子どもを、ネットやゲームのトラブルになんて絶対遭わせたくない!親たる私がッ!全てのトラブルから子どもを守ってみせるッ!!
それは本当に「いい考え」かのう……?
- もくじ
- 宮沢八重さんプロフィール
- 一般財団法人インターネット協会(以下インターネット協会)主任研究員。インターネット協会は インターネットの発展を推進することを目的に2001年に設立され、最新技術、動向に関するセミナー開催や各種委員会活動のほか、子どものネット利用の啓発活動も実施している。
子どものネットトラブル時に見てほしいサービス
インターネット協会では親子の安全、安心なインターネット利用に向けた啓発活動、情報発信を行っています。子どものネット、ゲーム利用で「困った!」というときに使える情報を教えてもらいました。
「削除できない」「誹謗中傷された」トラブル時に見て欲しいヘルプ集
――インターネット協会では、安全安心なネット利用のためにどのような活動をされていますか?
宮沢 一部を紹介しますね。まずインターネット協会のホームページ上で公開している「その時の場面集」です。YouTube、Twitter、Instagramなど子どもたちに人気のアプリやサービスにおいて「発言内容やアカウントを消去したい」「誹謗中傷、なりすましをされた」などのよくあるトラブルの際、どうすればいいかを一覧にまとめたものです。これらは各事業者さんに確認もいただいた上で公開しています。
その時の場面集
――SNSや動画サービスは提供している会社が異なるため、ヘルプページの作りも異なりますが、こちらから見ればどのサービスも同じフォーマットで見られて、わかりやすいですね。
宮沢 はい。子どもは保護者よりもスマホを使うことには長けているように見えますが、トラブル時の対応は分かっていないことも多いので、ぜひ活用して欲しいです。
ネット・ゲームにおいてどのようなトラブルがあるのか?
子どもはスマホを使うことは得意でも、トラブルの対応は分かっていない――。ドキッとする指摘です。どのようなトラブルに子どもたちは巻き込まれてしまうのか、全体像と具体例を伺いました。
――子ども、もしくはその保護者から寄せられるトラブルとして、どのようなものが多いのでしょうか?
宮沢 本当に様々なトラブルがあります。インターネット協会で受託している東京都のネットの相談窓口「こたエール」のホームページでも、ジャンル別にトラブル事例と解決方法を掲載していますので、ぜひご覧になってみてください。
こたエール 相談事例
様々なトラブルがあるのですが、今回はゲームの取引トラブルについて紹介しますね。ゲームをしていた相手から、自分の強いアイテムをあげるから、お互いにアイテムを交換しようと持ち掛けられ、相手を信用し自分のゲームのID、パスワードを教えたところ、相手は即座にそのID、パスワードを変えてしまい、本人がゲームにログインできなくなってしまったケースです。
――この場合、ゲーム会社に救済を求めることはできるのでしょうか。
宮沢 難しいかもしれません。というのも、多くのゲーム会社は利用規約に自分のゲームのID、パスワードを他人に教えてはいけないと記載しています。利用規約に反した行為をしていると、トラブル時にゲーム会社の救済を受けられないケースも考えられます。
アイテムやキャラの交換だけでなくRMT(リアルマネートレード、ゲーム内のキャラやアイテムを売買できるサービス)も多くのゲーム会社が禁止しています。
――当たり前のようにRMTサイトがあるので、てっきり子どもにしてみれば「やっていいこと」と勘違いしがちですが、大人が注意したいところですね。
トラブルを防ぐことはできない~保護者ができること~
ネット・ゲームのトラブルは非常に多様なことが分かりましたが、そのような中で、トラブルを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。
人生経験の浅い子どもにとって、スマホトラブルは人生初の大ピンチ
――ネットトラブルの相談に来るお子さんは、どのような様子なのでしょうか。
宮沢 インターネット上で起こったトラブルは、人生経験が 浅い子供にとって 非常に大きな出来事です。大人であれば、トラブルは起きてしまうものだとわかっていますから「どうすれば避けられたのか」と冷静に考えることもできますが、子ども はまだそれが 難しいですよね。子どもたちから「終わった」「詰んだ」「死にたい」などの追い詰められてしまった声も聞きます。
――子どものトラブルを防止する為に保護者がやっておいた方がいいことはありますか?
宮沢 前提として、残念ながら「これさえやっておけば全てのトラブルを防げる」といったものはないんですね。トラブルは起きるものですし、お子さん自身が気を付けていても周りのトラブルに巻き込まれてしまう可能性もありますから、「まさかうちの子が」という事態は普通にあり得ることです。
――「トラブルを絶対ゼロにする」という発想自体が、そもそも無理がある、ということですね。
宮沢 はい。「トラブルは起きてしまう」という前提で考えた方がいいです。そうすれば、「起きてしまったときにどう被害を最小限に抑えられるか」に視点が変わりますよね。
そうなるとやはり「親子で相談できる雰囲気が日頃からあること」が大切ですよね。お子さんがどんな問題を抱えているか教えてもらえなければ保護者は守ることもできませんから。相談できる雰囲気、関係を日ごろから作れているかが大切だと思います。
実際に相談を受けていても「親に迷惑、心配をかけたくないから言えない、言いたくない」と話すお子さんはとても多いです。そこでネット上の知らない人や、ネット上に書いてあるいい加減な情報を頼ってしまい、かえって状況が悪化してしまうこともあります。
そんな時は、公的な窓口が「親に言えない」というお子さんの気持ちをサポートできればと思います。お子さんが巻き込まれがちなネット、ゲームのトラブルの、公的な相談窓口を紹介しますね。
・自画撮り被害、性的トラブル
性犯罪被害相談電話に「♯8103(ハートさん)」
※ダイヤルすると発信された地域を管轄する各都道府県警察の性犯罪被害相談電話窓口につながります
・ゲームの課金トラブル
消費生活センター「#188」
※最寄りの消費生活センターや消費生活相談窓口が案内されます
・ネット、スマホの相談窓口「こたエール」
親子の約束づくりの際に、保護者がやりがちな「良くない約束」とは?
ネットやゲームにまつわるトラブルは非常に多岐にわたり、完全に防ぐことは難しいことが分かりました。トラブルに遭っても被害を最小限に抑え るためには何が必要か、引き続き伺います。
良くない約束① 約束を決めた時点がゴールで、運用がされていない
――ネット、ゲームのトラブルが非常に多岐にわたる中で、親子で利用について約束を作る必要性を感じますね。
宮沢 はい。お子さん自身が自分の安全を守るため、ネット、ゲームの約束は親子で作り、守らないといけないものです。ただ、保護者の方に気を付けていただきたい点として「約束を作ること」自体が目的ではない、というのがあります。
約束は運用されてこそ約束です。子どもが約束を守らない場合、「約束が現実的ではない保護者側の一方的な押し付け」である可能性や、「約束があいまいで親子で解釈が違う」などの理由が考えられ、こういった場合は約束の見直しをしていきたいですね。
良くない約束② 「約束」に固執しすぎる
――作るだけで運用されない約束では意味がないと。
宮沢 はい。ですが、子供に約束を守らせることばかりが気になって、保護者が苦労したりイライラしたり、固執してしまうのも 問題ですよね。本来、約束は「ネットやゲームを楽しく、安全に使うために存在する」という目的を見失わないで欲しいです。
――ネットやゲームは「あれもダメ!これは禁止!」になりがちなことだからこそ、「ポジティブな利用をするにはどうしたらいいか?」という目線を忘れないでおきたいですね。最後に、お約束メイカーの感想について教えてください。
宮沢 子ども自身が、将来の自分は今の行動次第で良くも悪くもなるというシミュレーションができるのが面白いと思いました。約束が守れなかったときにどうするか、も明確になっており、これは当協会が保護者にアドバイスする内容と同じものです。キャラクターに自分の名前を付けられるのも、当事者意識をもって取り組めると思いました。
- POINTまとめ
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- ネット、ゲームのトラブルは多種多様!まずはどんなトラブルがあるか知ろう
- 大人にしてみたら大したことないトラブルも、子どもにしたら大ピンチ!
- 「親に心配をかけたくない」という子どもの声に寄り添いたい
- インタビュアー/ライター
石徹白 未亜 - いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂