親子でスマホ・ゲームお約束メイカー
インタビュー
2023年01月20日(更新日:2026年06月22日)

【インターネット協会に聞く】子どもがスマホ・ゲームで「詰んだ」となる前に トラブルから我が子を守る親の関わり方

子どもを、インターネットやオンラインゲームのトラブルになんて絶対遭わせたくない!全てのトラブルから子どもを守ってみせるッ!!

全てのトラブルを完全に防ぐことは難しいかもしれんゾィ…。

もくじ
宮沢八重さん宮沢八重さん

一般財団法人インターネット協会(以下、インターネット協会)主任研究員。インターネット協会はインターネットの発展を推進することを目的に2001年に設立され、最新技術、動向に関するセミナー開催や各種委員会活動のほか、子どものネット利用の啓発活動も実施している。

近年、小学生・中学生の子どもたちを取り巻くデジタル環境は急速に変化しています。特にスマホの普及やSNS、オンラインゲームの一般化により、親の目が届かない場所でのトラブルが深刻化しています。
今回は、一般財団法人インターネット協会の主任研究員である宮沢八重さんに、子どもたちが直面しているトラブルのリアルな事例や対策、親が取るべき正しいコミュニケーションのあり方について詳しくお話を伺いました。

子どものスマホ・SNSの「困った」に即対応!まずはここを見て

インターネット協会では、親子の安全・安心なインターネット利用に向けた啓発活動、情報発信を行っています。子どものネットやゲーム利用で「困った!」というときに、役立つ情報を教えてもらいました。

SNSで「削除できない」「誹謗中傷された」トラブル時に見て欲しいヘルプ集

SNSで「削除できない」「誹謗中傷された」トラブル時に見て欲しいヘルプ集

——インターネット協会では、安全・安心なネット利用のためにどのような活動をされていますか?

宮沢:たくさんの活動を行っていますが、今回はその一部を紹介します。まず、ぜひ小学生・中学生の保護者の皆さんに知っておいていただきたいのが、インターネット協会のホームページ上で公開している「その時の場面集」です。YouTube、X(旧:Twitter)、Instagram、TikTokなど、子どもたちに人気のSNSやサービスにおいて「自分が投稿した発言内容やアカウントを消去したい」「誹謗中傷された」「なりすましアカウントを作られた」といった、よくあるトラブルに直面した際、具体的にどうすればいいかを一目でわかる一覧にまとめたものです。これらは、情報が不正確にならないよう、それぞれのサービスを運営している各事業者さんにもしっかりと内容を確認していただいた上で公開しています。

■一般財団法人インターネット協会
インターネットを利用する際に、知っておきたい「その時の場面集」 (外部リンク)

——SNSや動画サービスは、提供している会社によってヘルプページの作りや問い合わせ方法が全く異なるので、お子さんや保護者の方が自力で探すのは大変ですが、こちらを見ればどのサービスも同じフォーマットで確認できるので、とてもわかりやすいですね。

宮沢:そう言っていただけると嬉しいです。現在小学生・中学生の子どもたちは、生まれたときからデジタル機器に囲まれているため、保護者の方よりもスマホを使うことにも長けているように見えます。しかし、それはあくまで「操作に長けている」だけであって、いざ、予期せぬ事態に巻き込まれたときの対処法や、リスクまでは理解していないことがほとんどです。ですので、ぜひこの場面集を親子で活用して欲しいです。

小学生・中学生に多発するスマホ・オンラインゲームのトラブル事例

「子どもはスマホの操作は得意でも、トラブルの対応は分かっていない」——。ドキッとする指摘です。では、どのようなトラブルに子どもたちは巻き込まれてしまうのでしょうか。その全体像と具体的な事例を伺いました。

ID・パスワードの裏に潜む「オンラインゲームのアカウント乗っ取り詐欺」

——小学生・中学生の子ども、もしくはその保護者から寄せられるトラブルとして、具体的にどのようなものが多いのでしょうか?

宮沢:本当に様々なトラブルがあります。インターネット協会で受託している東京都のネットの相談窓口「こたエール」のホームページでも、ジャンル別に生々しいトラブル事例と解決方法を多数掲載していますので、ぜひご覧になってみてください。

■都民安全総合対策本部
こたエール 相談事例 (外部リンク)

様々な事例があるのですが、今回は小学生・中学生が巻き込まれやすい「オンラインゲームのアカウント乗っ取り詐欺」についてご紹介しますね。
あるお子さんが、オンラインゲームで仲良くなった相手(素性を知らないネットの向こう側の人物)から、「自分の強いアイテムをあげるから、お互いにアイテムを交換しよう」と持ち掛けられました。一緒にゲームをプレイして相手を信用してしまっていた子どもは、言われるがままに自分のゲームのログインID、パスワードを教えてしまいます。すると相手は、教えられたIDとパスワードを即座に変更し、アカウントを乗っ取ってしまいました。
結果として、子ども本人は二度とそのゲームにログインできなくなり、これまで大切に育てたキャラクターや集めたアイテムをすべて失ってしまったのです。

——これはショックですね…。この場合、ゲーム会社に「詐欺に遭ったので元に戻してください」と救済を求めることはできるのでしょうか。

宮沢:結論から言うと、非常に難しいのが現実です。というのも、多くのゲーム会社は利用規約において、「自分のゲームのID、パスワードを他人に教えてはいけない」と記載しています。
いくら「詐欺に遭った」という被害者であっても、自ら利用規約に反した行為をしてしまった以上、トラブル時にゲーム会社から救済措置やアカウントの復旧を受けられないケースがほとんどです。

また、アイテムやキャラクターの交換だけでなく、ゲーム内のデータを現実のお金で売買する「RMT(リアルマネートレード)」も、多くのゲーム会社が利用規約で禁止しています。

——インターネット上には、当たり前のようにRMTを仲介するサイトやSNSの書き込みが存在するので、子どもにしてみれば「RMTはやってもいいことなんだ」と勘違いしてしまいそうです。ここは大人がしっかりと目を光らせ、注意しなければいけないポイントですね。

「トラブル絶対ゼロ」は無理!親の意識を切り替える防衛策

スマホ・ゲームのトラブルは非常に多様であり、手口も巧妙化していることが分かりましたが、そのような環境の中で、親は一体どのようにして子どもをトラブルから守ればいいのでしょうか。

人生経験の浅い子どもにとって、スマホ・ゲームの問題は「人生初の大ピンチ」

人生経験の浅い子どもにとって、スマホ・ゲームの問題は「人生初の大ピンチ」

——インターネット協会に相談に来るお子さんは、どのような様子なのでしょうか。

宮沢:インターネット上で起こったトラブルは、人生経験が浅い小学生・中学生の子どもにとって自分の世界のすべてが崩壊したかのような、非常に大きな衝撃を受ける出来事です。大人であれば、ある程度トラブルは起きてしまうものだとわかっていますから「どうすれば被害を最小限に抑えられたか」と冷静に次のステップを考えることもできます。ですが、小学生・中学生の子どもには、まだその心の余裕がありません。相談の現場では、子どもたちから「人生終わった」「完全に詰んだ」「死にたい」といった、信じられないほど深く追い詰められてしまった悲痛な声も聞きます。

——そこまで追い詰められてしまうのですね…。では、子どものトラブルを未然に防止するために、保護者がやっておいた方がいいことはありますか?

宮沢:非常に心苦しいのですが、前提として、「これさえやっておけば100%全てのトラブルを防げる」といった魔法のような対策は存在しないんです。
ネットの世界は常に変化しています。お子さん自身がどれだけ真面目で、どれだけ気を付けていても、悪意を持った第三者から詐欺のターゲットにされたり、お友達同士のトラブルに巻き込まれたりする可能性は排除できません。「まさかうちの子が!?」という事態は、どこのご家庭でも普通にあり得ることなのです。

「トラブルを絶対ゼロにする」という発想からの脱却

——「スマホ・ゲームのトラブルを絶対ゼロにする」という完璧主義的な発想自体が、そもそも現実的ではない、ということですね。

宮沢:その通りです。むしろ「トラブルは起きてしまうものだ」という前提で考えた方が、結果として子どもを守ることができます。「絶対に被害に遭わせてはならない」と考えていると、いざ問題が起きたときに親もパニックになり、子どもを激しく叱責してしまいがちです。しかし、「トラブルは起きてしまうものだ」と考えていれば、いざ起きてしまったときに、「どう被害を最小限に抑え、子どもを救い出せるか」という前向きな視点に切り替えることができますよね。
そう考えると、やはり「親子で困ったことを何でも相談できる雰囲気が、日頃から家庭内にあること」が大切ですよね。お子さんがどんな問題を抱えていて、何に悩んでいるのかを教えてくれなければ、保護者は子どもを守ることもできません。相談できる雰囲気、コミュニケーションと信頼関係が日頃から築けているかが大切だと思います。
実際に相談を受けていて非常に胸が痛むのが、「親に怒られるのが怖い」「親に迷惑や心配をかけたくない」、だから言えない、言いたくないと話す小学生・中学生のお子さんがとても多いことです。身近な親に頼れない結果、子どもたちはネット上の見知らぬ人や、ネット上に書いてある根拠のない、いい加減な情報を頼ってしまい、かえって状況が悪化してしまうこともあります。

——親に言えないまま孤立してしまうのが一番危険なのですね。もし、どうしても親に相談できない場合、逃げ道はあるのでしょうか。

そんな時は、公的な相談窓口が「親には言えないけど、誰かに助けてほしい」というお子さんのSOSを受け止め、サポートしてくれています。ここで、小学生・中学生のお子さんが巻き込まれがちなネット・ゲームのトラブルの、代表的な公的相談窓口を紹介しますね。

トラブルの種類 具体的な内容 公的相談窓口
性的トラブル、自画撮り被害 騙されて自分の裸の写真を送ってしまった、SNSで知りあった人に脅されている等の性被害 性犯罪被害相談電話
「♯8103(ハートさん)」

※全国共通。発信された地域を管轄する各都道府県警察の相談窓口に直通します。
ゲーム・ネットの課金トラブル 親のクレジットカードやキャリア決済で、勝手に高額な課金をしてしまった等 消費生活センター
「#188(いやや)」

※最寄りの消費生活センターや、地域の消費生活相談窓口をご案内します。
ネット・スマホ全般の悩み 誹謗中傷、いじめ、アカウント乗っ取り、ネット依存等、どうしていいかわからない時 子どもネット・スマホ相談窓口
「こたエール」

親子の約束づくりの際に、保護者がやりがちな「良くない約束」とは?

スマホやゲームにまつわるネットトラブルは、高額課金から警察が介入するレベルの性被害まで、非常に多岐にわたり、完全に防ぐことは難しいことが分かりました。トラブルに遭っても、被害を最小限に抑えるためには何が必要か、引き続き伺います。

良くない約束① 約束を決めた時点がゴールになり、運用がされていない

——スマホ・ゲームのトラブルが非常に多岐にわたる中で、親子で利用について約束を作る必要性を感じますね。

宮沢:はい。お子さん自身が危険を察知し、自分の安全を守るためリテラシーを身につけるという意味でも、スマホ・ゲームの約束は親子で話し合って作り、守ることはとても大切なことです。
ただ、保護者の方に気を付けていただきたい点として、「約束を作ること」自体が目的(ゴール)ではない、ということがあります。
約束というのは、日々の生活の中で実際に「運用」されて、初めて価値を持ちます。もし子どもが約束を守らない場合、それは子どもが悪いというよりも、「約束が現実の生活にあっていない保護者側の一方的な押し付け」になっていたり、「スマホはほどほどにする」といった「約束があいまいで、親子間で解釈がズレている」などの理由が考えられます。こういった場合は、子どもが守れない約束を放置するのではなく、子どもの成長やライフスタイルの変化に合わせて「約束の見直し(アップデート)」をしていきたいですね。

良くない約束② 「約束を守らせること」そのものに固執しすぎる

——作るだけで運用されない約束では意味がない、ということですね。

宮沢:その通りです。そしてもう一つの落とし穴が、子どもに約束を守らせることばかりに親の意識が向きすぎてしまうパターンです。保護者が苦労したりイライラしたり、監視の目を光らせ、ルールに固執してしまうのも問題ですよね。本来、約束は「子どもがネットやスマホ・ゲームを安全に、楽しく使うために存在する」ということを見失わないで欲しいと思います。

——スマホやゲームに関して、親はどうしても「あれもダメ!これは禁止!」とネガティブなアプローチになりがちです。「どうすればトラブルを避けつつ、ポジティブに活用できるか?」という視点を忘れないでおきたいですね。

親子で約束作りができる「お約束メイカー」も活用してほしい

——最後に、ガンホーが提供する親子の約束づくりツール「お約束メイカー」の感想をお聞かせください。

宮沢:子ども自身が、将来の自分は今の行動次第で、良くも悪くもなるというシミュレーションができるのが面白いと思いました。「約束が守れなかったときにどうするか」も明確になっており、これは私たちインターネット協会が、保護者の方にアドバイスする内容と同じものです。キャラクターに自分の名前を付けられるのも、子どもが当事者意識をもって取り組めるので、良いと思いました。
約束作りは、ハードルが高いと感じる保護者さんもいらっしゃるかと思います。でも、このようなカジュアルなツールを通すことで、スマホやゲームに関わる会話のきっかけにもなるので、ぜひ活用していただきたいです。

POINTまとめ
  • スマホ・ゲームのトラブルは多種多様!まずはどんなトラブルがあるか知ろう
  • 大人の「大したことない」は、子どもの「人生の大ピンチ」!
  • 「親に心配をかけたくない」という子どもの声に寄り添いたい
  • 約束は作ることがゴールではなく、運用されているかが大事

POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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