もう、夏休みだからってゲームばっかりで嫌になるわ!
夏休みならではの、約束づくりが必要そうじゃな
- 小川大介さん
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小川大介[おがわ だいすけ]
教育家・見守る子育て研究所® 所長
1973年大阪出身・京大法卒。コーチング主体の中学受験専門個別塾を創設し、子ども個々の才能タイプに基づく独自の成績向上ノウハウを確立する。塾を後進に譲った後は教育家として講演、人材育成、文筆業、親向け講座と多方面で活動。“見守る子育て”を日本の常識にすべく奮闘している。著書25冊以上・メディア出演700回超・講演多数。
小学校の夏休みなどの長期休みを、楽しいスケジュールでいっぱいにしてあげたい保護者さんも多いかと思いますが、共働きのご家庭も多く、また、子どもにも多くの宿題や課題があります。小学校高学年になると学童に入れず、朝早くから夜まで留守番、というご家庭も多いのではないでしょうか。親の目がない期間を子どもだけでどう過ごさせるか、特に、ゲーム・スマホなどの娯楽との付き合い方をどうすればよいか「見守る子育て研究所®」所長の小川大介さんにお話を伺いました。
現代の子どもを取り巻く事情
親世代が子どものころとはかなり異なる、現代ならではの子どもを取り巻く状況について伺いました。
外遊びの減少と、両親の共働き家庭の増加
小川:
現在の子どもを取り巻く状況の特徴として、まず2024年時点で小学校高学年の子どもは低学年のころに新型コロナウイルスの影響による休校を経ており、その結果として交友関係が限定的になりがちです。
親世代が子どものころのように、公園に行ったら誰かがいて、友達が広がるということよりも、クラスが一緒、習い事、塾が一緒など、限られた人同士で遊ぶ傾向があります。
そして今の子どもは外遊びの経験が不足しがちです。外遊びの場合、おのずとローカルルールが生まれるなど、遊び方に創意工夫が生まれてきますが、今の子どもはゲームなど出来上がった遊びが中心なので、そこから活力やクリエイティビティが生まれてくるかは心配な面もあります。
また、親世代に共働き家庭が多く、親御さんが非常に忙しいというのも現在の家庭の特徴でしょう。父親、母親ともになかなか子どもと接点が持てないということで、その子どもの居場所をどう確保するかで皆さん悩んでおり、塾を居場所に選ばざるを得ない、というご家庭も多いようですね。
長期休み、勉強と娯楽の両立をどうする?
夏休みは宿題もたくさんあります。どう勉強と娯楽を両立させればよいのでしょうか?
勉強を苦行だと思う時点で、スケジューリングは無理!
小川:
そもそも、勉強と娯楽を「分けなきゃいけない」状態が危険ですね。成績が伸びる子は勉強を楽しめる子です。勉強は新しく知識を得て、考えて、 問題解決をして達成感が得られるので、基本面白いことのはずです。
とはいえ、大多数の子どもも大人も勉強は辛いものになっていますが、これはやり方が悪いんですね。ただ管理され、やらされ、何が得られたか分からず、徒労感だけがあれば、そんな勉強は誰もやりたくないですよね。
「勉強が本人にとって成長の手応えと達成感が得られること」が大前提であり、その上でのスケジューリングです。
親は子どもをとにかく見る!~我が子の集中のタイプが分かりますか?~
――子どもが勉強で達成感を得られるために、親はどういった手助けができるのでしょうか。
小川:
お子さんをよく見て、お子さんの話をよく聞くことです。「子どもにどう働きかけたらいいかを知りたければ、まず3日間はただお子さんを見ることだけに専念しましょう」と僕は伝えています。「見る、聞くが9割で、声掛けは1割」です。
例えば勉強の集中力と持続の仕方も様々です。目移りしがちで飽きっぽい子なら、短期集中で次々に解決をしていくような学び方が向いていますし、一方、気分が乗るまで時間がかかるものの、一度気分が乗ったら長く集中できるタイプもいます。子どもそれぞれですから、とにかく子ども本人をよく見ることにつきます。
見極めにおいて子どもの遊んでいるゲームも参考になりますよ。1ステージが短いゲームが好きなのか、長い方がいいのか、アイテムをきちんとコンプリートしたいのか、人と対戦するのが好きなのか……これらは子どもの頭や心の使い方を知る手掛かりになります。お子さんが好きなゲームはぜひ親御さんもプレイしてみましょう。
声掛けがうまくいかないのは、子どもを操作しようとしているから
――夏休み期間は親が子どもに声掛けをする機会も増えますが、声掛けのコツはあるでしょうか?
小川:
「言葉によって子どもを動かそう」と思わないことです。 「子どもを操作する発想」で親をやったら絶対失敗します。ここからいかに抜け出すかが大前提です。言葉を選べば子どもが思うように動いてくれるなら、誰も苦労しません。ここでもお子さん自身をよく見ることです。
子どもが勉強や課題に躓き、気持ちが下がりそうな時に、「もう半分超えたんだね、頑張ったね」「あと何分あったら終わりそうだね」「ちょっと1回休憩して見通し立て直そうか」など、どんな言葉を、どういうタイミングで声掛けするかが適切なのかはお子さんによっても、状況によっても異なります。
声掛けがうまくいっているお家は、よく子どもを見ていて、どのような声掛けが「今の」我が子にとって納得いくものかが分かっているから、うまくいっているんです。
――そういった土台のない状態で、言葉の上っ面だけ真似してもうまくいかないと。
小川: はい。子どもをなめてはいけません。
子どもを褒めるための仕組みを作る
言葉の上っ面だけではうまくいかない子育て。では、子どもに響くには、どのようなことに気を付ければいいのか尋ねました。
子どもを叱るための仕組みを一生懸命作っていないか ?
――夏休みは子どもの宿題も多いですよね。子どものモチベーションの保ち方について、親はどのようなことに気を付ければよいでしょうか。
小川:
親が「子どもを褒める仕組み」を作っていきたいですね。口先だけの褒めではなく、課題がここまで進んでいたら褒められる、ゲームを約束の時間でやめられたから褒められる、と真剣に考えましょう。
うまくいってないご家庭は、この逆で「子どもを叱る仕組み」が作られているんです。「ほら、あれもこれもできていない!」と、端から叱るつもりで計画を立てているんです。それはお互いにとって非常に不幸で、子どもは確実に勉強嫌いになってしまうでしょう。
子どもはやっぱり親から褒められたい
小川:
実際僕の講座を受講しているご家庭で、「勉強が嫌で、ゲームがしたい」と言っていた子どもの親御さんが、「子どもを褒める仕組み」を作れるようになると、子どもは勉強を頑張るようになります。 そうした方が親は喜ぶからです。ゲームをいくらやっても親は喜ばないですからね。子どもはやっぱり親から褒められ、認められたいんです。
ゲームは自分の欲求を満たしているだけですが、勉強をすれば家族も喜んでくれたり、認められたりと、精神的により高次元の喜びを感じられます。
「子どもを褒める仕組み」があり、それをすると親は喜んでくれるという信頼が子どもにあれば、子どもは勉強もお手伝いもします。これは僕が何千人と子どもたちを見てきたうえでの実感です。
ゲームを勉強の息抜きとして活用する
小川:
なお、子どもたちを見ていると、ゲームを勉強の息抜きとして上手に活用しているケースもありますよ。勉強の教科を変えるとき、気持ちの切り替えにちょっとゲームをする子もいますね。
ご家庭の約束で自発的に朝5時に起きて、 家族が起きてくる6時までの1時間は好き勝手に思いっきりゲームをして、6時になったら終了し、朝学習から始めるという子もいます。本人はその1時間思いっきりゲームをすることで、納得、満足できます。
ほか、シューティングゲームやパズルゲームなどの短い1ステージだけをプレイし、そこで集中力をぐっと高めた状態で計算問題をやると計算の速度が上がった、なんて子もいます。
一方で、ゲームをすると燃え尽きるまでのめりこんでしまう子もいますから、そういう子の場合、ゲームは勉強が終わったあとのお楽しみ、とするといいですね。
夏休みの宿題だと、お子さん自身が丸をつけて、というケースも多いですがこれはやはり達成感が得られにくいんですよね。一方ゲームは1ステージクリアしただけでも派手な演出で祝ってくれ、満足感を高めてくれます。
――ゲームがもたらす「満足感」を宿題でも実感できるような声掛けを工夫したいですね。
動画・テレビの見過ぎをどうする?
――夏休みは子どもが1日中動画、テレビを見ているのが心配、というご家庭も多そうですね。
小川: テレビや動画は目的をもって視聴したいですね。テレビを時計代わりにしてつけっぱなしにしていたり、動画もレコメンド(おすすめ)で表示されたものを次々に見ていくのはお勧めできません。この番組が見たい、であったり、ショート動画なら〇本まで見る、であったりと数で決めても良いでしょう。
子どもが本当に守れる約束を作る――約束づくりのポイント
最後に、共働きで時間のないご家庭のケースや、約束作りのポイントについて伺いました。
子どもの予定を聞く前に、親の予定を伝える
――共稼ぎなどで忙しく時間の取れない親御さんも多いですよね。
小川: その場合、「家族の」1週間の予定を共有したいですね。ほとんどの親御さんは、子どもの時間管理だけして自分の予定を子どもに開示していないケースが多いです。そこはきちんと伝えて、この日の夜は空いているから遊ぼう(話そう)など子どもとすり合わせしましょう。
両親間で子どもに関する方針が違う場合~見ていない側の理屈は邪魔~
――夫婦で子どもに関する意識にズレがあって、「お父さんは子どもに甘い」みたいな感じでこじれるご家庭も多いですが、どうすればいいでしょうか?
小川:
ご家庭で我が子のいいところを100個出して、ご夫婦で突き合わせするのが1番いいですね。
ただ、夫婦それぞれ見るポイントが違いますし、一緒にいる時間も違いますから。どっちが正しい間違いではなくて、それぞれの目に見えている我が子の姿があります。それを持ち寄って夫婦としての我が子の理解の完成度を上げて、「我が子のことは『私たちが』誰よりも知っている」という状態を目指すことです。
「この子なら絶対守れる」約束を作る
――親子での約束作りにおいて、どういった点に気を付けたらいいでしょうか?
小川:
約束した時に、親の方が、「この子なら守れる」と本気で思っていたかどうかです。守れるかどうか怪しいと内心思いながら、ほらやっぱり守れなかったと怒るのは子どもが可哀そうです。 守れない約束は親側の勝手な押し付けになってしまいます。
なお、ガンホーさんが提供されている“お約束メイカー”は素敵な取り組みだと思いますが、親子で結んだ約束の横に「なぜこの約束を守れるのか(この約束を守れる理由)」を子ども側に自由記述で書いてもらうと、さらに良いでしょうね。
――「守れる確信」が親子ともある約束が結べそうですね。
- POINTまとめ
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- 長期休みのスケジュールを立てる前に、とにかく自分の子どもをよく理解すること
- 親から褒めてもらえるならば、子どもはちゃんと勉強する
- 子どもが絶対に守れる約束以外は、親からの押し付け
- インタビュアー/ライター
石徹白 未亜 - いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂