親子でスマホ・ゲームお約束メーカー
インタビュー
2022年10月31日

 「ゲーム×医療」!? “健康的な” ゲームライフとは?

「ゲームは健康によくない」それって本当?

そうとは限らんぞい! 生粋のゲーマーでもあるお医者さんにゲームと上手につきあうコツを聞いてきたぞい!

もくじ
近藤慶太さんプロフィール近藤慶太さんプロフィール
一般社団法人Dr.GAMES代表理事。医師。総合診療専門医。家庭医療専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。日本医師会認定健康スポーツ医。令和2年度ゲーム・インターネット依存症治療指導者養成研修修了。学生時代に謎解きイベント製作サークルを立ち上げ、多くの謎解きイベントを製作。Dr.GAMESでも医学知識を楽しみながら学べる『病気がわかる謎解きゲーム ナゾピタル』を製作。家庭医として患者の性別、年齢、臓器にとらわれない幅広い診療をする傍ら、地域の小中学校に『ゲームとの正しい付き合い方』の出張授業を展開中。
阿部智史さんプロフィール阿部智史さんプロフィール
Dr.GAMES理事。医師。家庭医療専門医・指導医。日本内科学会認定内科医。大学病院の総合内科に所属して内科診療や学生指導をしながら、クリニック経営もしている。過去にゲーム依存状態になって大学受験を諦めた経験を持つが、克服して医学部へと進学した。その経験をもとにゲームで困っている人へに医療を届けたいと考えており、近藤とDr.GAMESを設立。趣味はゲーム。複数のオンラインゲームにて全国ランキング1位の経験を持つ。

どうせ遊ぶならゲームも健康的に遊んでほしい

現代は、ゲームをさせないで子どもの成長を見守るというのがなかなか難しい世の中。「どうせゲームで遊ぶなら健康的に遊んでほしい」と思う親御さんも多いのではないでしょうか?「ゲームを健康的に遊ぶコツがあるなら是非知りたい!」という事で今回は、実際のお医者さんとゲームクリエイターが創設した一般社団法人Dr.GAMESの近藤慶太さんと阿部智史さんに「子どもが健康的にゲームを遊ぶコツ」を伺ってきました。

Dr.GAMESってなに?

医療×ゲームで人々を幸せに

――まずはDr.GAMESがどんな団体なのか教えてください

近藤 Dr.GAMESは医師や救急看護師、薬剤師といった医療職とゲームクリエイターによって構成されています。共通項はみんなゲームが大好きということですね。

阿部 「医療×ゲームで人々を幸せに」というコンセプトで、ゲームと医療の掛け合わせによって、皆様の健康に寄与することを目的に活動しています。

近藤慶太さんインタビュー風景

子どもの頃はゲームばかりで失敗した事も

――阿部さんは、ゲームの大会で活躍されていたそうですが、子どもの頃にゲームで失敗した経験はありますか?

阿部 たくさんありますよ。僕の家は両親が厳しかったので、最初にゲーム機を買ってもらった頃は、1日30分という約束でした。後に1時間に延ばしてもらいましたが、それでも全然満足できなくて、親に隠れて携帯ゲーム機で遊ぶようになったんです。寝る前に布団にもぐって長時間遊んでしまい、寝不足で学校に行った事もあります。

――布団にもぐって夜中遊ぶのは健康にも良くなさそうですね。

阿部 そうですね。あと、当時の携帯ゲーム機は乾電池で動いていたんですが、乾電池をどう手に入れるかも問題でした(笑)。小遣いだけでは足りず、食事代も使ってしまい、ご飯を食べずに過ごした事もあります。

経験を活かしてプロゲーマーの健康をサポート

――子どもの頃、ゲームに熱中しすぎてしまった経験もDr.GAMESの活動に反映されているのでしょうか?

阿部 子どもの頃もそうですし、大会に参加していた頃もそうだったのですが、ゲーマーは熱中してしまうと、どうしても睡眠時間を削ってゲームをしたり、食事がおろそかになったり、運動不足になってしまいます。eスポーツという概念が生まれて、プロゲーマーが活躍するようになった現在においても、こういった健康問題に対する意識は根付いていないと思います。そういった現状を変えたいという想いがDr.GAMESの設立につながりました。

ゲームばかりの子どもとどう接したらいいの?

厳しい親御さんに隠れて携帯ゲームで遊んでいたという阿部さん。「健康的ではなかった」とのことですが、親御さんはゲームばかりしている子どもにどう接するのが良いでしょうか? 子どもの健康を守るために作るべきルールについて伺いました。

子どもが遊んでいるゲームを理解する事から始めましょう

――ゲームばかりしている子どもの健康状態を不安に思う親御さんも多いと思いますが、親子でどんな約束を作るべきなのでしょうか?

近藤 まずはお子さんが遊んでいるゲームについて、しっかり理解しておく事が大事です。お子さんが対戦ゲームで遊んでいる場合、「時間」で区切ってしまうと、対戦中に「時間だからゲームを止めなさい」と言っても、子どもは聞き入れづらいと思います。課金についても同様です。「課金は良くない」と決めつけるのではなく、「課金したい」という子どもの気持ちを理解して、お金の大切さや、決められたお小遣いの中でお金をどう使うべきかといった点について、親子で話し合いをしていただければと思います。

近藤慶太さんインタビュー風景

子どもを放っておくのも問題です

――ゲームをきっかけに親子で話し合う事が大事なんですね。

近藤 非常に重要です。最近はゲームに理解のある親御さんも増えてきていると思いますが、ゲームに抵抗がないからといって、ゲームばかりしている子どもを放っておくのも良くありません。ゲームに熱中してくれる事で「手がかからず楽になる」という面もあるとは思いますが、健康面や課金トラブルなどの問題もありますので、子どもとゲームの関係にしっかりと目を向けていただければと思います。 例えば、親御さんが子どものゲーム機に課金の制限をかけたりできる「ペアレンタルコントロール」という機能もあります。子どもとゲームについて話し合う時間をとるのが難しい場合は、そういった機能を活用してみてもいいと思います。

ゲームは健康に悪いって本当?

子どもが健康に暮らすためには、親子で約束を作ったり、ペアレンタルコントロール機能を活用したりして、ゲーム機に制限をかける事が重要とのことですが、そもそもゲームは健康に悪いものなのでしょうか? 

ゲームは視力の低下につながると言われていますが……

――ゲームばかりしている子どもの健康について考えた時、親御さんが最初に気にされるのは視力の低下だと思いますが、実際視力の低下につながるのでしょうか?

阿部 実は「ゲームばかりしていると視力が下がる」という証明はできていないんですよ。

近藤 視力低下とゲームの因果関係が証明されていないというのが正しい言い方かなと思います。ゲームを長時間遊んでいた時、目に起こることはおそらく眼精疲労なので、長期的な視力低下とはまた違うかなと。

――視力が低下することは証明できていなくても、眼精疲労はあるということですよね。ゲームによる眼精疲労についてはどう対処すればよいのでしょうか?

阿部 目が疲れているかどうかは、(子どもに)聞いてみないとわからないので、ずっとゲームをしていたら、「目は疲れてない?」と聞いてあげることですね。「ゲームばかりしていると目が悪くなるから止めなさい!」といきなり叱るのではなく、「疲れてない?」と聞いてあげてください。できるだけ丁寧にコミュニケーションをとってあげれば、特に小さなお子さんは素直に言葉を返してくれるはずです。

ゲームに熱中=ゲーム障害とは限りません

――視力低下と同じくらい親御さんが気にされているのが、ゲーム依存・障害だと思いますが、それらを防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか?

近藤 依存によって社会生活が送れなくなるようなゲーム障害は、ゲームそのものに起因しているとは言い切れません。家族や学校での出来事、例えばいじめだとか、そういった問題が発生している中で、自分はゲームの世界ではすごく活躍ができて、認めてもらえるという状況があって、ゲームにのめり込んでしまうケースが多いと思います。

――ゲームそのものが問題というケースは稀なんですね。

近藤 例えば、AさんとBさんという2人の学生がいたとしましょう。Aさんは、合計すると1日10時間ゲームを遊んでいますが、テストでは学年1位。友達もたくさんいて、クラス委員長もつとめています。一方でBさんは毎日深夜に5時間ゲームを遊んでいて、朝は起きる事ができずに遅刻も多く、成績も悪い上に人間関係も希薄です。問題なのはどちらだと思いますか?

――Bさんですか?

近藤 そうですよね。これは極端な例ですが、社会生活がちゃんと送れているならゲームを遊ぶ時間そのものが問題というわけではないんです。ただ、もちろんAさんの場合、10時間もゲームをしているので、他に自由に使える時間が少なくなることは事実です。うまく社会生活を送るのに相当な努力や時間のやりくりをしないといけません。むしろ、ゲームと上手く付き合う事で、こういったスケジュール管理ができたり、オンラインゲームを通してコミュニケーション能力を高めたりと、ゲームにはたくさんのメリットがあります。

問題なのはどっち?

子どもが自分で約束を作れるようになるのが理想です

――自分でスケジュールを管理できるようになるのが理想ですね。

近藤 まさにそれが最終的には理想だと思います。親御さんは、お子さんが自分でスケジュールを管理できるように手助けしてあげてください。自分でしっかりとスケジュール管理して、ゲームを遊んでいるお子さんをちゃんと認めて、褒めてあげることも大切です。  

『お約束メイカー』を使ってみて感じたことは?

最後に、子どものスマホ・ゲームのトラブル減少のため、ガンホーが公開している『親子でスマホとゲームのお約束メイカー』を近藤さんと阿部さんに体験していただきました。

ゲーム感覚で約束を作れるのがいいですね。

近藤 『お約束メイカー』はゲーム感覚で親と子どもが約束を作れるところがすばらしいと思います。

阿部 これが本だと敷居が高くなってしまうと思いますが、スマートフォンで完結するので手軽でいいですよね。

近藤 子どもの成長や、子どもが遊ぶゲームの変化に合わせて適宜変更できるのもいいところだと思います。

阿部 いつか、子どもが遊んでいるゲームと『お約束メイカー』を直接連携できるようなシステムが構築されて、『お約束メイカー』で設定した金額に達したら課金ができなくなったりしたら面白いですね。

阿部智史さんインタビュー風景
POINTまとめ
  • ゲームを理解して子どもの健康に気を配る
  • ゲームを通して親子でお金の勉強を
  • 子どもの目が疲れていないか小まめに声がけを
  • ゲームにはたくさんのメリットがある
  • 学校と両立できるならゲームを認めることも大事
  • 子どもが自分でルールを作るのが理想

POINTを意識して約束を作ってみる

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斎藤ゆうすけインタビュアー/ライター
斎藤 ゆうすけ
さいとう ゆうすけ。ライター・放送作家。大学在学中よりゲームメディアで記事の執筆を行い、現在はテレビやラジオの放送作家として活動。バンタンゲームアカデミーおよび東放学園映画専門学校にて、講師としてゲーム関連の講義も担当しており、バンタンゲームアカデミー高等部eスポーツ専攻ではプロゲーマーを目指す高校生向けにネットリテラシーの講義も行う。活動に関する告知はTwitter『斎藤ゆうすけ(アニゲウォッチャー)』にて発信中。
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