親子でスマホ・ゲームお約束メイカー
インタビュー
2024年06月21日

もう感情に振り回されない!親が知っておきたい論理的思考(ロジカルシンキング)

子どもにロジカルシンキングなんて無理でしょ~!

それは子どもを見くびっておる!ロジカルシンキングとの出会いは早いに越したことはないゾイ!

もくじ
吉澤準持さん吉澤準持さんプロフィール

外資系コンサルティングファーム勤務。ロジカルシンキング/図解作成/文章術/仕事術/ファシリテーション/コーチングにも造詣が深い。特に、ロジカルシンキング・ラテラルシンキング・クリティカルシンキングの3つを組み合わせた「ビジネス思考フレームワーク」では、学生・企業向けに多数の研修・ワークショップを実施している。

いつも時間に追われる子育て中。ついつい焦りから感情的に子どもを叱ってしまった経験がある親御さんもいるのではないでしょうか?そんな親子の毎日を、論理的思考(ロジカルシンキング)の視点で解決すべく、外資系コンサルティングファーム勤務で多数の著書も出版している吉澤準特さんにお話を聞いてきました。感情的になりやすい子育てに「ロジカルシンキング」の視点を取り入れてみたい親御さん必見です!

子育てに使えるロジカルシンキング

ビジネスのイメージが強いロジカルシンキングですが、実は子育てにもフル活用できるんです。

勘違いや思い違いをなくしていくのがロジカルシンキング

吉澤さんインタビュー風景

――ロジカルシンキングとはどのような考え方なのでしょうか。

吉澤: ロジカルシンキングは直訳すれば「論理的思考」です。論理的というのは「一貫性のある伝え方ができている」ということです。思いつきで話すなど、途中で言っていることが変わるのはロジカルシンキングではありません。
例として、子どもがお正月に親族からもらう「お年玉」で考えてみましょう。親は「あなたの将来のためにとっておく」と子どもからお年玉を預かったりしますね。
子どもとしては、自分が中学生、高校生になって欲しいものをお小遣いだけでは買えない時にそこから出してもらえると思っていたものの、もっと先の将来を想定している親はお年玉を出してくれなかったりしますよね。
これは両者に「将来がいつなのか」について「勘違い」「思い違い」が生じている状態です。これはロジカルシンキングな状態ではありません。そしてこれは親への不信感などのネガティブな感情にもつながりかねません。

「あの時はこう思ったけど、やっぱり違った」ときはどうする?

――一貫性は大切ですが、親自身も「この時はこう思ったけど、違った」という局面も出てくると思います。その時はどうすればいいでしょうか。

吉澤: 素直に謝って説明することです。「あの時は間違った判断をした」もしくは、「あの時と今では状況がこう違うから、今はこういう結論になる」ときちんと説明したいですね。

子どもにロジカルシンキングが分かるのか?

――ロジカルシンキングは何歳ぐらいで分かるものなのでしょうか?

吉澤: まず「子どもが何歳ならロジカルシンキングが分かるのか」というより親自身が「自分が子どもに対し話すことは、常にロジカルであるように気を付ける」方が大切ですね。幼い子どもであっても「お父さん、お母さんが言っていることが前と違う」というのはちゃんと分かりますから。
「情操教育は早ければ早いほどいい」と言われたりもしますが、論理的思考の訓練や意識づけも同じで、早ければ早いほどいいと思います。

子どもがやりがちな「発言の飛び」を大人がサポート

子どもがやりがちな「発言の飛び」を大人がサポート

吉澤: 一方で、子どもは自分が思っていることを言わなくても、話し相手には伝わっていると思いがちです。
そのため、さまざまな前提を飛ばして子どもが話をしていたら、その「行間」を大人側が読み取って言語化し、子どもに「こういうこと?」と尋ねるようにしましょう。
そうすると、子どもは自分の発言を理解してくれていると安心しますし、もし親が違う理解をしていたらそれは違うよと伝えてくれます。

――対話を重ねることで「勘違い」「思い違い」を防げますね。

イライラしているときこそロジカルシンキング

――でも、親子間でイライラしている時にロジカルシンキングができるのかなと不安に思ってしまいますが……。

吉澤: 親子間に限らず、人間関係の悪化は「問題」と表現できますよね。そもそも、ロジカルシンキングは問題解決をするための「道具」としてビジネスシーンで使われてきたんです。

――イライラするような問題局面こそ、ロジカルシンキングが活躍するんですね。

吉澤: はい。ロジカルシンキングは重箱の隅をつついたり、相手の揚げ足を取ったりするのではなく、本質的に何が問題なのかを掘り下げていく考え方です。
私はよくロジカルシンキングをドリルに例えています。 行く手に大きな岩石があったら、ドリルで細かく砕いて前に進んでいきますよね。
目の前のどうやって解決したらいいのかわからない問題をロジカルシンキングというドリルで細かく砕いて、解決可能な要素に分解し、取り組んでいく。これがロジカルシンキングの最も本質的な用い方です。

シーン別!ロジカルシンキングでトラブル解決

子育てでよくある「困った」な問題を、ロジカルシンキングで解決していく方法を例で紹介してもらいました。

シーン①なかなか子どもが夜寝ない

シーン①なかなか子どもが夜寝ない

――まずは子どもが夜寝てくれないときですが、どうでしょう?

吉澤: 親からすると「いいからさっさと寝なさい」と片付けたくなりますが、「なぜ寝たくないのか」と問うのがロジカルシンキングです。
そこで子どもが、「だってこれがしたいもん」とか、「明日の準備が終わってないもん」とか、色々な理由が出てきます。
理由がわかったら、今やらなければいけないことと、明日起きてからでも間に合うことを分けて、 今やらなければいけないことをやったら寝よう、と伝えてあげるとよいでしょう。

シーン②課金トラブルを防ぐには

シーン②課金トラブルを防ぐには

――子どものゲームやスマホによる課金トラブルを防ぐにはどうすればいいでしょうか?

吉澤: 家の収入や家計の状況を子どもにきちんと伝えるのも良いかと思います。あまり伝えたくない親御さんもいらっしゃると思いますが、可能な範囲で家計を子どもに伝え、「そのうちあなたに渡せる金額はこのくらいで、それを超えたら我が家の家計はダメになってしまうから、そこはちゃんと意識してね」と、子どもに「リミット」を意識させるのは大事かなと思います。

――ちゃんと説明してもらっているので、子ども側にも納得感があるでしょうね。

これであなたも外資系コンサル!ロジカルシンキングテクニック

ロジカルシンキングをより使いこなすための、コンサルの技について伺いました。

ロジカルシンキングは「共感」から始める

吉澤: ロジカルシンキングは、相手の前提や目線を理解することが大切です。そのため相手に「共感」を示したいですね。相手が子どもなら一緒に遊ぶなど、子どもが興味を持っているものを自分もやってみましょう。ビジネスシーンにおいても最初のステップは「クライアントへの共感」なんです。

――コンサルというと頭脳戦なイメージがありましたが、はじまりは「共感」なのですね。

外資系コンサルが真っ先に教わる「no guess(想像するな)」

吉澤: 逆から言えば、腑に落ちるような共感的な理解なしに、自分の勝手な想像で子どもとコミュニケーションをとろうとすれば、反発されてしまうことでしょう。
外資系コンサルタントが最初に教わる事の一つに「no guess」があります。guessとは想像するという意味です。「想像するな、必ず事実に基づいて考えなさい」ということです。
想像は事実との乖離が生まれ、それが自分勝手な解釈になってしまうんですよね。

――「空気を読む」文化のある日本だと、特にそういう乖離が生まれがちかもしれないですね。

吉澤: 子どもとのやり取りでも、 親が勝手に子どもを「想像」しないことです。これは子どもにしてみても嬉しいことだと思います。自分に関心を持って向き合ってもらえているということですから。

約束づくりにロジカルシンキングを活用しよう

親子のゲーム・スマホの約束づくりにおいて、どうロジカルシンキングを活用すればいいか聞きました。

約束の押しつけは厳禁!

吉澤: まず親子の約束の前提として、親から約束の押しつけをしないことです。多くの場合反発されますし、反発されなかったとしても、心の中では不満が蓄積していきます。
最終的に選ぶのは子どもにしたいですね。そうすることで子ども側からすると「自己決定権が自分にある」と思えますから。

MECEで、漏れなくダブりなく

吉澤さんインタビュー風景

吉澤: ロジカルシンキングには「ビジネスフレームワーク」と呼ばれる枠組みがいくつかあり、有名なひとつがMECE(ミーシー、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)で、「漏れなくダブりなく」という意味です。
親子の約束もMECEを意識したいところです。漏れがあると「こういうケースは約束にない」と迷うようなことが出てきて、子どもが自分の判断で行動し、期待しない結果になってしまうことも出てきてしまいかねません。

――例えば「友達ではない人とはスマホでDMのやりとりをしてはいけない」という親子の約束があった場合、親は「実際面識ある人だけが友達」の考えでいたものの、子どもは「ネット上の友達も友達」だと思ってDMをやりとりしていた場合、「友達ではない人とはスマホでやりとりをしてはいけない」という約束は、解釈違いを生む余地というか、漏れがあり、MECEではなかったということになりますよね。

吉澤: はい。ですので、約束を決める際には「抜け漏れはないか、MECEであるか」の意識を持ちたいところです。

「範囲」を決めると安心感アップ

――抜け漏れを予防する心がけは大切だと思うのですが、事前に完全に抜け漏れを防ぐ約束を作るのは難しそうです……。

吉澤: 特にスマホ関連は新しい技術やサービスも出てきますからね。ですので、約束を決めるときは「範囲」も決めるといいですね。「決めた約束はどこまでの範囲で、範囲にないことが発生したら、再度相談をしよう」ということも約束しましょう。

――この約束はこのゲーム、アプリで有効(それ以外は再度相談)と範囲を決めておくと、安心感がありますね。

吉澤: はい。また約束は未来永劫を続くものではないので、お約束メイカーで作った約束についても、「有効期限」も記載しておくと良いでしょう。

POINTまとめ
  • 「共感」がロジカルシンキングの第一歩、子どもの好きなものを一緒にやってみよう
  • 「no guess」自分の子どもを勝手に想像してはいけない、対話を重ねよう
  • 「MECE」抜け、漏れのない約束を作ろう

POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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