親子でスマホ・ゲームお約束メーカー
インタビュー
2023年2月21日

没収よりもゲームで健康的な生活を! 子どもの頃からゲームに時間を費やしてきたゲームの家庭教師サービスの代表が語るゲームが子どもの成長に与えるプラスの影響とは?

ゲームばかりしている子どもからゲームを取り上げてしまっていいのかな?

単純に取り上げてしまうのは良くないのう。学生時代をゲームに費やし、高校生で起業した小幡和輝さんにゲームと子どもの成長について話を聞いてきたぞい!

もくじ
小幡和輝さんプロフィール小幡和輝さんプロフィール
起業家、作家。高校3年で起業しSNSマーケティングやイベント製作などの事業を行う。 2019年10月より、日本初、ゲームのオンライン家庭教師『ゲムトレ』を立ち上げ、2021年に株式会社カヤックへ株式売却等を行う。 世界経済フォーラムより、世界の若手リーダー『GlobalShapers』に選出される。
https://twitter.com/nagomiobata
https://www.watanabepro.co.jp/mypage/61000053/

ゲームで子どもの成長をサポートすることもできる

ゲームを禁止したことで子どもとうまくコミュニケーションがとれなくなってしまったご家庭も多いのではないでしょうか? 子どもたちにとって今やゲームがある環境は当たり前。ゲームを遊んでいないと仲間外れにされてしまうなどといったことも……。それなら、ゲームが子どもに与える悪影響にばかり耳を傾けるのではなく、良い影響についても理解し、親がゲームで子どもの成長をサポートできないものでしょうか? ゲーム専門の家庭教師「ゲムトレ」代表の小幡和輝さんに詳しく伺ってきました。

学校が嫌でずっと家でゲームをしていました

――小幡さんは子どもの頃、どのぐらいゲームを遊ばれていたのでしょうか?

小幡:小学校1年生のときから1日10時間ぐらいはゲームをしていたと思います。学校が嫌で、ずっと家にいたので他にやることもないからゲームをしていた感じです。

――小幡さんは学校のどんなところが嫌だったのでしょうか?

小幡:授業も楽しくなかったし、人付き合いも苦手だったので友達もできませんでした。いじめられてもいたので、学校に行くことが辛くて、「学校に行きなさい!」と叱ってくる親とはいつも対立していましたね。それでも僕は学校に行かなかったので、めちゃくちゃケンカになって、最終的には「もう勝手にしろ」と匙を投げられたという感じです。

――小幡さんが不登校になってからの反応はどうでした?

小幡:学校に行かなくなってから僕はあきらからに明るくなったので、そこは親も安心してくれたんじゃないかと思います。小学校4年生になってからはフリースクールにも通うようになって、そこで友達ができたことも大きかったと思います。フリースクールでもゲームばかりしていたのですが、ゲームを通して友達もできたので、ゲームをやっていてよかったなぁと思いました。

ゲームを没収することで心のよりどころがなくなることも……

自著やSNSで「不登校は不幸じゃない」というメッセージを発信し、全国を回って不登校の子どもや親御さん向けの講演会を開催されるようになった小幡さん。講演会を開催される中で、小幡さんはあらためて「子どもに居場所を作ってあげることの重要性を感じた」と言います。

自分の好きなことについて話せる居場所が大事

小幡:講演会をしている中で感じたのは、不登校の子どもたちの多くがゲームを心のよりどころにしているということです。参加してくれた子どもたちとゲームの話をするとめちゃくちゃ盛り上がるんです。そして、その様子を見た親御さんたちは「こんなに明るく話している姿は久しぶりに見た」と、すごく驚かれます。でも、それって当たり前のことなんですよね。誰だって自分の好きなことについて話せる場所は居心地がいいものですし、逆に自分が好きなものを否定されるのは辛いはずです。

小幡和輝さんインタビュー風景

心のよりどころがなくなると無気力になり、体を壊してしまうことも

――ゲームに理解がない親御さんは、子どもがゲームばかりしていることを不安に思って、ゲームそのものを禁止したり、とりあげて没収したりすることもあるようですが……。

小幡:ゲームを心のよりどころにしている子からゲームをとりあげてしまうのは最悪な選択肢だと思います。学校に居場所がなくて、親も自分を理解してくれないから家にも居場所がなくて、ゲームが唯一の心のよりどころだったのに、それまで没収してしまったらどうなると思います?

――無気力になって、何もやる気が起きなくなってしまいうそうですよね。

小幡:そうなりますよね。他人とコミュニケーションをとる気もなくなりますし、生きること自体がどうでもよくなってしまい、体を壊すことだってありえます。親御さんだって自分の子どもがそんな状態になることを望んではいないはずです。だから、まずは子どもの居場所を作ってあげることが大切なんです。僕の場合は、フリースクールに通っていましたが、まだまだそういう場所は不足していると思います。そこで、僕はゲームの家庭教師サービス「ゲムトレ」を始めることにしたんです。

心のよりどころがなくなると無気力になり、体を壊してしまうことも

ゲームが子どもの成長に与えるメリットは?

子どもたちの居場所を作るためにゲームの家庭教師サービス「ゲムトレ」をはじめられた小幡さんの活動について、詳しく伺いました。

ゲームを頑張って良かったと思える社会をつくる

――あらためて「ゲムトレ」の理念を教えていただけますか??

小幡:「ゲムトレ」の理念は「ゲームを頑張って良かったと思える社会をつくること」です。僕自身、ゲームを通して友達ができたし、高校生の頃には好きだったカードゲームの大会を手伝ったことがきっかけでイベント会社を起業することができました。ゲームを頑張っていたおかげで、今の僕があると思っています。そんな想いを社会全体に広めていきたくて「ゲムトレ」を立ち上げたという側面もあります。

――ゲームが好きな子どもたちの居場所を作りつつ、ゲームを頑張ったことが認められる社会を作ろうとされているんですね。

小幡:はい。ゲームが好きな子どもたちが集まれる居場所でありつつ、そこにはゲームが上手い先生(トレーナー)がいて、ゲームを頑張ると自分を認めてくれる。「ゲムトレ」はそんな場所でありつつ、ゲームのプロを目指せる場所でもあります。プロゲーマーの世界はまだまだ厳しくて、ゲームの腕前だけで生活してくのは、プロ野球の選手になるよりも難しいのが現状です。それでも、プロを目指して頑張ったことは決して無駄にはなりませんし、ゲームを真剣にプレイすることで得られるメリットもたくさんあります。

――どんなメリットが得られるのでしょうか?

小幡:コミュニケーション能力を養うことができるのは大きなメリットですね。ゲームが好きな友達もできますし、チームで対戦するゲームの場合は、バスケットボールやフットサルのように相手と対戦しながら仲間同士でお互いに指示を出しあうことも大事なので、コミュニケーションの取り方も身に付きます。トレーナーは「ゲムトレ」に来ている子たちより少しだけ年上のお兄さんたちなので、トレーナーとのコミュニケーションで礼儀作法なんかも身につくと思います。

ゲームを頑張って良かったと思える社会をつくる

楽しくゲームを遊ぶためなら規則正しい生活もできる

ゲームを通してコミュニケーション能力が養えたとしても、運動不足や睡眠不足に繋がるのではないかと危惧される親御さんも多いのではないでしょうか? 小幡さんに子どもたちの運動不足や睡眠不足を解消するために行われていることについて伺いました。

ゲームが早起きのモチベーションになる

小幡:僕は不登校だった頃に1日10時間ぐらいゲームをしていましたが、昼夜逆転するようなことはありませんでした。朝早く起きて、フリースクールに行って友達とゲームをすることを楽しみにしていたので、夜はしっかり寝て、早起きして少し遠くのフリースクールに通っていたので、運動不足になることもなかったですね。

――早く起きて友達とゲームをすることをモチベーションにされていたんですね。

小幡:ゲームに理解がない親御さんは「ゲームばかりしている子は睡眠不足になる」と思われているかもしれませんが、「朝からゲームを遊んだほうが楽しい」という環境があれば、夜はしっかり寝て、早起きしてゲームを遊ぶようになります。子どもが夜にゲームを遊ぶのは、例えば「夜なら親が寝ているから注意されない」とか「オンラインの対戦ゲームは夜じゃないと相手がいない」とか様々だと思います。なので、そういった環境を変えてあげれば、規則正しい生活を送らせることは難しいことではありません。

小幡和輝さんインタビュー風景

昼夜逆転を解消して健康的な一日を送ることが第一

――「ゲムトレ」では朝からゲームをプレイする活動もされているそうですね。

小幡:「朝からゲームをすることで脳を活性化して、健康的で充実した一日を送って欲しい」という想いから、「ゲムトレ」では、朝ゲーという活動をしています。みんなで朝からゲームをすれば「夜中じゃないと対戦相手がいない」という障害も排除できますし、ゲームをするために朝早く起きるという習慣が身に付けば、一日を有意義に過ごすことができると思います。こういったお話をすると、どうしても「朝は学校に行かせなきゃ」と思われてしまう親御さんも多いと思います。でも、もしお子さんがゲームばかりしていて昼夜逆転生活を送っているようでしたら、朝から無理やり学校に行かせるよりも、まずは昼夜逆転生活をなんとかして、健康的な生活に戻してあげることが大事なのではないでしょうか。

ゲーム家庭教師サービス代表から見た『お約束メイカー』は?

最後に、ガンホーの『親子でスマホとゲームのお約束メイカー』について小幡さんに感想を伺いました。

子どもたちが自発的にルール(約束)をつくれるようになるのが理想

小幡:良い取り組みだと思います。ゲームについて親御さんが一方的に決めた約束は子どもにとって足かせでしかないと思いますが、一緒に約束を作ることで子どももある程度、納得することはできると思います。それでも、親御さんの根底に「ゲームは悪いもの」という考えがあると、せっかく作った約束も子どもは破ってしまうと思います。ゲームを心のよりどころにしている子どものことを理解してあげることが大事です。僕らが取り組んでいる朝ゲーもそうですが、「朝から楽しくゲームをするために夜はしっかりと寝る」といった約束を子どもたちが自発的につくれるようになるのが理想だと思います。

POINTまとめ
  • ゲームが子どもに居場所を与えてくれる
  • ゲームを取り上げることで無気力になる
  • ゲームがコミュニケーション能力を養う
  • ゲームが子どもの将来に繋がることも
  • ゲームが早起きのモチベーションになる
  • 子どもが自発的にルール(約束)を作るのが理想

POINTを意識して約束を作ってみる

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斎藤ゆうすけインタビュアー/ライター
斎藤 ゆうすけ
さいとう ゆうすけ。ライター・放送作家。大学在学中よりゲームメディアで記事の執筆を行い、現在はテレビやラジオの放送作家として活動。バンタンゲームアカデミーおよび東放学園映画専門学校にて、講師としてゲーム関連の講義も担当しており、バンタンゲームアカデミー高等部eスポーツ専攻ではプロゲーマーを目指す高校生向けにネットリテラシーの講義も行う。活動に関する告知はTwitter『斎藤ゆうすけ(アニゲウォッチャー)』にて発信中。
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