく「なんか危ないとか授業で言ってたよな」という「なんか」でいいのです。そんな「なんか」が、いざという時のブレーキになりますから。

佐々木さんインタビュー風景
POINTまとめ
  • 子ども同士が揉めるのは「ローカルルールからの逸脱」
  • 大人が本気になれば子どもは簡単に騙せる
  • IDとパスワードは「住所と家の鍵」!

POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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