子どものスマホの利用について、学校はどのくらい把握しているものなの?!!
現役の中学校の先生に話を聞いてきたゾイ!
- もくじ
- 玉造中学校
- 玉造中学校は千葉県成田市に昭和60年4月開校。1学年2クラス、2・3学年は3クラスと特別支援学級で全校生徒244名(2023年4月時点)。全校生徒には成田市から学習用のiPadが貸与され、日々の学習に活用されている。今回はO先生(保健体育担当)、T先生(理科担当)にお話を伺う。
成田市立玉造中学校のホームページ
GIGAスクールが始まり、タブレットが生徒に貸与されるなど、教育にデジタル機器が欠かせない時代となりました。しかし学校で貸与されたタブレットでエンタメ系動画を見るなど、教育とは異なる使われ方が問題になっているケースもあります。今回は、玉造中学校の現役の先生に、学校で生徒に貸与しているタブレットや、子ども自身のスマホでどのような問題が起きているのかなど、トラブルにおける学校での対応や、家庭で対応して欲しいことについて伺ってきました。GIGAスクールの過渡期ならではの問題に悩んでいる親御さんは参考にしてみてください。
学校で貸与しているタブレットでトラブルは起きている?
全国の小中学校同様に、玉造中学校さんでも生徒に学習用のタブレットを貸与しています。まずそちらの利用状況について尋ねてみました。
タブレットで大きなトラブルが起きない理由
――生徒に貸与しているタブレットの利用で、トラブルは起きていますか?
O先生:大きなものはないですね。貸与しているタブレットは学習と関係のないサイトを見られないようフィルタリングがかかっていますし、生徒が見たサイトの履歴は全て市で把握できますから。生徒が問題あるサイトを閲覧していたこともありましたが、間接的に「何を見たかは全て分かっている」と指導し、そういったことも落ち着いてきています。
そもそもですが、タブレットは成田市が生徒に「貸与」しているものであり、生徒は卒業したらタブレットを市に返します。生徒にも常々「このタブレットは、市が君たちのために予算を組んでくれて、使わせてもらっているものだからね」と伝えています。だから学習以外では使ってはいけないし、そもそも「生徒のものではない」のです。そういったことを伝え続けたこともあって生徒たちにタブレットを渡した2020年のころよりは、トラブルは減ってきていますね。
学校からは見えにくい「生徒のスマホトラブル」
一方で、生徒自身のスマホで起きているトラブルを学校では把握しているのでしょうか。
生徒のスマホトラブルは学校からは見えにくい
――「生徒自身のスマホ」でもトラブルは起きていると思いますが、学校ではどのくらい把握されていますか?
O先生:貸与しているタブレットなら授業中の様子で分かったりもしますが、生徒自身のスマホだと、申告がないとこちらもなかなかトラブルの把握が難しいですね。全国の多くの小・中学校同様、玉造中学校でも特別な事情がある生徒を除いて、スマホの学校への持ち込みを禁止していますので。
生徒の元気がないなど、様子がおかしくて声をかけてみたらスマホのトラブルが分かったケースもあります。
些細な言葉の捉え方の違いが、トラブルのもとに
――具体的にはどのようなスマホトラブルが起きているのでしょうか。
O先生:よくあるのが友達とのSNSでのやり取りで、言葉の認識にズレが起きてトラブルにつながるケースです。「ごめんなさい」とは書いているけど、本当にそう思っている?とか、文面の捉え方だったり、スタンプの使い方や既読無視だったり。
――「草(「w」とも表現される。ウケる、的な意味合い)」なども、本当に面白くて言っているのか、馬鹿にしているのかなど、誤解を招きかねない言葉ですよね。
T先生:語彙力というか、そういった言い回しをどうとらえるかが、結構生徒によって差があるんですよね。その差がズレになって、トラブルになっている印象です。
――親子でSNSをする際にも、誤解を招きそうな表現については保護者から子どもに伝えておきたいですね。
保護者が子どもにスマホを渡す際に伝えて欲しいこと
子どものスマホトラブルは学校に相談か、それとも家庭で対応した方がいいのか。そして、多くの保護者が見過ごしがちな、トラブルをそもそも発生させないポイントについてもお話いただきました。
子どものスマホの契約者は「保護者」なので、学校からは言いづらい
――子どものスマホトラブルについて、学校に相談していいのか、家庭で対応か、という境界線についてどうお考えでしょうか。
O先生:子どものスマホの契約者は保護者ですので、ご家庭でしっかり管理をしてほしいとは、何年も前から、おそらくどの学校でも伝えていることだと思います。子どものスマホの契約者は保護者ですので、学校からこうして、ああしてとはなかなか言いづらいところもありますね。
「子どものスマホ」ではなく「保護者が契約して、子どもに貸しているスマホ」
O先生:そもそも、子どものスマホの契約者は保護者ですから、正確には「子どものスマホ」じゃないんですよね。「保護者が契約し、子どもに貸しているスマホ」です。
先ほど学校貸与のタブレットでは大きなトラブルが起きていない話をしましたが、これも「成田市から借りている」という意識が子ども側にあるのがとても大きいと思います。同じように、子ども自身が使うスマホについても、保護者側から「このスマホは保護者である私から子どものあなたに貸している」と渡すときは伝えて欲しいですね。
――子どもたち自身が「このスマホは自分のもの→だから好き勝手に使っていい」という認識でいれば、トラブルは当然増えてしまいますよね。
O先生:スマホを「貸している/貸してもらっている」と親子で共通認識があれば、トラブルになったときに、子どものスマホを「返して」と言いやすいというのも大きいですよね。私も中学生の娘には「スマホを貸している」と伝えています。
――毎月の通信、通話料も保護者が支払っているのですから、「貸している/貸してもらっている」という最初の親子の認識あわせがとても大切ですね。
スマホトラブルを教育する難しさとは
スマホトラブルから子どもを守るためには教育が欠かせませんが、一方で、「一つの正解」があるとは限らないスマホトラブルの教育には難しさもあるようです。
違法じゃなければ、スマホで何をしてもいい?
――子どもや保護者に向けた、スマホのトラブルを予防するための教育に際し、どういった難しさを感じますか?
T先生:スマホ利用においては、違法であったり、サービスの規約違反など、あきらかにNGな行いもありますが、それ以外にも「ネチケット(インターネットを利用する上でのマナー)」であったりとか、モラル上問題があるなど、いわゆるグレーゾーンなものもありますよね。
――「裏アカ(裏アカウントの略。表向きのアカウントとは別の、仲間内などだけでこっそり使うアカウント)」などはその一つかもしれませんね。一つのサービスでアカウントを複数持つこと自体は規約違反ではないサービスも多いです(※サービスによって異なるため必ず規約の確認を)。ただ一方で、ここは裏アカだから、という意識で「何を言ってもいい、何をしてもいい」みたいな感覚になるのは当然違いますよね。
T先生:はい。こういった白黒はっきりしない、グレーゾーンなところについても、子ども、保護者の方ともに考えて欲しいですし、こちらとしても伝えています。「違法じゃないなら、何をしてもいい」という捉え方になるのはとても危険だと思います。
デジタル機器にはメリットもある。「うまく」付き合いたい
タブレットやスマホなどのデジタル機器のリスクやトラブルについての話が続きましたが、デジタル機器が子どもの教育の可能性を広げているポジティブな面についても伺いました。
手を挙げて意見を言いにくい子が意見を言いやすい
――デジタル機器を教育現場で使うメリットについて教えてください。
T先生:私は理科担当ですが、動画は教科理解において役立っていますね。貸与しているタブレットにはデジタル教科書が入っていて、実験の様子も動画で見られます。生徒たちが関心を持って見ているのがよく分かりますし、また、実際の実験で失敗したときも動画で正解を見られます。
他にも意見を言う場面でなかなか手をあげられないけれど、いい考えを持っている生徒がアプリを通じ意見を発信し、担当がそれを取り上げたりするケースもあります。そういったことを通じて「誰もが意見を出しやすくなる」というのはとても大きいですね。
――子どものデジタル機器の利用には気を付けないといけない点もありますが、いい面もありますよね。
T先生:はい。子どもたちにしてみると、デジタル機器の利用について、大人から「あれもだめ!これもだめ!」と言われているようで煙たく感じるかもしれませんが、要は子どもたちに「スマホをうまく使って欲しい」のですよね。SNSだってやってかまわないし、YouTubeもいいチャンネルがたくさんあります。そのような中で「うまく」使って欲しいんですよね。
ガンホー出前講座の感想について
――なお、この日はガンホーが玉造中学校さんで出前講座を行いましたが、感想についてお聞かせください。
T先生:内部事情を知っているガンホーさんだから伝えられることがあると思いましたし、私自身とても勉強になりました。
O先生:誹謗中傷など、明確にやってはいけないものに対しては生徒側も理解はできていますが、「違法ではないが、リスクがある」グレーゾーンについてもお話いただき有難かったです。
- POINTまとめ
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- スマホの契約者は保護者なので、学校からは言いにくい点も
- そもそも「子どものスマホ」ではない認識を親子で持ちたい
- 違法でないなら、何をしてもOKという考え方は危険
- インタビュアー/ライター
石徹白 未亜 - いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂