親子でスマホ・ゲームお約束メーカー
インタビュー
2023年9月28日

ゲームの時間が勉強の時間に?オンラインゲーム英会話教室を運営する真鍋さんに聞く「ゲームと勉強の両立術」

どうしたらゲームをやめて勉強してくれるのかなぁ?

ゲームvs勉強にするより、もっと親も楽な方法があるゾイ!

もくじ
真鍋 拓也さん真鍋 拓也さんプロフィール
ゲシピ株式会社代表取締役CEO、iU 情報経営イノベーション専門職大学客員教授。中学時代よりゲームセンターに通っていた際の原体験をもとに起業した『ゲーセン生まれのメタバース起業家』。
上智大学外国語学部卒業後、金融機関で営業に従事。その後ヤフー株式会社にて複数のサービス開発や新規事業開発をリード。
2018年にメタバース教育企業のゲシピ株式会社を創業し、eスポーツ英会話を運営。

子どもがゲームやスマホで遊んでばかりで勉強が疎かにならないか?と心配な親御さんも多いのではないでしょうか。今回は、ゲームをしながら英会話の勉強ができるユニークな学習サービスを提供するeスポーツ英会話の真鍋さんに、ゲームを勉強の役に立てる方法や、オンラインゲームをすることで身につくスキルについて伺ってきました。ゲームの時間を勉強の時間に変えるコツを知りたい親御さん必見です。

ゲームをしながらどうやって英会話を学んでいるのか?

eスポーツ英会話設立のきっかけや、オンラインゲームがどう英会話学習に役立っているか尋ねました。

コロナ感染拡大でゲームばかりの息子を前に、eスポーツ英会話が誕生

真鍋:弊社は2018年の創業で、eスポーツを使った教育事業を試行錯誤してきました。
そのような中で2020年、新型コロナウイルスの感染が拡大し、生活が一変しましたよね。当時小学校4年生の私の息子も、緊急事態宣言下で学校、塾、コンビニ、公園も行けない状況で、家でゲームばかりしていたんです。
私もゲーマーですし、ゲームをすること自体はネガティブな印象がないのですが、さすがに1日6~7時間をゲームに費やす息子を見ていると、親としてなんとかならないかなとヤキモキする気持ちもあって。
そんな中、息子がゲームをしている様子を見ていると、ゲームをしながら、ボイスチャットで画面の向こうの学校の友達とずっと喋っていたんです。「宿題のドリルが難しかった」とか世間話をしていて、コロナ禍で外に出られない息子の、唯一の外との接点がゲームなんだなと気づいたんですよね。であれば、それをうまく利用できないかなと思いまして。
息子はゲームでずっと会話をしていたので、この会話を、英会話にしたらいいんじゃないのと。息子のゲームの6時間のうち、1時間でも英語の学びになれば、というのがきっかけでした。

真鍋さん インタビュー風景

ゲームが英会話学習において効果的な2つの理由

――英会話学習において、オンラインゲームはどのような点が効果的なのでしょうか。

真鍋:生徒に「モチベーション」と「実感性」を感じてもらえる点だと思っています。
まず「モチベーション」ですが、子どもたちはゲームが大好きですから、ゲームのために英語を使えと言われれば使うんです。こんな不純な動機でいいと私は思うんですね。私自身は英語が好きですが、英語学習のモチベーションは大好きな洋楽でしたから。

――海外ドラマや映画、洋楽がきっかけで外国語を習得した人は多いですよね。

真鍋:はい。そして2つ目の「実感性」ですが、例えば、オンラインのシューティングゲームで遊んでいると「Can I have the big potion ?(そのビッグポーションもらっていい?)」という会話がよく交わされるんですね。
「Can I~?(~してもいいですか?)」は学校でも教わる定番構文ですが、学校では「リンゴをもらっていい?」とか、そんな感じの例文になり、これだと実感性に乏しいですよね。一方ゲーム内なら、ビッグポーションが目の前にあった状態で「これをもらっていい?」ですから、イメージがしやすいんですよね。

――思えば「This is a pen」も、「これはペンです」と説明する状況が果たして生活の局面であるのだろうかと思ってしまいますが、言葉を使う状況が目の前にあれば、学習の必要性も感じられますね。

Can I have the big potion ?

勉強とゲームの両立、どうすればいい?

eスポーツ英会話はまさに「勉強とゲームの両立」ですが、これを各家庭でも実践するためのコツについて伺いました。

両立のコツ①本人が好きなものと、勉強をコラボさせる

――「勉強が嫌いでゲームが好き」な子どもは本当に多いと思いますが、そんな子どもにどうやって勉強をさせればいいのでしょうか。

真鍋:大変難問ですよね。あくまで私の考えですが、本人が好きなもの、興味を持つものと組み合わせるのが重要なのかなと思います。
子どもの興味って、本当にすごくストレートですよね。やりたい、やりたくないがとても分かりやすいので、「やりたい」の力をいかに利用するかだと思います。

――子どもの好きなものへの熱中ぶりって、凄まじいですよね。ゲームだけでなくスマホやネット、アイドル、漫画、YouTuberなどに広げてみてもいいですね。

真鍋:そうですね。もちろん「自分の興味がないこと」に取り組んでいくことも非常に重要ですし、大人になるほど気乗りしないことにもきちんと取り組むことの重要性を身に染みて悟っていきますが、ただ、これはなかなか子どもにいきなりは難しいかもしれないですね。

両立のコツ②ゲームの「ついで」に色々覚えさせる

真鍋:また、「ついで」に色々覚えさせるのもいいと思います。例として、eスポーツ英会話はオンライン授業なので、授業前の準備は子ども自身がきちんと用意する、と決めているご家庭も多いです。ゲーム機、パソコンを立ち上げて、テキストとノートを用意して、という程度ですけど、それでも15分ぐらい前から準備し、前もって動いておかないといけません。小学生の生徒さんもきっちり準備してきますよ。

――それを普段の生活でも応用できれば、「定刻通りに始められるように準備を終わらせる」意識が身につきますね。これは一生社会で役に立つ、とても大事な基本スキルですよね。

真鍋:はい。なので、ゲームをうまく「利用する」ことが鍵なのかなと。

ゲームでよくある「困った!」に、どう対応するか

「子どもがeスポーツ選手になりたいと話している」「ゲームの時の子どもの暴言が気になる」など、ゲームにまつわる多くの親御さんの悩みについても伺いました。

eスポーツ選手になりたいと言ってきたら否定しない

――子どもがeスポーツ選手になりたい、と言ったら、親はどう答えればいいのでしょうか。

真鍋:私だったらどうするか、という回答なのですが、まず絶対否定しないことかなと。特に論理的に否定しちゃダメなんだなと思っていて。

――つい親はこんこんと、論理的に諭したくなりますがそこはぐっとこらえてと。

真鍋:はい。今世の中にある仕事だって10年後どうなっているかわからないですから。eスポーツ選手になりたいという子どもの思いや目的をうまく利用して、横展開させるかなって、私なら思います。
横展開の例として、子どもに対し、「ゲームが上手いだけではeスポーツ選手には絶対になれないよね。今のゲームはチーム戦が多いから、自分の意図を仲間に伝えるための国語力、コミュニケーション力が必要だし、外国で開催される大会も多いので外国語もちゃんと勉強しようね」と伝える……、といった感じですね。

――「横展開」はいいですね。子どもの言うことを「だめだめだめ!」と頭ごなしに否定するより、大人の余裕を感じさせますね。

ゲームの「暴言」問題をどうする?

――オンラインゲーム中の、子どもの暴言が気になる、という親御さんの声も多く聞きます。

真鍋:ゲーム中の暴言は①こちらが相手に言ってしまう②相手から言われる、の2つがありますよね。
まず①ですが、eスポーツ英会話では、ゲーム中も学校や家庭など「普段」と同じだよと伝えています。今のゲームはチームプレイが多いので、ゲームが下手な子に対して、ついキツいことを言いたくなることもあるかもしれません。でも、学校で目の前の子に悪口を言ったり、無視したり、嫌がらせをすることはやらないので、ゲームでも一緒だよと伝えています。
そして②の、暴言を言われてしまうパターンは、ゲームの機能を使ってテクニカルに防ぐしかないかなと思っています。ボイスチャット(音声通話)、テキストチャット(文字でのやりとり)機能をあらかじめ切って、使えなくするなどですね。やっぱり暴言って、ボイスチャットよりテキストチャットで多いんです。「相手に言う」のは一段ハードルが上がりますから。

ゲームの「暴言」問題をどうする?

子どものゲームへの情熱を親が利用したい

――ゲームをきっかけに子どもがやる気を出すことに着目し、横展開していくと考えると、可能性が広がりそうですね。最後に、ガンホーが提供する親子で約束をつくることができる『お約束メイカー』についての感想を教えてください。

真鍋:親子で一緒に約束を作っていく点がいいですね。親から子供に一方的に言っても、やっぱ全然聞かないというか、理解しないというか……。子どもからすると「俺はやらされるけど、親であるあなたはやらないんでしょ」みたいな、「俺だけ損した感」があるのでしょうね。でも一緒に作ると、仲間みたいな感じになれますから。
「子どもが大好きなゲーム・スマホ」と「親がやって欲しいこと」をうまく組み合わせたお約束を作ってみてもいいかと思います。

真鍋さんインタビュー風景
POINTまとめ
  • 「モチベーション」と「実感性」が学習のために大事な要素
  • ゲームが絡めば子どもはやる気満々!親はそのやる気を「横展開」させよう
  • ゲームの暴言は、教育とテクニカルな制限で防ぐ

POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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