親子でスマホ・ゲームお約束メーカー
インタビュー
2022年6月9日

子どもがゲームの約束を守らない原因とは?対策をご紹介!

小学生の子どもと、高校生の子どもじゃ、スマホやゲームに関する約束って変わってくるはずよね…。どうすればいいの~!

案ずるでない! 変わるところもあるが、基本的には「一緒」なんじゃ!!

子どもが小学校低学年の頃は、親の言う事を聞いてくれていたのに、高学年になってからはなかなか難しくなってきてイライラ、というケースも多いのではないでしょうか?特にゲームやスマホの利用や、その約束を守らないことについては、親御さんも悩みの種かもしれません。なぜ約束は守れなくなってしまうのか、そして、子どもの成長に合わせ、親子でどう約束を作っていけばいいのでしょうか。兵庫県立大学環境人間学部人間形成コース准教授、竹内和雄さんにお話を伺いました。

もくじ
竹内 和雄さんプロフィール竹内和雄さんプロフィール
兵庫県立大学環境人間学部准教授(教職担当) 教育学博士。公立中学校で20年生徒指導主事等を担当(途中小学校兼務)。寝屋川市教委指導主事を経て2012年より現職。生徒指導を専門とし,いじめ、不登校、ネット問題、生徒会活動等を研究している。文部科学省有識者会議座長等で,子どもとネット問題についての委員を歴任。NHK「視点・論点」「クローズアップ現代」等にも出演。毎日新聞に「竹内先生の新教育論~スマホっ子の風景」連載。2014年ウィーン大学客員研究員。

小学校高学年でも高校生でも、親子の約束の「基本」は一緒!

――ゲームやネットの利用における親子の約束は年齢に応じた変化に苦慮している親御さんも多いですよね。

竹内 まず、小学校低学年、三年生くらいまでなら「コラッ」という「しつけ」で済みますけど、四年生くらいになったら「ルール」が必要になってきます。しつけから教育に変わっていく時期ですね。
教育の段階に入ると、約束作りの基本は「子ども本人が納得した約束を作る」です。親の押し付けではない、ということですね。これは、子どもが小学校高学年でも、高校生でも変わりません。

――基本方針は小学校高学年でも高校生でも変わらないのですね。

竹内 もちろん細かく見ていけば、小学生が深夜1時までゲームをするのは望ましくないですし、高校生が夜7時でゲームを終了するというのは利用実態から見て現実的ではないですよね。こういった細かな点は年齢に応じて変わってくるところではあります。
ですが、ベースとなる「子ども本人が納得した約束を作る」という点は、一緒というよりも、むしろ一緒にしないといけません。子どもが納得しておらず、親側が一方的に約束やペナルティを作ったところで、それは守られないでしょう。
フィルタリングもありますが、その外し方もネットで調べれば分かってしまいます。お子さんのスマホやゲームをしたいという欲望、欲求はとても強いですから、中古のスマホを買うなどして、親に隠れて使うようになってしまうでしょう。ですから、親子で納得して話し合いの上で約束を作ることが大切ですね。

「危ないからスマホを使わせない」は「危ないから自転車に乗るな」と一緒?

竹内 スマホは自転車と一緒なんです。自転車にいきなり乗れと言われても、無理ですよね。補助輪をつけ、親が後ろを支えてくれて、たくさん転びながら自転車の乗り方を覚えていきます。
ほかにも、自転車に乗るには交通ルールの理解が欠かせません。日々の生活で赤信号の時は横断歩道を渡ってはいけないよ、と一つ一つ交通ルールを学んでいく。その上ではじめて、自転車を安全に公道で運転することができます。
スマホでも同じことが言えます。私はユニセフでスマホサミットの仕事に携わっていますが、ユニセフの方が「ネットは道路と同じ。使わなかったら事故は発生しないが、使わせないわけにはいかない。なので、使わせるのならルールを知って守ること、さらに言えば本人がルールを守っていたとしても、信号無視をする車があるように、残念ながらネット上でもルールを守らない人がいる以上、状況判断もできるようにならないといけない」と話していました。

竹内和雄さんインタビュー風景

こんなときどうする?親子のゲーム、スマホ、ネットの約束作りのよくある事例

「赤信号で横断歩道を渡ってはいけない」は小学一年生時点で理解していることですが、一方でスマホやゲームにおいて何が「赤信号」なのか、はっきりしないところもありますよね。引き続き竹内先生に、よくある事例から、約束作りのポイントについて伺っていきます。

事例その①「うちは子供を信頼しているから、ゲームやスマホはノールール」

――ゲームやスマホの利用において親子で約束を作る際、これはまずい、というものはありますか?

竹内 まず子どものゲームやスマホの利用について「うちはノールール」というのはまずいですね。ノールールな方針の親御さんはよく「うちは子供を信頼している、信じている」と話しますが、思春期のスマホやゲームをしたい!という熱意は並大抵のものではありません。無茶苦茶な状況になってしまいかねませんよ。

――状況が悪化したあとでそれを対処するのは大変でしょうね。

竹内 はい。ですので、子供にゆだねるのではなくて、ここまで!と親が管理することが大切です。学生と話していても「(子どもである自分を親は)信じ切らないで欲しい。親として仕事をしてほしい」と話す子もいますよ。

――子どもは「自由に使わせてほしい」かと思いきや、意外ですね!

事例その②子どもがよその家の約束と比べて不満を言ってきたら?

――また、約束作りの際、子どもが「友達の●●君の家は××ができるのに!(夜〇時までゲームができる、一日〇時間までゲームができる)」と訴えてきたら、どうしたらいいでしょうか?

竹内 まず、お子さんが言いたいことは言ってもらった方がいいですね。言いたいことを言えずもやもやしたものを抱えたままになると、その後うまくいきにくいですから。
まず親は子どもの言い分は聞く。その上で、飲めない約束はなぜそれはダメなのかを伝えることです。親、子、互いに譲れないところは出てくるのでその中間点をさぐりましょう。

子どもがよその家の約束と比べて不満を言ってきた

事例その③約束は作ったものの、その後の管理がされていない

竹内 そして、約束は「作ったあと」が肝心です。約束を決めただけで、それが守られているか親側でチェックしないまま、約束が名ばかりのものになってしまうのは避けたいですね。
約束自体は、子どもが同意でき、達成できそうな厳しすぎないものにする。その上で、そのあと約束が守られているかの管理は厳格にする方がいいですね。「約束はゆるく、管理は厳しく」です。

――真逆の「約束は厳しいが、管理ができていない」状態になっているケースも多そうですね。「管理は厳しく」ですが、どのようにすればいいのでしょうか。

竹内 例えば、約束が守れなかった場合は、ペナルティとして一週間スマホ禁止にしたり、Wi-Fiを隠したり、携帯電話会社に連絡して解約したりするところまでやる。

――そこまでやるんですね!

竹内 脅しだけで、「どうせ実行しないだろう」と思われると足元を見られてしまいます。「来月小遣いなし」がペナルティなら本当に渡さない。「泣いたり、暴れたりしたらルールを緩める」では子どもは「次も困ったら泣いたり、暴れたりすればいい」と思ってしまいますから。

事例その④そもそも、約束のための話し合いが難しい場合は?

――親子の約束作りは話し合いが欠かせないですが、すでに親子間で話し合いが難しい状況の場合、どうしたらいいでしょう。

竹内 この場合は「雑談ができる環境作り」から取り組んだ方がいいでしょうね。釣りに行ったり、ケーキを作ったり、好きなモノを食べに行ったりとか、お子さんが好きなことを通じて、まずは雑談からです。もともと話し合いがうまくできない状況なのに「スマホやゲームをちゃんとしなさい」では、うまくいかないですよね。

スマホやゲームをやりすぎてしまうお子さんに向けた時間管理法

約束づくりにおいて悩ましいのが、ゲームやスマホでいつまで遊んでいいのか、という時間管理ではないでしょうか。約束で〇時間と決めたのに子どもがそれを守ってくれない、という状況は親御さんも辛いもの。時間管理法について、引き続き竹内先生に伺います。

シールを使ったスマホ、ゲームの時間管理法のやり方

――先ほど子ども本人もゲームやスマホのやりすぎはまずいという気持ちはある、とお話がありましたが、それでもゲームやスマホの長時間利用がやめられない、というケースも多そうですよね。

竹内 シールを使った時間管理法があります。まず、お子さんと達成できそうなゆるい目標を決めます。例えば、それまで一日8時間ゲームをやっているなら、7時間半なら減らせそうだと。
そしてそれが達成できたら、親が家のカレンダーにシールを貼ります。達成できなかったときにバツ印などはつけません。「できた」は見える化しますが、「できなかった」は見える化しないことがポイントです。
親から子どもへのスタンスも、週7日のうち4日目標を達成出来たら、「4日達成できたね」とほめます。「3日できなかったじゃないか」とは言いません。同じことでも、伝え方で大きく違いますよね。

シールを使った時間管理は、子どもが何歳でも有効

――こちらのシールを使ったやり方は、何歳くらいまでの方向けなのでしょうか。

竹内 小さな子ども向けのように見えるかもしれませんが、大人でもいいんです。というのも、このシールを使ったやり方はアルコール依存の患者さん向けに取られていた手法をネット用にアレンジしたもので、そもそも大人向けのものなんです。僕も最初聞いたときはこんな方法で?とも思ったのですが、実際これが効果を出しているんです。
やめたいのにやめられず、やりすぎてしまう……ということが続いてしまうと、周りの人間関係も悪化していきますし、自己嫌悪もしてしまうことでしょう。この状況は本人も苦しく、自尊感情はすでに下がってしまっているんです。その状況で「できなかった」とバツ印をつけたり、叱咤したりすることで、さらに周囲が自尊感情を下げてはいけないんです。

――本人自身も相当精神的にきつい状況にあることを理解することが大切なのですね。

竹内 はい。そのような中で、このシールを使った方法を淡々と続けると、お子さんにしてみればネットやゲームをすれば今まで怒られていたのに褒められる状況が続きます。しかも、ちょっとの努力でいい。これを積み重ねるとお子さん側にも「もっと頑張ろう」という欲が出てきますよ。

竹内和雄さんインタビュー風景

親はつい減点したくなるが、ぐっとこらえて加点しよう

――このシールの方法は、徹底した加点方式なんですね。

竹内 そこがポイントですね。親はつい子どものできないところに目がいきがち、減点法になりがちですが、そこはぐっとこらえましょう。「前よりもよくなったことが嬉しい」と伝えることです。子どもは良くなりたいし、褒められたいんです。
子どもがゲームにはまるのも、「ゲームは褒めてくれる」というのも大きいと思いますよ。ゲームはとても褒め上手です。レベルが上がった!ラスボスを倒せた!と褒めてくれたり、派手な音楽が鳴ったり、達成感を得られるんですよね。
そして、親御さんが子供を褒めるためには親側にも精神的な余裕、ゆとりを持つ必要があります。親御さん自身の楽しみを大切にして欲しいですね。

――お子さんのできないところが目についてイライラ……となってしまったら、まずは親御さん自身が深呼吸するなどの余裕がほしいですね。

やらない方がいい!約束作りの「子どものために良かれと思って」事例

約束作りのポイントや、シールを使った時間管理法、また、ゲームの達成感が子どもの「褒められたい」気持ちを満たすなど、さまざまなお話を伺ってきました。引き続き、つい親が「良かれと思って」やってしまうけれど、あまりおすすめできない、ということについて伺います。

やらない方がいいこと その①約束を達成したから「ご褒美」

――約束作りやその運用において、親がやらないほうがいいことにはどのようなことがありますか?

竹内「今週は目標を達成したから、○○を買ってあげる」という「ご褒美」はお勧めしません。というのも、こうすると「ご褒美をもらえるからやる」になってしまうんですね。モノで釣ると、長続きしないんです。
ご褒美を確約するのではなく「今週は目標達成出来てうれしいから、ご褒美買いたくなるかも」という匂わせ程度にとどめたり、夕飯のおかずを一品増やしてあげたりとか、そのくらいがいいですよ。

竹内和雄さんインタビュー風景

やらない方がいいこと その②「ゲームはあと○分!」の声掛け

竹内 またこれもよくあることですが、約束に基づいて「ゲームはあと5分だよ!」とお子さんの背後で声掛けする親御さんもいますが、これもお勧めしません。

――「ご褒美はない方がいい」同様に、意外でびっくりです。この声掛け、良かれと思いやっている親御さんが多そうですよね。

竹内 こちらもお子さん自身が「終了時間の5分前には声掛けして欲しい」と言っている場合ならいいのですが、そうでない場合はやめておいた方がいいですね。声掛けを頼りにしてしまい、声掛けをしなかったときに「声掛けをしなかったからやめられなかった!」みたいになっても困りますよね。
親がすることは①約束を子どもと話し合って決める、②約束をしっかり管理する、です。先ほどお話したシールの時間管理法で言えば「時間管理をして達成できたらシールを貼り、褒める」ことが、親が行うことですね。

――良かれと思って余計なことまでしていないか、振り返りたいですね。

スマホやゲームは親にとってはじめての「トラブル」

――たくさんのテクニックや、考え方について教えて頂きました。

竹内 これも多くの学生さん、親御さんの声を聞いてきたからなんです。一方で親御さんにしてみれば自分のお子さんが「初めて」のケースですから、難しくて当然です。風邪のときに鼻水を吸ってやった可愛いわが子が「言うことを聞かなくなる」のデビューが、今はスマホやゲームなんですよね。なので親側も感情的になってしまう。繰り返しになりますが、親側がゆとり、余裕を持つことが大切ですね。

――お約束メイカーはそれ自体が軽い、ポップな内容ですので、上手に活用して約束を作るのもいいですね。

竹内 深刻にならずに、軽い感じで作れるのはいいと思いますよ。約束作りも、練習なんですよね。お子さんの成長に応じた約束を親子で話し合い、作っていく経験は、お子さん自身が大人になり、親の管理下ではなく、スマホやゲームと上手につきあっていくための大切な土台になります。

POINTまとめ
  • スマホは道路と一緒!安全に使うため約束は必要
  • ゆるい約束と、厳しい運用がポイント
  • ご褒美や、「あと5分だよ」の声掛けは逆効果

POINTを意識して約束を作ってみる

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石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
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