親子でスマホ・ゲームお約束メイカー
インタビュー
2025年01月17日

ゲーム感覚で約束が守れる!親子で楽しみながら約束を習慣化できる仕組みとは?

子どもとゲームの約束を作ったのに全然守らない!キー!

なんで親がイライラするのか、考えてみてほしいゾイ!

もくじ
石田勝紀さん石田勝紀さん

(一社)教育デザインラボ代表理事。都留文科大学国際教育学科元特任教授。20歳で学習塾を創業し、34歳で東京私学の経営者として学校改革を経て、現在は親向けの活動を展開。全国でカフェスタイル勉強会「Mama Café」を年間130回以上主催し、『東洋経済オンライン』連載は累計1.3億PV超。著書は国内30冊、海外13冊出版。

「ゲームやスマホの約束を作ったのに守ってくれない」「同じ約束なのに、うちの子はどうして守れないの?」と、お悩みの保護者は多いのではないでしょうか。ガンホーの「お約束メイカー」などを使ってせっかく作った約束も、実行できなければ意味がありません。今回は、手帳を活用しながら「ゲーム感覚で約束が守れて習慣化できる」方法を教育デザインラボの石田勝紀さんに伺いました。ガンホー社員の子どもにも、成果が出ているおすすめの方法です!

親子の約束は誰のためにある?

手帳の使い方の前に、そもそも親子の「約束」は誰のためにあるのでしょうか。目から鱗の解説です。

約束は子どものためでなく、親のイライラをなくすために作る

約束は子どものためでなく、親のイライラをなくすために作る

石田:今回のテーマは「約束」ですが、ゲームやスマホの約束を作らないご家庭もあります。ご家庭の方針なので約束を作る、作らないは、私はどちらでもいいと思っています。
というのも、ゲームなどの約束は何のために作るかというと、子どものためではなくて、「親のイライラをなくすため」です。子どもがゲームをいくらしていようが、親が別にイライラしないのなら約束なんてなくてもいいんです。

子育て最大の課題は「親のイライラをなくすこと」

石田: 私は教育関係の仕事をずっとやってきましたが、子育ての最大の問題は、「親のイライラ」だと思っています。親がイライラすると子どもに対して指示、命令、脅迫、説得をしてみたり、余計な一言を言ったりしてしまいます。
親のイライラをゼロにするのは難しいですが、イライラが少なければ親自身も冷静になろうと思えますから、子どもに適切な対応ができます。「親のイライラをいかに抑え込めるか」が肝心で、約束作りはその一環なんです。

——親はどういったときに子どもにイライラしてしまうのでしょうか。

石田: 子どもが自分の思い描くイメージ通りに動いてくれない時ですよね。
「ここは片付いているはずだよね」「こう動いてくれているはずだよね」と親の思い描いていたものと一致していないと、イライラしてしまうんです。
「うちの子どもってこういうタイプの子だから、こうなるだろうな」という視点でいた方がいいのですが、「親の理想、親の都合」で子どもを見てしまうからイライラしてしまう。最初からボタンを掛け違えているんですよね。

ゲームをやめれば成績が伸びるかといえば……

石田: また、親が子どものゲームやスマホでイライラする要因として「成績」も大きいですよね。「ゲームばかりしていると成績が落ちる」と結び付けられがちですが、ゲームばかりしている子にゲームをやめさせたところで勉強をするかと言えば、勉強はしません。今度は別のことで遊ぶだけでしょう。ゲーム時間と学力には相関関係はありますが、因果関係はないのです。
ただ、子どもも口では「ゲームを好きなだけやりたい」と言ったりしても、「勉強はやらないと…」という気持ちはちゃんと持っていますよ。
中学生に至っては、私が出会ってきた中学生は全員自分の成績を上げたいと思っていました。成績が悪い子でも、不登校の子でもそうです。例外なく、どんな子でもです。ただ、「ちょっと勉強したくらいで成績が上がるわけがない」と自分の未来に対して絶望しているからやらない、というだけなので、そこはやはり大人側がちゃんと子どもの心の状態を知っておく必要があります。

約束を守ってもらうための約束作りのポイント

「約束は親のイライラをなくすため」という大前提を心に刻んだうえで、約束作りのポイントを見ていきましょう。

約束は子どもから言わせる。親からは絶対言わない

石田: 約束作りは年齢によって変わってきます。これからお話する約束作りは小学校三年生以上を想定したものになります。それ以下の年齢でしたら、親が決めた約束を実行する、でもいいでしょう。
小学校三年生以上なら、約束は「子どもから言わせる」が原則で、親が一方的に決めた約束は、ほぼ間違いなく守られることはありません。さらに、約束が守られないことに対して、子どもは、「親が決めたルールが悪い」と後から言い訳ができてしまいます。

子どもから言わせる約束作りの具体的な進め方

石田:ですので、まず「ゲームをどれぐらいやりたい?」と子どもに聞いて、子どもの意見を先に聞きます。その上で、親の考えを提示し、親子で話し合い、双方の納得がいくよう調整していきます。
さらに次は「今決めた約束を守れなかったらどうする?」と、これもまず子どもに先に聞いて、親子で調整して決める。それでも、子どもによっては、ペナルティを実行するとキレる子もいます。そのようなことが想定されるときは、さらに「ペナルティを実行するときに、それを嫌がって、やだっ!ってあなたはキレるかもしれないよね、そうしたらどうする?」と、また子どもに聞いて、子どもから先に言わせていきます。ルール決めというのは、ここまで決めることを言います。
子どもは「いや、自分はキレたりなんかしない」と言うかもしれません。でも、「そうじゃなくて、もしキレたらどうする?」とちゃんと聞いてください。そしたら子ども側から「ペナルティ2倍でいいから!」などの案が出てくるでしょう。

約束作りのやりとりは動画で撮っておく

石田:そして、これらの一連の約束決めの様子を、最初から最後まで動画で撮影しておきます。動画を撮る理由は、「親である私たち自身が守れないかもしれないから」と子どもには伝えておきます。間違っても子どもに対して「あなたが守らないかもしれないから」とは言いません。
さらに、作った約束は1週間の試行期間を設けます。約束が厳しすぎたり、甘すぎたりするかもしれないからです。この一連の流れをやると、もうほぼ100%に近いぐらい、作った約束は守られます。

約束を遂行する場を「教育の場」とする

石田:ただ、例えば「ゲームは1時間でやめる。守れない時は電源コードを抜いてもいい」と親子で約束したものの、ボス戦であるとか、ゲームがキリよく終わるタイミングじゃなくて、やめられないケースも実際出てきますよね。ですが、ここで親はちゃんと子どもに言わなくてはいけません。「ゲームは1時間って約束だよね?約束通り、電源コードを抜いていい?」と。

——子どもは「これが終わるまで待って!」となりますよね。

石田:こういう事態は当然起こり得ることなので、ルール決めをするときに、想定して子どもに伝えておきます。このように様々な想定がされることを子どもと問答していくプロセスを「教育の場」にするんです。親は子どもに単に制限をかけているわけではなく、色々なことが起こりえるから、起こった時にどうするかという想定問答を通じて教育をしていくのです。
そもそも今説明したように、「1日何時間」でゲームは終わりにくい場合もありますから、「1日1時間にする方法もあるけど、週7時間にする方法もある」と、別の選択肢を子どもに伝えて、ルール決めのときに提示していくことをお勧めします。もちろん、どちらにするかを決めるのは子ども自身です。子ども自らが選び、決めた場合、それを守る確率はかなり高くなります。

あまりにも約束が守れない場合は「家族会議」を開く

あまりにも約束が守れない場合は「家族会議」を開く

石田:約束を作ったのにそれが守られない場合は、そもそも約束が厳しすぎるケースも考えられます。その場合は、こちらも子どもに話をさせ、約束を改定しましょう。
ただ、それでも効果がなかったり、そもそも聞く耳を持ってもらえない場合には、「家族会議」を開かないといけません。もちろん家族全員集合です。まだ小さな弟妹も参加させましょう。「これは普段の雑談ではない」という雰囲気を出すことが大事です。
「家族会議」の議題は「あなたのゲームを今後どうしていくか?」です。怒る場でも、お説教の場でもないですよ。「今後どうしていこうか」と話し合う場です。ここでも先に子どもに言わせます。とにかく大人が先に言わないことです。 親が何か言った瞬間に、子どもは守りか攻撃に入ります。
家族会議では参加者の誰かが感情的になったら、日を改めてください。これが唯一の家族会議の決まりです。

——先ほどの「録画」といい、ここまで徹底するんですね。

石田:はい。このレベルまでやらない限りは、 「親はイライラし、子どもはやり放題」がずっと続きます。

トラブルに発展しそうなことについては、事前に話しておきたい

石田:先ほど約束は親のイライラを減らすためであり、ゲームの利用時間などの約束は別になくてもいいとお話しましたが、例外もあります。ゲームやスマホなどを通じてトラブルに発展する恐れのあることだけは、子どもときちんと話して、約束をしておきたいですね。
具体的には課金について、犯罪、いじめに巻き込まれるなどです。こういったことについては「子ども1人では解決が難しいことだから、必ず親に話をしてね」と伝え、約束しましょう。
あとは、普段から雑談を子どもとしておくことですね。そうすれば子どもも話しやすいですから。逆に「指示、命令、脅迫、説得」を頭ごなしに言ってくる親ならば、子どもにしてみれば「何を言っても怒られるから」と、相談もしたくなくなりますよね。

子どももハマる!手帳を使った約束を守るための習慣づくり

次に、手帳を使って、子どももできるゲーム感覚で約束を守れるようになる方法について伺いました。

石田:私は子どもに向けた手帳を活用したスケジュール管理方法を教えています。小学校三年生以上を想定しており、どのような手帳でも使える方法で、次のような仕組みです。

子どもに手帳を与える
1日にやるべきことを書く
②のできた内容を、赤線で消す
達成したことに応じてポイントを付与する

内容は勉強でも、家の手伝いでもいいですね。
達成したことが増えたら、ポイントがどんどん溜まっていきます。ポイントが溜まったら褒めてあげましょう。そうなるとポイントが欲しいから、と勉強や手伝いをやるようになっていくんですね。
さらに進むと、例えば勉強の場合、続ければ学力も伸びていきます。そうなると、自分も気持ちよくなって、だんだんポイントに興味を示さず勉強自体がもう楽しくなっていきます。大体3か月くらいすると習慣化してくるので、そうなると手帳なしでも勝手に子どもが動いてくれるようになります。

ポイントのレート設定が重要!

石田:この際、大切なのがポイントのレートです。「その子にとって難しいこと」はレートを高く、逆に簡単にできることはレートを低くしましょう。
「ゲームの約束時間が守れたらポイント付与」というのも案ですが、「ゲームをやったら1ポイント、その代わり、宿題なら10ポイント」という考え方もあります。また、達成できなかった場合「0ポイント(ポイントが入らない)」にはなりますが、「ポイントを減点する」仕組みは入れないでください。
これって、要はゲームのモデルなんですね。雑魚キャラを倒しても経験値は少ししかもらえませんが、ボス戦では経験値がたくさんもらえます。ゲームにハマる子は、この手帳の仕組みはハマってくれますよ。
ポイントをお小遣いに換算させてもいいですね。ポイントに関係なくお小遣いをもらえていた時よりも、自分の行動の結果がこのお小遣いなのだ、という実感が強くなるので、大切にお小遣いを使うようになり、お金の教育にもなります。

今しか生きていない子どもに手帳を通して「過去と未来」を見せる

石田:そのほかに、手帳の効能として「見える化」もあります。子どもって、過去、未来の時間の概念がなく「今」しかないんですよね。「今、楽しかったらやる、つまらなかったらやらない!」この連続体で生きているのが子どもです。だから、親が先回りして口でいくら言っても、親の言葉はなかなか子どもの心には届きにくいんですよね。
でも、子どもも未来が分かったら準備を始めるし、過去のことをよく把握できたのなら、同じ過ちは繰り返しません。手帳に文字を書くことで、そういった「過去と未来の見える化」ができるのが強みです。

小学校三年生以下は「シールによるチェックリスト」がおススメ!

小学校三年生以下は「シールによるチェックリスト」がおススメ!

——手帳のやり方は小学校三年生以上を想定とのことですが、それ以下の年齢のお子さんにもできる方法はありますか?

石田:単純なチェックリストを作ってもいいかもしれませんね。シールを使ってもいいでしょう。お手伝いをした、勉強をした、などの項目を用意して、各項目にシールを貼り、達成した数に応じ、棒グラフのように長くしていきます。週単位などにすれば、シールが溜まっていき、達成感もありますよね。

令和の子どもにも絶大な「シールの力」

石田:シールの効果は絶大です。私は農業イベントも開催しているのですが、そこで参加した子どもたちにお礼としてシールを用意すると、争奪戦になります。これは小学校高学年のお子さんでもそうです。この様子には、親御さんも驚いていますね。

——今時の液晶ゲームの華やかな動画演出に目が慣れている子どもたちが、アナログなシールに盛り上がるなんて意外ですね。

石田:これがとても盛り上がりますので、家庭内でもシールを活用することをお勧めします。

大人だって「ポイ活」に夢中のはず

石田:シール活用法として「これができたら普段はシール1つだけど、特別にシール3つ!」などのイベントを用意したり、先ほどのポイント制のように、シールにもレートをつけてもいいですね。また、シールは○枚溜まったら「ステージが上がってプラチナ会員に」みたいな仕組みを作っても面白いですね。つまりこれって「ポイ活」の仕組みなんです。

——プラチナ会員と言われるとぐっときます(笑)

石田:大人でも響きますよね。こういったポイント的なやり方は、「モノで子どもを釣るなんて」「勉強はポイントやシールのためにやるわけではない」という反論もあったりしますが、そんなことを言う大人だって、「ポイ活」の一環としてポイントアプリを使ったり、ポイントカードを何枚も持っているはずなんです。楽しんで取り組める仕組みはどんどん活用した方がいいです。
今のお約束メイカーは小学校低学年くらいまでという印象を受けましたので、小学校三年生以上になったら、本日お話しました約束作りや手帳を使った方法などを活用して、親のイライラを減らしていければ良いですね。

POINTまとめ
  • 約束は子どものためでなく親のイライラを減らすためにある
  • 約束作りは絶対に子どもから言わせること
  • ゲーム、ポイ活の仕組みなど、楽しんで取り組める仕組みは積極活用

POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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