親子でスマホ・ゲームお約束メーカー
インタビュー
2023年4月18日

わが子が炎上しないために親が心がけたい事を知っておこう

お調子者の子どもが悪ふざけ動画を投稿して大炎上……、やらかしかねないわ!

炎上を研究している先生に、炎上の最新動向を聞いてきたゾイ!

もくじ
山口真一さんプロフィール山口真一さんプロフィール
1986年生まれ。博士(経済学・慶應義塾大学)。2020年より現職。専門は計量経済学、ネットメディア論、情報経済論等。NHK、日本経済新聞等のメディアにも多数出演・掲載。主な著作に『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)等がある。他に、東京大学客員連携研究員、早稲田大学ビジネススクール兼任講師、総務省・厚労省の有識者会議委員等も務める。

「スマホデビューを考えているが、お子さんのSNS投稿が炎上しないか心配」という親御さんも多いのではないでしょうか?今回は、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授の山口真一さんに炎上の仕組みと、親ができる対策について聞いてきました。犯罪や損害賠償につながるなど、大きなトラブルにも発展しかねない炎上を防ぐために親が知っておくべき事とは何なのか、是非参考にしてみてください。

炎上のメカニズム~どんな投稿が、どうやって拡散する?~

つぶやき、画像、動画と、ネットで個人が発信できる情報にはさまざまなものがありますが、どのような投稿が炎上につながりやすいのでしょうか。

炎上するのは「悪ふざけ」「個人情報流出」「不適切な言動」

――ネット上では、どのような投稿が炎上しやすいのでしょうか。

山口:SNSの炎上で多いのは次の3つのパターンです。
まず「①悪ふざけ」です。2023年に回転寿司店でテーブルの醤油さしを舐める動画を投稿した高校生が炎上したのは、まさにこのパターンですね。
次に「②個人情報、プライバシーの流出」です。ホテルや飲食店でアルバイトをしている従業員が「アイドルの○○が店に来た!」などとSNSに投稿してしまうケースです。
最後の「③不適切な言動」は、差別的な発言や、未成年の場合喫煙、飲酒画像などですね。 炎上につながりやすいこの3つのパターンは、以前からあまり変化はありません。

炎上の種類

炎上を広めていく2つの存在

――そのような投稿が、どのようにして全国規模にまで広がっていくのでしょうか。

山口:影響力のある人や組織に取り上げられることで、一気に炎上し、拡散していきます。これは大きく2つあり、1つはテレビやウェブサイトなどのメディア、もう1つが最近増えてきた告発系、また炎上系とも呼ばれるインフルエンサーの人達です。

――回転寿司店の件も、著名な告発系インフルエンサーが取り上げたことで一気に拡散しましたね。

山口:著名な告発系インフルエンサーが1回投稿すると、インプレッション数(SNS上で見られた回数)が数百万~一千万回を超える、というのは今やよくあることです。

告発系インフルエンサーには、気軽に情報提供できる?

――告発系インフルエンサーはフォロワーや視聴者たちから情報提供を受けているケースも見受けられますね。

山口:はい。そして情報を提供する側の立場に立ってみても、告発系インフルエンサーには気軽に情報提供しやすいのでしょうね。 というのも、もし問題ある個人の動画や書き込みを見つけたとしても、それを「メディア(新聞、テレビ、雑誌)に告発する」あるいは「警察に相談する」というのは、相当ハードルが高いですよね。
一方、告発系インフルエンサーは「YouTubeやTwitterなど、自分がいつも使ってるサービスで人気がある人」ですから、身近なんですよね。「学校でこんな良くない投稿をしている子がいる」とか、「ネット上で子どもの不適切な動画を見つけた」などを気軽に言いやすい、というのはあるでしょう。

――告発系インフルエンサーという、メディア並みの影響力があり、かつメディアよりは気軽に情報提供できる存在ができたことで、より「炎上しやすくなっている」とも言えるのですね。

「実名」「顔写真」もネットメディアは容赦なし?

山口:また、テレビや新聞、雑誌などのマスメディアが未成年の炎上を伝える際は、顔はぼかしたり、本名は報じたりしないなど一定の配慮がされますが、一部のネットメディアやSNS、YouTubeなどの場合、そういった配慮が一切ないケースも多く、写真、名前などの個人情報がそのまま取り上げられ、それがさらに炎上を加速させている面もあるでしょう。
ネットメディアもYouTuberも売上のためにページビュー(閲覧数)や動画視聴数を稼がないといけないのですが、「未成年が起こした炎上」は興味をひきやすい話題なので、多くのメディアが取り上げるんですね。それにより炎上が大規模化しやすくなっています。

――未成年の炎上をマスメディア、ネットメディアがこぞって取り上げ「人気コンテンツ」になっている、というのはもう否定できない現実ですよね。

山口さんインタビュー風景

炎上を防ぐために親ができること

告発系インフルエンサーやネット系メディアの台頭で、より炎上は過激化しています。そのような中で、親は子どもをどのように守っていけばいいのでしょうか。対策を伺います。

「鍵アカウントだから大丈夫」「Instagramストーリーズだから大丈夫」は大間違い!

――子どもの炎上を防ぐために親ができることして、どのようなことがあるでしょうか。

山口:まず「鍵アカウント(非公開のSNSアカウント)だから、Instagramストーリーズ(24時間限定公開)だから、どんなに問題のある、きわどい投稿をしても大丈夫!」なんてことは全くない、と、きちんとお子さんに伝えることでしょうね。

――子ども本人は「鍵アカウントで、フォロワーは友達しかいないからヤバい動画を流しても大丈夫!」と思っていても、そのフォロワーの友達の1人が、告発系インフルエンサーに情報提供しない、なんて保証はどこにもないですよね。

炎上に便乗し誹謗中傷を投稿すると訴えられるケースも

山口:あと炎上防止として、過去の炎上事例を親子で話し合うことも有効です。炎上には、回転寿司店のケースのように「本人が炎上の当事者になる」以外にも、さまざまな事例があります。
例えば炎上に便乗し、当事者に対する誹謗中傷を繰り返し投稿し、侮辱罪で訴えられたりするケースもあります。
炎上している当事者に誹謗中傷を寄せる人の60~70%が「許せなかった」といった正義感で参加していたという調査結果もあります。本人にしてみたら「誹謗中傷」だと思わず「正当な批判」であると思っていることがすごく多いんですね。「正義感」には要注意です。

炎上対策 ~もう炎上してしまったら~

炎上を未然に防げれば最善ですが、子どもがすでに炎上の当事者になってしまったらどうすればいいのでしょうか。

炎上時の原則:ネットは基本無視、関係者には謝罪を

――それでも自分の子どもが炎上してしまった、というときはどうすればいいでしょうか。

山口:子どもも当然悩んでいるはずなので、まずは話を聞いてあげたいですね。
対応として、ネットで攻撃してくる人に対しては反論しないことです。攻撃者は、基本的に議論するつもりはさらさらないんですね。どんなに反論しても火に油を注ぐだけなので、無視が1番です。
ですが、子どもが明らかに何か悪いことをした、社会通念上許されないことをした場合は、「関係者」への謝罪は迅速にした方がいいですね。回転寿司店の件も早い段階で親が子どもを連れて店舗に謝罪に行ったと伝えられています。これは法的にどう、ということではないですが、それでも炎上対策という点では明らかにやってよかった事だと思います。
そして、保護者の方にとっても、炎上なんて経験したことがないでしょうから、非常に不安だと思います。保護者の方も、お一人で抱えず相談窓口を活用して欲しいですね。たとえば一般社団法人セイファーインターネット協会では、「誹謗中傷ホットライン」を設け、相談先の紹介などを行っています。

※一般社団法人セイファーインターネット協会ホームページ内 誹謗中傷ホットライン

炎上を防ぐために必要な「約束」とは?

――お約束メイカーについてはいかがでしょうか。

山口:子どもと一緒に約束を作れることがとてもいいですね。子供が納得しないで、親側が勝手に押し付けたものだと子どもは破ってしまいますから。

――子どもの炎上を防ぐため、また、炎上の被害を最小限に抑えるために効果的な親子の「約束」を作るとしたら、どんな約束があるでしょうか?

山口:「どんなことがあっても助けるので、困ったときはすぐ相談してほしい」という約束を親子で結びましょう。子どもは怒られることを恐れて、トラブルほど隠そう、隠そうとしてしまいますから。

炎上を防ぐために必要な「約束」とは?
POINTまとめ
  • メディア、告発系インフルエンサーが取り上げることで炎上は拡散する
  • 「正義感による正当な批判」のつもりが「単なる誹謗中傷」になっていないか
  • 親は子どもに「どんなことがあっても助ける」と日ごろから伝えておきたい

POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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