親子でスマホ・ゲームお約束メイカー
インタビュー
2023年04月18日(更新日:2026年01月30日)

【専門家解説】SNS炎上と誹謗中傷からわが子を守る 告発・拡散の仕組みと対策

お調子者の子どもがSNSで悪ふざけ動画を投稿して大炎上……、やらかしかねないわ!

炎上を研究している先生に、SNSの炎上の仕組みと対策を聞いてきたゾイ!

もくじ
山口真一さん山口真一さん

1986年生まれ。博士(経済学・慶應義塾大学)。2020年より現職。専門は計量経済学、ネットメディア論、情報経済論等。NHK、日本経済新聞等のメディアにも多数出演・掲載。主な著作に『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)等がある。他に、東京大学客員連携研究員、早稲田大学ビジネススクール兼任講師、総務省・厚労省の有識者会議委員等も務める。

「子どものスマホデビューを考えているけど、SNSの投稿が炎上しないか心配」という親御さんも多いのではないでしょうか?子どもの顔写真や本名が晒され、「こいつを許すな」「拡散希望」という罵詈雑言が溢れたら……。想像するだけで血の気が引くような事態ですが、決して他人事ではありません。今回は、炎上のメカニズムに詳しい国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授の山口真一さんに、「なぜ炎上は起きるのか」「どうすれば防げるのか」、そして万が一炎上の当事者になってしまった時の「親の振る舞い」について伺いました。犯罪や損害賠償につながるなど、大きなトラブルにも発展しかねない「炎上」を防ぐために親が知っておくべき事とは何なのか、是非参考にしてみてください。

炎上のメカニズム~どんな投稿が、どうやって拡散する?~

文章、画像、動画と、SNSで個人が発信できる情報にはさまざまなものがありますが、毎日膨大な数が投稿されるなかで、なぜ特定の投稿だけがピックアップされ、炎上状態になってしまうのでしょうか。まずはその「着火点」について教えていただきました。

炎上する投稿の3大パターンは「悪ふざけ」「個人情報流出」「不適切な言動」

炎上する投稿の3大パターンは「悪ふざけ」「個人情報流出」「不適切な言動」

——SNS上では、どのような投稿が炎上しやすいのでしょうか。

山口:SNSの炎上で多いのは、大きく分けて次の3つのパターンです。

①悪ふざけ
2023年に回転寿司店で、テーブルの醤油さしを舐める動画を投稿した高校生が炎上したのは、まさにこのパターンですね。仲間内では「面白い」と感じていても、世間一般から見れば不衛生で、非常に不快な行為です。この事件は、一時店舗を運営する企業の株価にも影響を与える事態となりました。
②個人情報、プライバシーの流出
ホテルや飲食店でアルバイトをしている従業員が、「アイドルの○○が店に来た!」などとSNSに勝手に投稿してしまうケースです。これは顧客のプライバシーを侵害する行為であり、お店の信用問題に直結するため、即座に炎上します。
③不適切な言動
差別的な発言や、未成年による喫煙、飲酒画像などはSNS上で強い反感を買いやすく、格好の炎上材料となります。 「未成年だから許される」という甘えは、ネット社会では通用しません。

これらの炎上につながりやすいこの3つのパターンは、実は以前からあまり変化はありません。

炎上を加速させる「2つの拡散装置」

——不適切な投稿をしたとしても、フォロワー数人の目に触れるだけで終われば、ここまでの大騒動にはなりません。ではなぜ、一人の一般人の投稿が、全国規模にまで拡散されていくのでしょうか。

山口:SNSの投稿は、影響力のある人や組織に取り上げられることで、一気に炎上して拡散していきます。これには大きく2つあり、1つはテレビやウェブサイトなどのマスメディアです。もう1つは、急速に影響力を増している告発系、また炎上系とも呼ばれるインフルエンサーの人達です。特に近年では、脅威となっているのが後者です。

——回転寿司店でテーブルの醤油さしを舐める動画の件も、著名な告発系インフルエンサーが取り上げたことで一気に拡散しましたね。

山口:著名な告発系インフルエンサーが1回投稿すると、インプレッション数(SNS上で閲覧された回数)が数百万~一千万回を超え、制御不能なレベルで拡散されてしまいます。

告発系インフルエンサーには、気軽に情報提供できる?

——告発系インフルエンサーは、フォロワーや視聴者たちから情報提供を受けているケースも見受けられますね。

山口:はい。情報を提供する側の立場に立ってみても、告発系インフルエンサーには気軽に情報提供しやすいのでしょうね。 というのも、もし問題ある個人の動画や書き込みを見つけたとしても、それを「マスメディア(新聞、テレビ、雑誌など)に情報提供する」あるいは「警察に相談する」というのは、非常に勇気と手間がいる行動で、相当ハードルが高いですよね。
一方、告発系インフルエンサーは「YouTubeやTwitterなど、自分がいつも使っているサービスで人気がある人」ですから、より身近に感じるんですよね。「学校でこんな良くない投稿をしている子がいる」とか、「インターネット上で子どもの不適切な動画を見つけた」など、告発系インフルエンサーになら気軽に言いやすい、というのはあるのでしょう。
こうした気軽な「タレコミ」が、強大な拡散力を持つ告発系インフルエンサーの元に集まり、そこから一気に炎上が広がる仕組みが出来上がっているのです。

——告発系インフルエンサーという、マスメディア並みの影響力・拡散力があり、かつマスメディアよりも気軽に情報提供できる存在ができたことで、より「炎上しやすくなっている」とも言えるのですね。

「実名」「顔写真」もネットメディアは容赦なし?

「実名」「顔写真」もネットメディアは容赦なし?

山口:また、テレビや新聞、雑誌などのマスメディアが未成年の炎上を伝える際は、顔をぼかしたり、実名を伏せたりといった一定の配慮がなされますが、一部のネットメディアやSNS、YouTuberなどが伝える場合、そういった報道倫理や配慮が一切されないケースも多くあります。顔写真や本名などの個人情報がそのまま取り上げられることもあり、それがさらに炎上を加速させている面もあるでしょう。
ネットメディアもYouTuberも、売上を上げるためにページビュー(閲覧数)や動画の再生数を稼がないといけないのですが、「未成年が起こした炎上」は、大勢の人の興味を引きやすい話題なので、多くのメディアが取り上げます。そのため炎上も大規模化しやすく、結果として、顔写真や本名、学校名などの個人情報がそのまま拡散され、デジタルタトゥーとしても半永久的にネット上に残ってしまうのです。

——未成年の炎上をマスメディア、ネットメディアがこぞって取り上げ、ある意味「人気コンテンツ」になっている、というのはもう否定できない現実ですよね。

炎上を防ぐために親ができること

告発系インフルエンサーやネットメディアの台頭で、より炎上は過激化しています。そのような中で、親は子どもをどのように守っていけばいいのでしょうか。具体的な対策を伺いました。

「鍵アカウントだから大丈夫」「Instagramのストーリーズだから大丈夫」は大間違い!

——子どもの炎上を防ぐために親ができることとして、どのようなことがあるでしょうか。

山口:まず、「鍵アカウント(非公開のSNSアカウント)だから」「Instagramのストーリーズ(24時間で消える投稿)だから」といって、問題のある際どい投稿をしても大丈夫!なんてことは全くないと、きちんとお子さんに伝えることです。一度インターネットに上げたデータは、誰かに保存され、「一生消えないデジタルタトゥーとして残り続ける可能性がある」というリスクを、親子で共有する必要があります。

——確かに、子ども本人は「鍵アカウントで、フォロワーは友達しかいないから、ヤバい動画を流しても大丈夫!」と思っていても、そのフォロワーの友達が、絶対に告発系インフルエンサーに情報提供しない、なんて保証はどこにもないですよね。

炎上に便乗し誹謗中傷を投稿すると、「加害者」として訴えられるケースも

山口:さらに、炎上防止として、過去に起きた炎上事例を親子で話し合うことも有効です。炎上には、回転寿司店のケースのように「本人が炎上の当事者になる」以外にも、さまざまな事例があります。その中で、特に注意したいのが「誹謗中傷」の問題です。
例えば炎上に便乗して、当事者に対する誹謗中傷を繰り返し投稿した結果、当事者側から侮辱罪で訴えられてしまったというケースもあります。
また、炎上している当事者に対して誹謗中傷の書き込みをしている人の60~70%が、「当事者のやっていることが許せなかった」といった正義感を動機にしているという調査結果もあります。本人は「正当な批判」であると考え「誹謗中傷」だとは思わずにいることがすごく多いんです。
しかし、たとえ相手が悪いことをしていたとしても、過度な言葉の暴力は侮辱罪などの犯罪になり得ます。そんな事態を防ぐためにも、「正義感の暴走」が持つ、誹謗中傷のリスクについても親子で話し合う必要があります。

炎上対策 ~万が一炎上してしまったら~

炎上を未然に防げれば最善ですが、どれほど注意していても、事故は起こり得ます。子どもがすでに炎上の当事者になってしまった場合、親はどう対処すればいいのでしょうか。

炎上時の原則:ネット上の攻撃は基本「無視」、関係者には「即謝罪」を

——もし自分の子どもが炎上してしまったときは、どうすればいいでしょうか。

山口:炎上の当事者になってしまった場合、子ども自身も当然悩んでいるはずなので、まずはしっかり話を聞いてあげたいですね。
対応として、ネットで攻撃してくる人に対しては、どんな内容であっても一切反論しないことです。攻撃してくる人は、基本的に議論するつもりはさらさらなく、ただ叩きたいだけ、「炎上」という祭りを楽しみたいだけなんです。そのような状態で、どんなに反論しても火に油を注ぐだけなので、「無視」が一番です。
ですが、子どもが明らかに何か悪いことをした、社会通念上許されないことをした場合は、迷惑をかけた「関係者」への謝罪は迅速にした方がいいですね。回転寿司店の騒動でも、早い段階で親が子どもを連れて店舗に謝罪に行ったと報じられています。これは法的にどう、ということではないですが、それでも炎上対策という点では明らかにやってよかった事だと思います。誠意ある対応を世間に示すことで、それ以上の炎上を防ぐ効果があります。
そして、保護者の方も、炎上なんて経験したことがないでしょうから、非常に不安だと思います。お一人で抱え込まず相談窓口を活用して欲しいですね。たとえば一般社団法人セイファーインターネット協会では、「誹謗中傷ホットライン」を設け、相談先の紹介などを行っています。インターネットのトラブルは専門的な知識が必要な場合も多いため、外部の力を借りることも解決策の一つです。

※一般社団法人セイファーインターネット協会ホームページ内 誹謗中傷ホットライン

炎上を防ぐために必要な、親子の「約束」とは?

炎上を防ぐために必要な、親子の「約束」とは?

——ガンホーが提供している「お約束メイカー」の感想はいかがでしょうか。

山口:子どもと一緒に約束を作れることがとてもいいですね。子どもが納得しないで、親側が一方的に押し付けたものだと、子どもは破ってしまいますから。

——子どもの炎上を防ぐため、また、炎上の被害を最小限に抑えるために、効果的な親子の「約束」を作るとしたら、どんな約束があるでしょうか?

山口:「どんなことがあっても助けるので、困ったときはすぐ相談してほしい」という約束を親子で結びましょう。子どもが炎上した際、本人は恐怖と不安で押し潰されそうになり、「親に知られたら怒られる」と思い詰めてトラブルを隠そうとしてしまいます。事態を隠蔽することは、状況を悪化させることにも繋がります。親としては、普段から「何があっても味方だ」と伝えておくこと。これこそが、子どもがトラブルに陥った時、すぐに親を頼れるようになり、早期解決にもつながるきっかけになります。

POINTまとめ
  • マスメディア、告発系インフルエンサーが取り上げることで炎上は急速に拡散する
  • 「正義感による正当な批判」が、「単なる誹謗中傷」になっていないか注意する
  • 親は子どもに「どんなことがあっても助ける」と日頃から伝えておきたい

POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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