親子でスマホ・ゲームお約束メーカー
インタビュー
2023年2月13日

子どもがゲームばかり。「やめなさい!」以外の上手な終わらせ方とは?

時間の約束を決めたのに子どもがゲームを終わらせない!キイ―!必殺・電源オフよ!

ムム……、あまり良い結果にならんかもしれんゾイ……

もくじ
森山沙耶さんプロフィール森山沙耶さんプロフィール
臨床心理士・公認心理師。ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)所長。特定非営利活動法人ASK認定 依存症予防教育アドバイザー。 ネット・ゲーム依存を専門に当事者やその家族に向けて認知行動療法に基づく心理カウンセリングを行うとともに全国の学校、自治体、企業等を対象に予防啓発のための講演・研修の講師としても活動。
ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)ホームページ
Yahoo!ニュース個人

ほかに興味がなく、ゲームばかりの我が子が心配

子どもがゲームばかりしていて他の事に興味がなく、心配な親御さんもいると思います。今回はネットゲームの依存に詳しい臨床心理士の森山 沙耶さんに、お子さん自身がゲームと上手に付き合うためのコツや考え方を伺ってきました。

ゲームをやめない子どもに対し「電源を切る」はあり?なし?

ゲームをなかなかやめないお子さんに対してゲーム機の「電源を切る」ことを選択した親御さんも多いかもしれません。どう対処すればいいか伺いました。

「ゲームの電源を切る、取り上げる」は最悪の事態を招くことも

――時間など約束を決めているのに、お子さんがゲームをなかなかやめてくれない場合、保護者はどのように声をかけたらよいのでしょうか?

森山: 親子喧嘩の末、親がゲーム機の電源を切ってしまったり、ゲーム機を取り上げてしまったり、というのはよくあるケースですが、これは避けた方がいいと伝えています。逆効果になってしまうケースも少なくないためです。

このときのお子さんの状況を想像してほしいのですが、そもそもゲームは興奮しやすいものですよね。

――熱狂、熱中、興奮、集中しやすいものですね。

森山: 興奮している状況でその対象を取り上げられたら、イライラしますよね。最悪、親に対し手が出てしまうケースがあり、警察、児童相談所が介入することになったケースもあります。暴力につながる可能性がある場合は安全が第一ですので避けなければいけません。

森山沙耶さんインタビュー風景

子どものゲームについて親は「我慢する」しかない?

――まずは暴力という最悪の結果になることを避けると。しかし、親も我慢ばかりではイライラしてしまいそうです。

森山: 親御さんから「我慢しなきゃいけないんですか?」と尋ねられることがよくありますが、自分の気持ちを我慢する必要はないと思います。「我慢だ」と思うと親御さんも辛いですよね。伝え方などを工夫して親子双方が楽になれる方向を目指したいですね。

――どういった方法があるでしょうか。

森山: まず環境として、特に子どもは熱中すると時間の感覚がなくなりがちです。自分でも確認できるようにタイマー、時計を見えるところに置いておきましょう。
次に親からの声がけですが、ゲームを否定しているような受け取られ方にならないよう工夫したいですね。主語を親御さん自身にするといいですよ。子どもを主語にした「(子どもであるあなたが)ゲームをやめなさい」ではなく、「(親である私が)夕食ができたから一緒に食べたい」とか「ゲームの約束を守ってくれると(親である私が)安心する」と伝えられると言われた方も「(あなたが)ゲームをやめなさい」というよりは、受け入れやすくなると思います。
そして、「ゲームをやめる、ゲーム時間を減らす」を目的にするのでなく、ゲームによって起こっている問題、例えば成績が下がる、睡眠不足になっている、対人関係が希薄になっている、家族関係が悪化しているといったことをどう解決していくかにフォーカスを当てることも大切ですね。

――いっしょくたに「ゲームやネットが問題だから没収したり、減らしたりすればいい」ではなく、ネットやゲームにより、生活にどのような問題が起きているのかを細やかに、注意深く見ていくことが大切なのですね。

子どものゲームについて親は「我慢する」しかない?

ゲーム以外に興味ある事をどうやって見つければいいか

ゲームに依存してしまう原因や、子どもが「ゲームだけ」にならないためにどうすればいいのか伺いました。

「気晴らしがそれでしかできない」=依存

――ゲーム依存の「原因」をどのように考えていますか?

森山: 原因は一つには絞れず、大変難しい質問ではありますが、ただ、依存に至るメカニズムの中で言われていることの中には、ゲームが「不安やストレスを緩和する唯一の手段」になると手放しにくくなってくる、というのはあります。

――問題なのは「ゲームそのもの」ではなく、ゲームが「不安やストレスを緩和する唯一の手段になっていること」なんですね。

森山: はい。なので、自分自身の感情のコントロール、ストレス対処の方法、気晴らしをいくつも持っておくことが重要です。

子どもが興味を持っているヒントはゲームやYouTubeにあり!

――気晴らしをゲーム以外にも持っておく、ということですが、気晴らしを現状ではゲームやネットにしかそれを見いだせないお子さんに対し、どう親はサポートしていけばよいでしょうか。

森山: お子さんが好きになるゲームや、ネットのコンテンツで興味関心のパターンが見えてきますよね。シューティングや戦闘ものが好きなお子さんはハラハラ、ドキドキ、スリルを求めていたり、「マインクラフト」のようなゲームが好きなら自分で想像した事を作り上げる事に達成感を求めていたりするのでしょう。チームプレイが好きなら、人とつながっていたい、ということが読み取れます。ゲームに限らず、好きなYouTuberや漫画、アイドルの推し活でも、同じことが言えますよね。

――子どもが好きでしている遊びの中に、そのお子さんを知るヒントがあるということですね。

森山: はい。ですから、お子さんがゲームやネットに熱中しているときに、親御さんは「どうせ遊びなんでしょ」で終わりにせず、スリルを求めるタイプならこれはどうか、とか、人とつながることで安心感を得られるならこれはどうか、など、お子さんの興味関心を広げるためのヒントとして、お子さんが好きなネットやゲームを活用されると良いと思います。

子どもが興味を持っているヒントはゲームやYouTubeにあり!

ゲームやネット依存を防ぐ約束の作り方

依存とは何か、そして依存を防ぐ方法について伺ってきましたが、最後に親子のゲームのいい約束の結び方について伺いました。

「ゲームは●時間まで」ではない方がいいゲームもある?

――ゲーム利用について親子で約束を作るときのポイントはありますか?

森山: ゲームによっては時間で決めたほうがいいものと、バトル回数などの回数で決めたほうがいいものもありますよね。お子さんのゲームを教えてもらいながら一番キリのいい約束を見つけていくのがいいと思います。

親の押し付けではなく、本人が辞めることを自分から選択できるようにサポートしていきたいですね。私も7歳、4歳の子どもがいますが、自分たちで見る動画の本数を決め、その後は終了ボタンを子ども自身に押させています。自分で終了ボタンを押せた、という達成感を子ども自身で育めると良いですね。子どもは認められたい、褒めてもらいたいという感情を持っているので、それを伸ばしてあげたいですね。

――お約束メイカーの感想を教えてください。

森山: 約束は親子で一緒に決めることが最も有効であるといわれている中で、お約束メイカーは、言い争うなど険悪な雰囲気になることなく、ポジティブに話し合うことを助けるツールになると思いました。
「約束を作る」とゲームをクリアしたような達成感も感じられるように工夫されているので、親子にとって、約束を作るというプロセスが億劫なことから良い経験としてイメージが変わるのではないでしょうか。

森山沙耶さんインタビュー風景
POINTまとめ
  • 約束を守らないから電源ブチっ、では、お子さんもブチ切れる?
  • 親だって我慢しなくていい、コミュニケーションを工夫しよう
  • 子どもが好きなゲームには、子どもの興味関心のヒントがいっぱい!

POINTを意識して約束を作ってみる

この記事もオススメ「ゲーム×医療」!? “健康的な” ゲームライフとは?
子どもがゲームを健康的に遊ぶ方法について、実際のお医者さんが創設した一般社団法人Dr.GAMESの近藤慶太さんと阿部智史さんに子どもが健康的にゲームを遊ぶコツを伺ってきました。
石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
twitter
facebook
LINE